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富士通、2023年度第1四半期連結業績は減収減益 コンビニ交付システムの不具合についても言及

 富士通株式会社は27日、2023年度第1四半期(2023年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比2.3%減の7996億円、営業利益はマイナス16億円の赤字に転落。調整後営業利益は同9.3%減の26億円、税引前利益が同77.6%減の85億円、当期純利益が同74.8%減の43億円となった。

2023年度第1四半期業績<概況>

 減収減益の内容となったが、富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏は、「セグメントごとには大きな強弱があったものの、内容、水準ともに、計画通りである。売上収益は事業再編影響を除くと若干の増収となっている。受注や商談パイプラインは、サービスソリューションを中心に力強く拡大している」と総括した。

富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏

サービスソリューションの状況

 セグメント別業績は、サービスソリューションの売上収益が前年同期比4.4%増の4654億円、調整後営業利益は同132.5%増の209億円となった。「成長ドライバーであるサービスソリューションは、増収増益の力強いスタートとなった。事業再編影響を除くと、国内ビジネスを中心に2桁成長伸長となり、採算性改善も計画通りに進み、着実な増益となっている」と、サービスソリューション事業の業績には手応えを示した。

 サービスソリューションは、国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が活発であり、また、Fujitsu Uvanceの売り上げが拡大したという。

サービスソリューション

 サービスソリューションのうち、Uvanceの売上収益は、前年同期比53.4%増の704億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は、前年同期の10%から15%に拡大。内訳はVerticalが103億円、Horizontalが601億円となった。

 Fujitsu Uvanceは、社会課題を解決するクロスインダストリーの4分野(Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society)をVerticalとし、クロスインダストリーを支える3つのテクノロジー基盤(Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT)をHorizontalと位置づけている。

 「Fujitsu Uvanceは、国内を中心に受注も堅調に推移した。Verticalでは、顧客のSXを実現するオファリングを、下期を中心に投入していく。Horizontalでは、3S商談(SAP、ServiceNow、Salesforce)を中核としたBusiness Applicationsのデマンドが旺盛であることから、リソースを増強して需要に応えている」という。

Uvanceの状況

 サービスソリューションにおけるコストと費用の状況についても説明した。

 採算性の改善では75億円のプラスとなり、売上総利益率は1.6%改善した。「開発標準化や自動化、内製化など、これまでの取り組みを着実に推進した結果、品質向上や生産性向上につながった。オフショア率も進展している。だが、取り組みは道半ばであり、愚直に改善に取り組む」と述べている。

 また、成長分野を中心に、前年同期比で89億円増を投資。「Fujitsu Uvanceを中心としたオファリング開発への投資、専門人材リソースの育成やリスキリング拡大、人材獲得への投資、セキュリティ強化やIT基盤の強化などの事業成長に直結する投資を積極化している」と説明した。

コスト・費用の状況

 サービスソリューションのうち、グローバルソリューションの売上収益が前年同期比11.1%増の1042億円、調整後営業利益が前年同期のマイナス82億円の赤字から改善したものの、マイナス12億円の赤字となった。

 「Fujitsu Uvanceは着実に伸長したほか、モダナイゼーションを支えるソフトウェアの大型売り上げが増収を牽引したが、赤字が残った」と述べる一方、「2023年度後半に、多数のUvanceオファリングのリリースを計画している。いまは投資先行のフェーズである」とも位置づけた。

 リージョンズ(Japan)では、売上収益が同1.3%減の2620億円、調整後営業利益は35.1%増の258億円。リージョンズ(海外)の売上収益は同8.4%増の1410億円、調整後営業利益は前年同期のマイナス18億円の赤字から、マイナス36億円へと赤字幅が拡大した。

 「Japanでは、産業、流通、金融、官公庁向けといった広範囲で、DXおよび基幹システムの刷新案件が増加している。採算性向上も着実に進んでいる。海外では、為替影響に加えて、欧州での公共セクターの拡大も貢献した。だが、赤字幅は拡大しており、ここではAPACでの好採算商談の終息の影響があった。海外事業は、まだ根本的な手を打てているわけではないが、全体の構造を変えるところには着手している。第2四半期はぎりぎりの黒字化を計画しており、通期では黒字化を最低限の目標としている」と述べた。

サブセグメント別内訳

 第1四半期における国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年比18%増となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比7%増、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同24%増、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が同34%増、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が同8%減となっている。

 「受注は増収につながる指標である。前年同期も高い伸長を見せたが、今期はそれを上回った。国内ビジネスは総じて堅調な動きである」としながら、「エンタープライズでは、サプライチェーンのDX化や基幹システムのモダナイゼーション案件を中心に堅調に推移。製造、モビリティ、流通などで商談が活性化している。ファイナンスビジネスでは金融機関向けの基幹業務システムの大型商談に加えて、新紙幣対応の案件も獲得した。パブリック&ヘルスケアは、官公庁向け次期システムのモダナイゼーション案件を複数獲得し、電子カルテや医療情報システムの大型更改商談が動き出している。ミッションクリティカルは、前年同期の大型案件の反動で下回っている。年間では受注、売り上げともに前年実績を上回る計画である」という。

受注の状況(国内)

 海外の受注状況は、Europeが前年同期比4%減、Americasが同37%増、Asia Pacificが同17%増となっており、「Europeは英国で公共系商談を獲得。Asia PacificはオセアニアでのM&A効果に加えて、公共商談を獲得した。Americasは、民需系を中心に複数年のサービス商談を獲得し、前年から大きく伸長した。海外ビジネスはこれからだが、第1四半期には明るい材料があった」と語った。

受注の状況(海外)

セグメント別の業績

事業別セグメント情報

 ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比3.3%減の2168億円、調整後営業利益は同46.7%減の26億円となった。システムプロダクトは部材調達の遅れが解消したことで増収となったが、ネットワークプロダクトは大きく減収となった。「ネットワークプロダクトは、大型需要の一巡による売り上げ減少が見られるが、高速、大容量、低遅延、低消費電力の実現が期待され、次の成長に向けた開発投資を拡充している。2023年度は、次に向けた力を蓄える年と位置づけている」という。

 ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比3.2%減の598億円、調整後営業利益は同384.7%増の45億円になった。為替影響含めた部材価格上昇に対するコストダウンおよび価格転嫁が進んで増益に寄与したという。

ハードウェアソリューションとユビキタスソリューション

 デバイスソリューションは、売上収益が前年同期比35.2%減の674億円、調整後営業利益は同91.3%減の22億円となった。2022年度第4四半期から低調なトレンドが続いており、物量減および工場の操業低下が影響し、減益幅が拡大した。「想定通りの厳しいスタート」と位置づけながらも、年度後半からの緩やかな回復を想定しているという。

 なお、消去・全社では、調整後営業利益が前年同期のマイナス133億円から、マイナス278億円に赤字が拡大。「AIや量子分野をはじめとした先進的先行研究の強化や、経営基盤強化に向けたOne Fujitsuプログラムの推進、グローバルセキュリティの強化など、中長期的な事業成長に向けた投資を引き続き拡大している」という。

デバイスソリューションと消去・全社

 一方、2023年度通期(2023年4月~2024年3月)の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比3.9%増の3兆8600億円、営業利益は同1.3%増の3400億円、調整後営業利益は同6.0%増の3400億円、当期純利益は同1.3%増の2180億円と、増収増益の計画のままとしている。

 「Uvanceオファリングの確実なリリース、デリバリー変革への愚直な取り組みをしっかりと進めることで、サービスソリューションのボリューム、採算性も計画通りに伸ばしていける」と述べた。

通期の業績見通し

「Fujitsu MICJET コンビニ交付システム」のトラブルに関する質問が相次ぐ

 会見では、富士通Japanが提供した「Fujitsu MICJET コンビニ交付システム」の不具合によるトラブルや、システム停止などの問題に関する質問が相次いだ。

 磯部CFOは、「度重なる不具合を引き起こしており、自治体や住民に大変な迷惑、不便をかけている。行政サービスの信頼を損ねる原因にもなっている。重く受け止め、深く反省している」とした上で、「まずは再発防止に取り組み、信頼の回復を図る。示している対応策を、確実に、迅速に進め、自治体や住民の負担や迷惑を最小限にするように全力を尽くしているところである」と語った。

 対応が完了する時期については、「関係省庁、自治体と個別にスケジュールを調整した上で、サービスの再開と安定したサービス運用に向けて改修対応を進めているところである」として、時期は明確にしなかった。

 また、福岡県宗像市において、点検終了後に修正プログラムが反映されていなかった事態が発生。123自治体を対象に調査を行った結果、同市を含めて44自治体で、修正プログラムが適用されていないことが明らかになったことについては、「根本的な原因については調査中であるが、パッチ適用の単純ミスや現場力に対する過信、間違った認識や勘違い、ヒューマンエラーに対するチェック機能が働かなかったということもあった。現場で作業に忙殺されて、手が回らなかったというものではない。だが、人員の配置が手薄であって、それが原因ではなかったのかということについても点検していく」と説明。

 さらに、「富士通グループの現場のスキルレベルや業務に取り組む姿勢は一定の信頼性があると考えている。ヒューマンエラーが発生したときにどうフォローするかが大切である。個々の事案での修正、原因分析、再発防止はやっているが、富士通グループ全体として、品質管理に関するマネジメントシステムが十分に機能していなかったことが本質的な原因だととらえている。チーフ・クオリティ・オフィサーを設置し、経営主導による組織横断的な品質の改善、向上に取り組んでいるところである」などと回答した。

 なお、点検および改修に関するコストの業績への影響については、「大規模に行っているため、相応の金額はかかっているが、経営上に重大な影響を及ぼすものではない」としたほか、一部自治体から指名停止処分が出ていることについては、「富士通が置かれている状況は厳しいものだと受け止めている。業績へのインパクトは、推移を見ながら精査が必要であり、適宜発表する」と述べた。