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富士通、2024年度第3四半期累計の連結業績は減収増益 サービスソリューションは“力強いペース”で採算性が改善
2025年1月31日 22:15
富士通株式会社は31日、2024年度第3四半期(2024年4月~12月)の連結業績を発表した。それによると、売上収益は前年同期比0.8%減の2兆6214億円、営業利益は同169.2%増の1252億円、調整後営業利益は同32.6%増の1576億円、税引前利益が同123.9%増の1330億円、当期純利益が同248.2%増の880億円となった。調整後営業利益は9カ月累計では過去最高になったという。
富士通の磯部武司副社長 CFOは、「主力のサービスソリューションは、引き続き、増収増益基調で進捗しており、力強いペースで採算性が改善している。だが、ハードウェアソリューションおよびユビキタスソリューションが減収となった。営業利益では、前年に事業再編による一過性コストを大きく計上していたことの反動があり、787億円の増益になっている」と説明した。
調整後営業利益では、開発プロセスの標準化や受注時採算管理の強化などによる採算性の改善が貢献している一方で、Fujitsu Uvanceのオファリング開発や、モダナイゼーションビジネスのデマンドが増加していることへの対応、専門人材育成やセキュリティ強化などへの投資を、計画に沿って拡大していることが影響していることを示した。
「9カ月累計での採算性改善は388億円となった。また、売上総利益率は2.6ポイント改善し、35.9%となった。開発標準化、自動化および内製化の進捗に加えて、オフショアの活用拡大など、持続的に生産性を改善している。提供価値を顧客の認めてもらい、適正な価格設定も進んできた。また、成長投資の拡大として190億円を計上しており、事業成長に直結する投資を積極的に実行している」と語った。
セグメント別の業績
2024年度第3四半期累計のセグメント別業績は、サービスソリューションの売上収益が前年同期比2.7%増の1兆5631億円、調整後営業利益は同38.9%増の1615億円となった。いずれも第3四半期累計では過去最高となった。調整後営業利益目標に対する9カ月累計での進捗率は、2023年度には49%であったのに対して、2024年度は58%にまで拡大している。
「国内ではDXやモダナイゼーションに対するデマンドが強い。一方で、海外は2023年度に実施した、低採算事業であるドイツのプライベートクラウド事業をカーブアウトした影響で減収になったが、ここの影響を除くと前年並の水準になる。採算性改善も進んでおり、調整後営業利益率は2.7ポイント改善し、10.3%となった」という。
サービスソリューションのうち、Fujitsu Uvanceの売上収益は、前年同期比30.1%増の3217億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は21%(前年同期は16%)となった。内訳はVerticalが同78%増の1147億円(前年同期実績は644億円)となり、Horizontalの売上収益は同13%増の2069億円(同1828億円)となった。また、Fujitsu Uvanceの受注は、前年同期比32%増の3485億円と高い伸びを維持している。
「Fujitsu Uvanceは、受注、売上ともに好調に推移し、目標達成に向けて、力強い進捗が見られる」と自信をみせた。
また、モダナイゼーション事業は、第3四半期累計の売上収益は同73.7%増の1394億円となり、2024年度通期の2000億円の達成に意欲をみせた。
「顧客資産のモダナイゼーションを確実に実行するためのナレッジを集約し、自動化の取り組みなどによる採算性向上を図りながら、DXおよびSX領域のビジネス拡大につなげていく」としている。
サービスソリューションのサブセグメント別内訳では、グローバルソリューションの売上収益は前年同期比10.7%増の3670億円、調整後営業利益は前年同期から14億円悪化し、マイナス48億円の赤字となった。
「第3四半期だけを見ると黒字化したが、9カ月累計では赤字が残っている。Fujitsu UvanceのVertical領域を中心としたオファリング開発を加速していることや、モダナイゼーションナレッジセンターの拡充など、デリバリーの標準化に向けた投資拡大が利益を圧迫している。だが、これは、ビジネスの立ち上げフェーズにおける計画通りの先行投資であり、ネガティブにはとらえていない。第4四半期はさらなる売上拡大により、黒字幅を拡大し、通期では黒字化を目指す」としている。
リージョンズ(Japan)では、売上収益が前年同期比2.1%増の9052億円、調整後営業利益は同25.3%増の1539億円。「DXビジネスや基幹システムの刷新など、モダナイゼーション関連のデマンドが拡大しており、モビリティや金融を中心に増収となった。採算性向上も進展している。だが、売り上げの第4四半期偏重に課題が残る。今年度も大きく積みあがってきているが、偏重型のビジネスモデルは、事業効率の悪化や不測のリスクに対する課題や懸念につながる。リカーリングビジネスなどにより平準化を進めるという対処が必要である」と課題を示した。
リージョンズ(海外)の売上収益は前年同期比5.3%減の4218億円、調整後営業利益は前年同期から156億円改善し、124億円の黒字に転換した。「減収ではあるが、事業ポートフォリオ改革の効果により採算性が大きく改善している。この改革の成果がようやく表れてきた」と語った。
2024年度第3四半期累計の国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年同期比2%増となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比5%増、ファイナンス(金融・保険)が同6%増、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が同5%減、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が同10%増となっている。
「第3四半期だけを見ると、全体では前年同期比9%増となっている。また、過去2年間での平均成長率も9%増で推移している。前年度は複数年契約の大型案件の獲得が多く、年間を通じて高い受注水準で推移していたが、今年度はこれを上回っている。デマンドの拡大基調が継続し、確実な商談獲得を続けていることの表れである。増収トレンドは第4四半期や、2025年度も続けることができるだろう」とした。
その上で、「エンタープライズはDXやSX関連、基幹システムのモダナイゼーション案件が拡大。流通、製造など、幅広い範囲で受注拡大が続いている。ファイナンスは金融機関向け基幹業務システムの大型更新商談を獲得している。パブリック&ヘルスケアでは、第3四半期に公共分野における複数の基幹システム案件を獲得し、高水準の前年同期を上回った。ミッションクリティカルはクラウド商談などの複数の大型案件を獲得した。第4四半期にはナショナルセキュリティを中心に大、型案件が複数あり、好調な受注環境が継続する」と見込んでいる。
海外の受注状況は、Europeが前年同期比18%減、Americasが同8%減、Asia Pacificが同45%増となっている。Asia Pacificでの大幅な伸びは、オセアニアで公共系の新規案件や更新案件などを獲得していることが理由だという。
第3四半期累計でのハードウェアソリューションの売上収益は、前年同期比4.7%減の7128億円、調整後営業利益は同61.9%減の141億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同5.7%減の5934億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同0.4%増の1194億円となった。
「システムプロダクトは、前年の国内公共系サーバーおよびストレージの大型商談の反動と、円安水準で推移したことによる部材高騰の影響があった。ネットワークプロダクトは国内外ともに前年並の水準で、谷間の時期が続いている。そうしたなかにおいて、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続している」という。
ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比8.2%減の1814億円、調整後営業利益は同21.8%増の203億円になった。2024年4月に欧州地域の事業を終息したことが影響したが、国内では2025年10月のWindows 10のサポート終了に対応したデマンドが顕在化しており、増収につながっている。
デバイスソリューションは、売上収益が前年同期比2.4%増の2175億円、調整後営業利益は同61.4%増の205億円となった。需要の回復は見込みからは遅れているが、為替がプラスに働いている。
消去・全社では、調整後営業利益は前年同期から51億円回復したものの、マイナス589億円の赤字となった。
2020年にスタートしたOne Fujitsuプログラムにおいて、2024年度第3四半期に、1000億円規模を投資したOne ERP+が社内で稼働し、国内約7万人が利用。富士通自らのDXを加速し、データドリブン経営を加速する一方で、社内実践を有用なリファレンスとしてビジネスに展開していくという。
「まずは、日本のSE、営業、ファイナンス、購買などでの利用が始まった。今後、欧州などにも展開していくことになる。ERPの刷新は、富士通自らが苦労しながらやっているのが正直なところだ。まだ、オペレーショナルエクセレンスとデータドリブンの効果が出ていない。2~3年をかけて効果があがってくる。スタートに立ったところであり、経営や事業部門がタイムリーな判断ができるようになることが、最大の効果になる」とした。
なお、第3四半期までに、セルフ・プロデュース支援制度の拡充費用として約200億円、M&A関連費用で約40億円、事業再編費用で約40億円を計上している。
磯部副社長 CFOは、今回の決算を総括する形で、社内計画に対する進捗についても言及。「第3四半期累計の状況はセグメントごとに異なるが、全体ではおおむね計画通りである。サービスソリューションは採算性改善を中心に計画から若干のプラス。ユビキタスソリューションもWindows 10のサポート終了に伴う買い替え需要の立ち上がりが想定よりも早く、計画を上回っている。ハードウェアソリューションは円安によるコストアップで若干のマイナスであり、特にネットワークの商談パイプラインや受注は計画を下回った。デバイスソリューションはデマンドの回復が遅れ、売上、利益ともに計画には未達となった」と報告した。
2024年度通期の業績見通しを修正
2024年度通期(2024年4月~2025年3月)の業績見通しを修正した。
新たに用いた継続事業ベースによると、売上収益は450億円増額し、前年並の3兆4700億円とした。調整後営業利益は据え置き、同9.3%増の2900億円、調整後当期純利益も据え置いて同4.2%減の2260億円とした。
セグメント別では、サービスソリューションの売上収益および調整後営業利益に変更はなく、売上収益は2兆2300億円、調整後営業利益は2800億円とした。ハードウェアソリューションでは売上収益で200億円増額の1兆5000億円、調整後営業利益では80億円減額の620億円、ユビキタスソリューションでは売上収益は250億円増額の2450億円、調整後営業利益では80億円増額の280億円としている。
ノンコア事業のカーブアウトによるポートフォリオ変革の取り組みについても説明した。
新光電気工業は2025年2月から、JICC-04による公開買い付けを開始する予定であり、2025度に株式譲渡の実施予定。富士通オプティカルコンポーネンツは、2024年12月に古河電気工業への株式譲渡契約を締結し、2025年4月に株式譲渡の予定だ。富士通ゼネラルは2025年1月にパロマ・リームホールディングスへの株式譲渡契約を締結し、2025年度に公開買い付けおよび株式併合の完了後、株式譲渡を完了する。
「ノンコア事業としていた大物については、めどがついた」とし、「中期経営計画期間3カ年のベースキャッシュフローとして、1兆3000億円の創出にはめどがついた。また、デバイスソリューションは2024年度末に、非継続事業へ分類変更予定である」と説明した。