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インボイス制度で30%の社員が経費精算の負担増と回答――、TOKIUMが企業負担の実態をアンケート調査
電子帳簿保存法の施行による影響も
2024年3月25日 06:00
TOKIUM(トキウム)は22日、インボイス制度と電子帳簿保存法に関する企業の実態調査を発表した。
インボイス制度は2023年10月に施行され、改正電子帳簿保存法は2024年1月から宥恕(ゆうじょ)期間が終了したばかり。2024年3月は決算を迎える企業が多いことから、決算作業に取り組む企業にアンケートを実施し、インボイス制度、改正電子帳簿保存法が施工されたことによる影響を調査した。その結果、経理担当者の約半数がインボイス制度開始後の最初の本決算に不安を感じるなど、戸惑いや負担増を感じていることが明らかになった。
また、両制度ともに経理担当者だけでなく社員が制度を理解する必要があり、企業内で勉強会などを実施しているケースもあるが、今回の調査を担当したTOKIUM グロース・マーケティング/ウェブ広告担当の中島恵里奈氏は、「社員の理解を向上させるだけでなく、システムでカバーする体制を作ろうとする企業も出てきている」と言及。インボイス制度や改正電子帳簿保存法を円滑に運用するために、システムの存在が不可欠となっている。
今回のアンケートは、3月11日から14日までの期間にインターネットを活用し、経理部門に所属する1046人、経理部門以外に所属する従業員1100人からアンケートを取得した。
経理部門に対し、「インボイス制度開始後の最初の本決算で不安を感じていますか?(いましたか?)」と質問したところ、「とても感じる」は13.2%、「やや感じる」が35.7%と、合計48.9%が不安を感じているという結果となった。それに対し、「(不安を)あまり感じない」が26.8%、「(不安を)まったく感じない」が11.8%で、不安を感じない人は合計38.6%という結果だった。
不安を感じている人に対し、「どのようなことに不安を感じていますか?」と質問したところ、「会計システムに、経過措置や登録業者か否かなど、税区分が正しく反映されているか」を挙げた人が55.0%にのぼった。また、「受け取った請求書に登録番号や税区分などの不備がないか」を挙げた人が52.8%となった。「インボイス制度開始後の本決算を迎え、実際のところどうなのか?という点に不安を感じている人が多いことがうかがえる」(中島氏)。
なおインボイス制度に対しては、免税事業者との取引がある課税事業者の急激な負担を軽減することを目的に、6年間の仕入税額控除の経過措置が設けられている。「緩和措置が設けられていることから、それで救われるのでは?と外から見ると考えるかもしれないが、現場担当者としては緩和措置期間中、3年ごとに対応を変える必要があり、余計に負担が増すことになるのではと考える経理部門担当者もいるようだ」と中島氏は指摘している。
次に、経理部門以外の人に対し、「インボイス制度が開始されたことで、経費精算における負担は増えましたか?」と聞いたところ、「増えた」が11.3%、「やや増えた」が19.0%となった。負担が増えたという人に具体的な内容を確認したところ、「領収書に必要事項(登録番号や適用税率など)が記載されているかの確認」が45.5%で一番多かった。
中島氏は注目すべき回答を何点か挙げている。まず、32.3%が回答している「明細を書くように社内ルールが変更された」。これは、集まった領収書等に記載された内容がインボイス制度の特例に該当するかを判別しやすくすることを目的としたもので、企業によっては税率や品目ごとに細かく精算表を作成することを社内規定に設けている企業もあるという。
「インボイス制度のルールで、取引の中にはその都度インボイスを受け取るのが難しい取引があることから、細かく特例が設けられていることが要因となっている。特例の代表的なものが3万円未満の公共交通機関による運送を利用した場合で、タクシー、飛行機は該当しない。また、2023年12月には急ぎ特例として、3万円未満の自動販売機および自動サービス機からの商品購入が設けられるなど、確認が必要になっている」(中島氏)。
インボイス制度で負担が増えたという回答を従業員数別に見ると、従業員数100人未満の企業では「支払先が登録事業者か確認する負担が増えた」という回答が多い。1000人未満の企業では「経理からの指摘が増えた」、5000人以上の企業では「明細を書くよう社内ルールが変更された」、「インボイス制度への理解」と回答した人の割合が多いという。
「大企業ではインボイス制度開始前に社内勉強会、弊社のようなインボイス関連システムを提供している企業などが発行しているインボイス制度を紹介する資料を配布するなど、社内での周知作業が進んだ。その一方で、個人の負担は増えるという傾向が出ている」(中島氏)。
従業員数1000人以上、5000人未満の企業では、「インボイス制度に対応していないタクシーや飲食店を利用できなくなった」という割合が多い。が、実はインボイス未対応の取引先を排除することに対しては、公正取引委員会が「インボイス制度の実施に際して免税事業者とその取引先との間で起こり得る独占禁止法・下請法上問題となり得る行為」と明言している。
中島氏は、「経費精算は、企業の社内規定にのっとって運用されることになるが、公正取引委員会が問題としてあげているものであり、インボイス制度に対応していない事業者との新しい取引を控えるよう指示されたとしている企業は、注意が必要な内容」と注意する必要があると話している。
2024年1月から宥恕期間が終了した改正電子帳簿保存法については、経理部門以外の人は、「特に変わらない」が34.6%となっているものの、「請求書や領収書などをルールに従って保存する手間が増えた」と答えた人が19.4%、「新しくシステムが導入されたため、使い方習得に時間がかかっている」が16.9%となった。
経理部門に所属する人は、電子帳簿保存法への対応状況について、「対応できている」が35.2%、「宥恕期間終了後の猶予措置を活用し、対応完了のめどは立っている」が25.6%、「猶予措置を活用しているが、対応の見通しが立っていない」が14.7%となった。
めどが立っていない企業や「対応方法がわからない」という企業にとっても、「2023年12月末で改正電子帳簿保存法の宥恕措置が終了したが、相当の理由がある場合には猶予措置が適応される。電子帳簿保存しない場合にも罰則はないということになるが、いつまでも電子化をしなくてもかまわないということではない。電子化を進める準備はしなければならないということはきちんと認識しておく必要がある」(中島氏)と今後対応していかなければならない。
現状では経理担当者にとって、「電子帳簿保存法への対応で負担が増えた」と答えた人が46.0%、「変わらない」が34.9%。「減った」という回答はわずか2%となった。
負担が減ったと回答した人に理由を聞いたところ、「システムを利用することで、紙の帳票を探す時間が無くなった」が27.6%、「システムを利用することで、必要なデータを迅速に収集できるため、監査対応やレポート作成などの時間が短縮された」が24.1%、「システムを利用することで、請求書や領収書などのデータを入力する時間が削減した」と「システムを利用することで、承認プロセスがデジタル化し、承認作業が短縮された」が20.7%と、システム導入が負担減の要因となっている。
「当社をはじめ、関連システムを提供する企業が業務負担を削減するサービスを投入している。電子帳簿保存だけでなく、監査やレポート作成、承認プロセスなどさまざまな部分が改善されていることが回答から見て取れる」(中島氏)。
また、電子帳簿保存法に関連する回答の中で、インボイス制度のスタート、改正電子帳簿保存法の宥恕措置終了がほぼ同じタイミングとなったことに対し、「業務負担が増えた」という回答が28.2%あった。
「電子帳簿保存法とインボイス制度は、似ているところもあるが違いも多い。違いを考慮しながら対応する必要があり、きちんと確認しながら対応を進める必要があり、企業にとっては負担が大きくなっている」(中島氏)。
TOKIUMでは、経費精算業務をペーパーレス化する経費精算クラウド「TOKIUM経費精算」、請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」、支出管理クラウド「TOKIUM電子帳簿保存」を提供している。
インボイス制度スタート以降は、経理部門からの問い合わせは減少傾向にあるものの、経理部門以外からの問い合わせが増え、内容も基本中の基本を確認するような問い合わせが増えた。
経理部門からの問い合わせ内容は、実務にのっとった内容となっている。これはインボイス制度施行以前から、明確ではない部分があることが指摘され、国税庁のホームページには事例が追加されていることにも影響していると見られる。
今回のアンケートや導入企業からの回答をかんがみてTOKIUMでは、「半数近くの経理担当者がインボイス制度開始直後の最初の本決算で不安を感じている」と指摘。30%の一般社員が経費精算の負担増、16%が経費精算できなかった経験があるという結果となった。電子帳簿保存法へ対応ができている企業は約35%、対応している企業の約半数が負担が増えているという結果となった。
「こうした課題を改善していくためには、さらに社員への理解を進めることも必要だが、社員が理解していなくてもシステムでカバーできる体制を作ろうとする企業も出てきている。実はインボイス制度、電子帳簿保存法の改正は、単なる電子化を促すだけためのものではなく、税務調査をリモートで行う、e-Taxで税務調査の追加資料を提出するなど、電子化ならではの動きも出てきた。電子化は法律変更に沿ってやりたくないのに対応しなければならないというものだけでなく、企業にとってもポジティブに感じるものとなる可能性も出てくるのではないかと感じている」(中島氏)とデジタル化を前向きに受け取ることができる要素もあるのではないかと推測している。