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支出の最適化で企業の未来を良くしていく――、請求書受領サービスなどを手掛けるTOKIUMの戦略
3月にBEARTAILから社名を変更
2022年5月6日 08:00
TOKIUMは、提供する支払い管理サービスの利用者拡大を推進する。
同社は3月31日に、社名を株式会社BEARTAILから株式会社TOKIUM(トキウム)に変更。提供するサービス名も、ペーパーレス経費精算システム「レシートポスト」を「TOKIUM経費精算」へ、請求書オンライン受領・処理サービス「インボイスポスト」を「TOKIUMインボイス」へとそれぞれ変更し、社名とサービス名を統一するなど、ブランド強化を図った。
代表取締役社長の黒﨑賢一氏は、「2022年の電子帳簿保存法の改正、2023年のインボイス制度開始と企業の支払いに関わる法改正が行われ、ルールが変わる。企業がルール変更に巻きこまれる“カオス”の中、当社のサービスを利用することで、即ベストエフォートが実現できる。請求書・領収書といったデータをもとにした支出の最適化は、企業の未来をよくするためのサービス。企業の未来をよくするためのお手伝いをする企業として、利用者を拡大していきたい」とアピールしている。
そのTOKIUMのサービスについて黒崎社長は、「支出管理は、新たにこの分野に進出してきた企業もいる、競争の激しい分野。当社はこの領域で10年間ビジネスを行ってきた経験があり、実情をよく理解していることが大きな強み」と、自社ビジネスの優位性を説明した。
TOKIUM経費精算、TOKIUMインボイスで累計900社の顧客を獲得。最も多いのは従業員数が200人程度の企業だが、日本テレビ、吉本興業といった大手企業から小規模企業まで幅が広いことが特徴という。
利用料金は、月に150枚程度の領収書を登録する場合で、月間5万円程度。2020年(2020年3月~2021年2月)と2021年(2021年3月~2022年2月)の両サービスの売上を比較すると、4倍に急増しているとした。
同社は2012年に設立。創業者でもある黒﨑社長は、「2011年の東日本大震災の後、ボランティアとして被災者支援にも関わった。震災直後は、誰が、どの避難所にいるといった情報が錯綜(さくそう)していたが、その際、個人的に大きな威力があると痛感したのが、Googleのパーソンファインダーの、写真で情報を登録する技術だ。人捜しの際、避難所となっていた施設の壁に張り紙で張り出されていた情報が、写真撮影によって一瞬でデジタルデータになる。データが有用であることを実感することになった」と創業前を振り返る。
自身が筑波大学で画像処理研究室に所属し、機械学習の有効性を目の当たりにしたこともあって、「画像読み取り技術がビジネスとなると実感した」という。
ただし、単純な画像読み取り技術だけではGoogleをはじめ大手ITベンダーと真っ向から競合することになる。そこでレシートに着目。レシートを撮影して読み取り、業務に利用するOCRエンジンを開発した。
ただし、レシートを読み取って業務で利用する場合、読み取れない部分があると業務に利用することは難しい。それについて黒崎社長は、「スマートフォンのデータ読み取り技術に驚きを感じ起業したのだが、実際の業務で使うデータを整備するという点では不十分であることが明らかになった。そこで、機械では不十分なところを人力でカバーする仕組みを整えた」と説明する。
同社では、法人向け支出管理クラウドサービスを2016年9月に提供開始したが、これが現在、「TOKIUM経費精算」として提供しているサービスの原型となっている。
ところが当初3年間は、利用者数は伸び悩んだ。当時のサービスでは、「スムーズに経費精算をするために、領収書を撮影してもらえれば人力によって間違いのないデータに修正し、99.9%の精度を実現した」が、それだけでは利用企業は増えなかったのだ。
そこで、「2019年にサービスの内容を変更し、契約した企業に当社が専用ポストを設置。撮影が終わった領収書をそのポストに投函(とうかん)してもらえれば、その領収証を当社が回収し、申請された領収書の原本かチェックを行い、チェック後は領収書原本を10年間当社で保管する仕組みまで提供したところから利用企業が急増していった」そうで、企業にとって面倒な部分を請け負うことで、利用企業の増加につなげたのだという。
現在は「TOKIUM経費精算」に加え、どんな形式の請求書でも、受領から保管までオンライン化・ペーパーレス化が可能な請求書受領クラウドサービス「TOKIUMインボイス」を提供している。
このサービスでは、請求書をTOKIUMが代行受領し、全請求書をデータ化して、仕訳や会計システムへの連携、10年間の保管などを請け負う。
「いずれのサービスも、企業にとって面倒な部分を当社が請け負うようになったことで、利用企業が増えていくことになった」(黒崎社長)。
現在は2000人の外部スタッフを抱え、データ入力作業を請け負っている。領収書や請求書は、企業の機密情報となるため、外部スタッフといってもきちんと身元がわかっている人物だけと契約している。特に機密性の高い請求書データについては、マスクをかけた上、国外で入力を行う仕組みにして情報の流出などを防いでいるとのこと。
「また、社としてプライバシーマーク、ISO/IEC 27001を取得している。サービスを提供していく中で、お客さまに安心して利用してもらうことができる体制を構築していった」(黒崎社長)。
領収書や請求書をデジタル化するサービスは、複数社から提供されているが、「外資系企業のサービスと比べると、当社の強みとなるのは、日本のお客さまと付き合い、サービスを拡充してきたことだ。例えば、領収書や請求書データと連係している会計ソフトは36種類。連携する会計ソフトの数は国内ではナンバー1だと自負している。顧客の要望によって、年々、連携する企業の数が増えていった」という。
当面は支出管理サービス分野でナンバー1の地位を目指していく。「サービスについては、支出管理分野に必要なサービスをさらに拡充することも計画している」としており、意欲的に支出管理分野のサービス拡充を進めていく考えだ。