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NEC、通信用光ファイバーで突発的な渋滞の状況を高精度に予測する技術を開発
2025年8月22日 14:06
日本電気株式会社(以下、NEC)は22日、光ファイバーセンシング技術を活用して全線の道路状況をリアルタイムに把握し、突発的な渋滞の状況を高精度に予測する技術を開発したと発表した。既設の通信用光ファイバーケーブルをセンサーとして利用し、道路全線のリアルタイムな交通流データを独自のAIモデルで分析することで、予測誤差を従来比で80%低減したという。
現在、交通状況の把握には、主にカメラやループコイルなどの断面交通量計やETC2.0プローブデータが利用されているが、前者は設置・維持コストの問題により道路全線をカバーすることが難しく、後者は車両がデータを受信するスポットを通過した際にデータが収集されるため、状況把握のリアルタイム性に課題がある。
また、渋滞予測は過去の長期データを学習させたモデルで予測するため、突発渋滞のような過去データと傾向が異なる場合に、その渋滞の拡大過程を高精度に予測することが困難だった。
NECはこれまで、光ファイバーセンシング技術を活用して、道路沿いに敷設されている通信用光ファイバーを利用することで、道路全線の交通流データをリアルタイムに取得する技術を開発してきた。今回、さらに独自の渋滞予測モデルを開発し、突発的な渋滞が発生してもその延伸・解消過程をリアルタイムかつ高精度に予測することを可能とした。
NECでは、リアルタイムに取得した全線交通流データを高精度にモデル化し、リアルタイムに取得した全線交通流データを精度良くモデル化し、シミュレーションに逐次適用させるため、新たにモデルパラメーター最適化手法とデータ適合手法を取り入れたデータ同化アルゴリズムを開発した。
モデルパラメーターの最適値を推定するアルゴリズム(モデルパラメーター最適化)は、シミュレーション結果が取得した全線交通流データを再現するよう、車間距離調整などの車両挙動の発生確率など、理論モデル内のパラメーターを最適化する。
取得した全線交通流データをシミュレーションへ反映可能にするデータ変換アルゴリズム(データ適合)は、交通流の平均速度から、各車両の位置/速度といった、シミュレーションの入力形式と異なるパラメーターを持つ取得データを、シミュレーションに適用できるデータへ変換する。これにより、取得した全線交通流データに基づいたシミュレーション初期条件が設定可能となり、シミュレーション結果の信頼性が向上する。
これらの技術により、渋滞発生直後から解消まで、従来のカメラなどによる断面交通量情報を用いた場合と比較して、渋滞予測の指標の一つである旅行時間の予測誤差を約80%低減できることを実データで確認した。
この技術により、迅速かつ効果的な交通制御や迂回路の設定が可能で、道路ネットワーク全体の効率化が進むことで、物流2024年問題やCO2排出量削減といった社会課題の解決に貢献するとしている。
NECは、道路全線の交通状況をリアルタイムに把握し、渋滞の成長過程を予測し、最適な対処を可能とする動的な道路デジタルツインの実現に向けて技術開発を進めている。今回の予測技術の実用化に向けて、現在、実環境での実証実験を進めており、道路管理者との連携を強化しながら2026年度までの実用化を目指すとしている。