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TIS、ニッセイ・ウェルス生命保険の基幹システムをOCIとAzureを組み合わせたマルチクラウド環境への移行を支援
2025年8月21日 16:37
TIS株式会社は20日、同社の「マルチクラウドインテグレーションサービス for Oracle Cloud Infrastructure & Microsoft Azure」により、ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社(以下、ニッセイ・ウェルス生命)の保険契約管理システムをOracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)上に構築し、Microsoft Azure(以下、Azure)上にある複数の業務システムと連携させるマルチクラウド移行を実施したと発表した。プロジェクトは2023年1月から2024年9月にかけて実施され、これにより、基幹システムのクラウド移行とマルチクラウドの一元的な運用管理を実現した。
マルチクラウドインテグレーションサービス for Oracle Cloud Infrastructure & Microsoft Azureは、Azureの導入やOracle Databaseのクラウド化を検討している企業に対し、OCIとAzureのマルチクラウド導入をコンサルティングから運用・保守までワンストップで提供するサービス。
ニッセイ・ウェルス生命のIT本部ITインフラ推進部では、2018年頃からあらゆる業務システムの脱データセンターを目指す「クラウドジャーニー構想」を推進してきた。2021年には100以上の業務システムの仮想マシンをAzure上へ移行し、2022年には仮想デスクトップ基盤のAzure移行も完了している。
その後、保険契約・支払い・契約者からの問い合わせ対応など、業務全般を支える保険契約管理システムのクラウド化に取り組むことになった。保険契約管理システムは、Oracle Databaseを組み込んだオープン系サーバー上に構築され、データセンターで運用されてきたことから、クラウド移行にあたっては可用性や堅牢性を高めることがポイントに挙げられていた。
基幹システムのクラウド移行はニッセイ・ウェルス生命として初の試みであり、当初はOCI以外の他社クラウドへの移行も検討したが、Oracle Databaseの新規ライセンス購入が必要となり、高額なコストが課題となっていた。
そこでニッセイ・ウェルス生命は、Oracle DatabaseがPaaSの機能として提供され、ライセンス費用は月々の従量課金に含まれるOCIに注目した。OCI以外の他社クラウドと比較してコストを大幅に抑えられるほか、OCIではOracle Real Application Clusters(RAC)やOracle Data Guardをサービスとして利用できることから、リプレイス後の保険契約管理システムはDB基盤をOCI上に構築し、Azure上にある複数の業務システムと連携させるマルチクラウドを目指すことを決定した。
ニッセイ・ウェルス生命では、TISとマルチクラウドインテグレーションサービス for Oracle Cloud Infrastructure & Microsoft Azureの選定理由について、クラウド全般の技術に精通している点と、ニッセイ・ウェルス生命の業務基盤を熟知している点を挙げている。
AzureとOCIを別々のベンダーが運用管理した場合、障害発生時の連絡窓口が分散し、問題解決に時間を要するリスクがあるのに対し、TISはAzureやOCIを含めたクラウド全般の技術に精通している。また、過去数年間にわたりニッセイ・ウェルス生命のAzure環境の構築・運用を支援してきたTISであれば、その業務基盤を熟知していることから、マルチクラウドの環境構築から統合運用までを託せるベストパートナーと判断したという。
2022年終盤から導入プロジェクトの計画を立案し、短期間で確実に遂行するため、マルチクラウドインテグレーションサービス for Oracle Cloud Infrastructure & Microsoft Azureを利用することにした。2023年1月からまずはPoCに着手し、保険業界で求められる耐障害性を備えているかを検証した。数カ月に及ぶPoC期間を通じて、OCI上のOracle Databaseの安定稼働が確認されたことで、マルチクラウド環境の本番構築へ進むこととなった。
2023年9月から要件定義・設計フェーズをスタートし、約1年をかけてマルチクラウド環境の構築を行った。情報が外部に漏えいするリスクを最小化するため、AzureとOCI間はインターコネクトで接続し、ニッセイ・ウェルス生命と2つのクラウド間は専用線で接続する構成が組まれている。パブリッククラウドでありながら、プライベートネットワークに近い構成を採用することで、保険契約情報を安心して管理できるようになった。
プロジェクトの終盤を迎えた2024年3月から、システム切り替えを確実に成功させるため、複数回の移行リハーサルを実施した。本番移行では、まず週末にオンプレミス環境のデータ更新を停止し、移行する保険契約データをエクスポートした。このデータをOCIに移行後、新システムへの切り替えが実施され、実際の業務での利用がスタートしている。
新システムへの移行完了後、マルチクラウド環境は期待通りに安定稼働を続けている。今回のマルチクラウドインテグレーションサービス for Oracle Cloud Infrastructure & Microsoft Azure導入による効果としては、「OCI上での堅牢なDB基盤の構築」「情報照会の際のレスポンス改善」「保険料計算などバッチ処理の高速化」の3点を挙げている。
OCI上に構築された堅牢なDB基盤は、PoCで確認した通りの高い品質で安定稼働しており、RAC構成による冗長化とOracle Data Guardによる災害対策を実現したとしている。
情報照会の際のレスポンス改善については、旧態化した物理サーバーから最新のIaaS基盤に移行したことに加え、Oracle Database 11gからPaaS上の最新版19cへバージョンアップしたことがパフォーマンス向上に貢献していると説明。また、保険料計算などのバッチ処理の高速化については、保険契約に関する各種計算などを行う夜間バッチにかかる1日あたりの処理時間が、平均2時間から1時間7分へと短縮したという。