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日立、AIエージェントとデジタルツインによる「現場安全高度化ソリューション」を提供

現場安全高度化ソリューションの概要

 株式会社日立製作所(以下、日立)は8日、建設や輸送、電力、ガス、鉄道などの危険を伴う作業現場において、フロントラインワーカーの安全確保に向け、日立のAIエージェントとNVIDIA Omniverseテクノロジーにより、安全手順の確認や危険個所のシミュレーションが可能な「現場安全高度化ソリューション」を販売開始した。

 現場安全高度化ソリューションは、日立のOT活用ノウハウで熟練者の安全基準を学習したAIエージェントが、NVIDIA Omniverseソフトウェアライブラリーでシミュレーションされたデジタルツイン上で、作業員に対して作業手順や注意点を視覚的に提示するソリューション。生成AIを活用した業務効率化やサービスの高度化など、経営改革を推進する顧客を伴走型で支援する生成AI活用プロフェッショナルサービス「powered by Lumada」の一環として提供する。

 また、導入にあたっては、日立の「GenAI Professional」が構築・運用を伴走支援し、NVIDIAとの連携で培った知見をもとに、現場定着までを一貫してサポートする。

 現場作業では、限られた時間内での情報共有や設備騒音による伝達の難しさなど、コミュニケーションの課題があり、従来は熟練作業者の経験と判断力で補ってきた。しかし、熟練作業者の減少により、従来の伝達方法では伝達ミスや認識のずれが発生し、労働災害につながる懸念が高まっているという。

 ソリューションでは、日立グループにおける数百のOT事例から得たナレッジ抽出手法で、現場構造や作業特性、熟練作業者の判断基準や暗黙知を学習したAIエージェント群を構築。このAIエージェント群は、「Frontline Coordinator - Naivy」の心理的負担軽減技術などを活用し、各作業者の経験レベルや職種、作業内容に応じて適切に構成される。

 そして、NVIDIA Omniverseの高度で物理的に正確なシミュレーション機能を活用したデジタルツイン上で、作業者に視覚的かつ分かりやすく作業手順や注意点を提示する。これにより、関係者全員が作業手順や注意事項、リスクポイントを即座に共有できる環境を実現し、安全な作業遂行に貢献する。

 日立が独自に開発・運用してきたOTナレッジ活用手法を用い、安全事例や熟練作業者の判断プロセス、暗黙知を学習した多様なAIエージェント群を構築する。これらAIエージェント群が、減少する熟練作業者に代わって個別最適化された安全判断を支援し、高い安全性を確保した作業遂行を可能にする。

 さらに、「リスクマネジメント高度化ソリューション」との連携により、日立グループが蓄積してきた安全管理ナレッジを各AIエージェントに取り込み、デジタルツイン上での危険シナリオシミュレーションを実施する。これまで熟練作業者の個人的な経験や直感に依存していたリスクアセスメントを、AIエージェント群による統一された基準で実施することで、部署や個人による安全基準のばらつきを解消し、現場特有のリスクや注意点を誰もが分かりやすく理解できる環境を整備する。

 これらにより、属人的だった安全教育から脱却し、組織全体で共通の判断基準に基づいた行動が可能となり、現場全体の安全水準を底上げする。

 日立は今後も、サービスをさまざまな産業分野へ展開し、各現場の知見を学習させたAIエージェントを構築するとともに、現場の特性に適したデジタル作業環境の提供を強化していくと説明。また、熟練作業員の暗黙知もAIに蓄積することで、技能継承の仕組みづくりにも貢献し、持続可能な現場運営の実現を支援していく。これらの技術・ノウハウの蓄積を通じてフィジカルAIを実現し、より高度な安全性と専門性が求められる分野においても、AIとデジタル技術による現場安全の革新と、誰もが安心して働ける現場の実現を目指すとしている。