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MCデジタル・リアルティ、NRTキャンパスに2棟目となるNRT12を開業
2024年3月14日 06:15
MCデジタル・リアルティ(以下、MCDR)は3月6日、千葉県印西市にあるNRTキャンパスにおける2棟目となるNRT12を開設したと発表した。
MCDRは2017年に米Digital Realtyと三菱商事の合弁会社として発足し、これまで関西圏と首都圏でデータセンターの運用を行っている。2017年当初にデータセンターで提供しているサーバー用電力総容量は29MWだったが、順次拡張し、2024年には168MWとなる。今後も追加開発の予定だ。
「首都圏のNRTキャンパス、関西圏のKIXキャンパスともに、地震、津波や高潮、液状化、出水といった自然災害のリスクの低い土地を選定して取得し、開発している」(MCデジタル・リアルティ 代表取締役社長 畠山孝成氏)
NRTキャンパスは、2021年9月に開業したNRT10からスタートした。元々キャンパス型データセンターとして、サーバ-用電力容量が合計で120KWを超える複数のデータセンターを開発する計画で、NRT12の開業で合計73MWに拡大した。印西地域でさらに開発の計画がある。ちなみに、NRT11は欠番とのことだ。
NRT12の概要は以下の通り。
所在地:千葉県印西市
延床面積:27,571㎡
サーバー用電源容量:34MW
収容ラック数:約4,000ラック
建物構造:地上6階、免震構造
NRT10、KIX13に続いて3棟めのNVIDIA認証データセンター
MCDRは国内3カ所で合計8棟のデータセンターを運用しているが、そのうちNRT10と大阪のKIX13は、「NVIDIA DGX H100」および「NVIDIA DGX SuperPOD」対応データセンターとして、NVIDIA社の認証を取得している。これら2棟に加えて、NRT12も同認証を取得し、日本におけるMCDRのNVIDIA認証データセンターは合計3棟になった。
NRT12は、Digital Realtyが提供する、ラックあたり最高70kWの高密度コロケーションならびに革新的な冷却技術「Air-Assisted Liquid Cooling(AALC)」に準拠した設計や、低レイテンシーでの高速ネットワーク環境により、高負荷なAIワークロードはもちろん、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、機械学習、仮想・拡張現実の需要に対応可能という。
公開されたデータホールはまだ設備等が入っていない状態だが、スラブにラックを直置きする設計であることが分かる。NVIDIAの認証では床荷重の規定もあり、このデータホールの床荷重は㎡当たり2トンだという。
NRT10とNRT12は近隣にある別敷地だが、NRTキャンパス内のデータセンターは相互接続サービス「キャンパスコネクト」によって接続されている。キャンパスの複数のデータセンター内のラックを、あたかもひとつのデータセンターのように利用することができ、AI活用やDXに不可欠なデータトランザクションの効率化を図れる。加えて、NRT12はモジュール設計を重視しており、AI導入の拡大などのニーズに応じて、サーバー環境を動的に構築・拡張することが可能。
また、NRT12は世界25カ国以上、300カ所以上のデータセンター拠点で構成されるMCDRのデータセンタープラットフォーム「PlatformDIGITAL」の一部であり、多様なクラウドサービスやネットワークサービスとの相互接続による、効率的なデータのやり取りが可能となる。さらに、相互接続ソリューション「ServiceFabric」によって、さまざまなデータソースへの優れたアクセスと、ハイブリッドITインフラや複雑なAIワークロードの一元管理を実現する。
AI対応のデータセンターとは
説明会では、Digital RealtyのCTOであるクリス・シャープ氏が登壇し、日本市場の概況や、AI対応のデータセンターについて説明した。
Digital Realtyでは、日本を主要な金融サービスおよびテクノロジーのハブであり、海底ケーブルの中心的な接続ハブでもあると認識している。データセンター市場の成長要因として、ハイパースケールの拡大やAI需要があるが、堅牢なファイバーネットワークと安定した電力が提供される日本は、国際投資の増加が見込まれている。
中でも「東京は世界第5位のデータセンター市場」という調査結果もあり、大きな成長が予測される。NRT12は、東京においてプライベートAIの基盤を提供するデータセンターとの位置づけだ。例えば、金融会社によるRetrieval Augmented Generation(RAG)を使用したプライへベートAIなどを想定している。
AIには学習と推論がある。学習には非常に多くのコンピューティングリソースが必要で、多くの電力と高いラック密度(35~100kW/ラック)が必要になる。このため発生する熱も大きくなり、水冷などの特別な冷却がないと対応できない。ただし、学習はAIを活用するための前段階であり、学習が進んでAIモデルが十分によくなればそれ以上の需要は限定的になる。
一方で、長期的なデジタル経済の原動力は推論の方だが、こちらは学習に比べれば供給電力やラック密度は小さくてかまわない(15~25kW/ラック)。むしろ、場所やレイテンシーにセンシティブになるため、学習用のデータセンターとは違って、利用する都市に近い立地であることの方が重要になる。
いずれにしろ、AIのワークロードはこれまでのワークロードとは異なり、従来のデータセンターとは異なる電力容量ブロックと電力密度が必要であり、データ、AIモデル、アプリケーションを網羅するインテリジェントで高速な相互接続が不可欠だ。Digital Realtyではこれに対応するデータセンターをグローバルに展開しており、東京圏においてはNRTキャンパスがそれを担っている。