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三菱商事とNTTなど5社、製薬・創薬研究データを安全に分析するGPU計算力リモート提供の共同実証実験を開始

 三菱商事株式会社、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、モルゲンロット株式会社、アイパークインスティチュート株式会社の5社は17日、共同で、湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、湘南アイパーク)およびMCデジタル・リアルティ株式会社(以下、MCDR)が運用するデータセンターにおけるGPU計算力リモート提供に関する共同実証実験を開始したと発表した。

 近年、製薬・創薬業界において、AIの活用により新たな医薬品の研究・開発プロセスを大幅に効率化するAI創薬が注目を集めているが、AI創薬の実現には、これに必要なインフラの整備コストや、取り扱う研究データに関するセキュリティ対策などの課題を解決する必要があると説明。今回、NTTのIOWN APN技術およびモルゲンロットの仮想化技術を活用することで、複数のテナント企業が同時に快適・柔軟かつセキュアなAI分析を可能とする、GPU計算力リモート提供を実現する。

 課題の解決を支援するため、実証実験では、研究開発拠点とデータセンター間をNTTのIOWN APN技術を活用した高速低遅延回線で接続することで、データセンターに配備したNVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティングリソースに対し、大量のデータを遠隔拠点から素早く転送して分析することを可能とする。また、モルゲンロットの仮想化技術を活用して、限られたユーザーのみがアクセスできる閉域網内にプライベートクラウド環境を構築することで、研究に関わるデータがパブリッククラウドなどの公衆網に保存されることなく、セキュアな状態での分析処理が可能となる。

 三菱商事、NTT、NTT Com、モルゲンロット、アイパークインスティチュートの5社は、製薬・創薬業界を始めとする国内さまざまな産業におけるAI活用課題解決を目的に、共同実証実験を実施する。実証実験では、日本最大の敷地面積を有する創薬研究所である湘南アイパークと、MCDRのNRT10データセンターを、IOWN APN技術を活用した高速低遅延回線で接続することで、湘南アイパークに入居するテナント企業が遠隔でGPU計算力を利用できる環境を構築し、それを起点として今後さらに検証を共同で実施していく予定。

 今後行う検証では、高速低遅延を実現する回線でユーザー利用拠点と遠隔地のデータセンターとを接続することで、計算処理実行などのコンピューティングに影響を及ぼす遅延・フレームロスなどのネットワーク性能劣化が発生しないことの検証を行う。

 また、今回構築する分析基盤が、創薬AI分析など、各産業において活用されるAIプロセス特有の多様なワークロードに適合し、実証協力テナント企業において業務効率化寄与・経済性などの観点で有効性が認められることを検証する。

 さらに、今回構築する実験環境下において、IOWN APN技術を利用した遠隔GPU利用におけるコンフィデンシャルコンピューティングの実行可能性が認められ、製薬・創薬業界に必要とされるセキュリティ要件が満たせることを検証する。

 実証実験で利用する計算力提供にあたっては、高い安全性を確保し、サーバー性能を最大限発揮する観点から、MCDRが運用するNRT10データセンター(千葉県印西市)を採用しており、三菱商事がNVIDIA H100 GPUを搭載したサーバーを設置している。また、NVIDIAより湘南アイパークのメンバーとして製薬・創薬業界の専門知識や、テナント企業向けにAI創薬の最新の業界動向のアップデートやサービスのユースケースの検討にあたっての支援を受けている。

 今回の実証を通じ、新たなAI分析基盤の実現性・創出価値や耐量子レベルのセキュリティの実現性を確認するとともに、より多くの産業での効率的かつ安全なAI活用拡大などの社会課題の解決に貢献していくとしている。

共同実証実験のイメージ