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チューリング、完全自動運転AI開発用の計算基盤「Gaggle Cluster」をMCデジタル・リアルティの「NRT10」に構築

 MCデジタル・リアルティ株式会社は17日、チューリング株式会社が完全自動運転AI開発用の計算基盤「Gaggle Cluster」を、MCデジタル・リアルティの「NRT10」データセンターに構築したと発表した。

 チューリングは、完全自動運転技術の開発に取り組むスタートアップで、カメラから取得したデータのみで、ステアリングやアクセル、ブレーキなど、運転に必要なすべての判断をAIが行う自動運転システムを開発している。チューリングは現在、2025年内に東京の市街地において、30分以上の完全自動運転の実現を目指すプロジェクト「Tokyo30」に取り組んでいる。

 完全自動運転を実現するAIの開発には、大規模かつ高速な計算基盤が必要となるため、チューリングでは96基のNVIDIA H100 GPUからなる、自動運転AI開発のための専用計算基盤「Gaggle Cluster」の構築を決定し、同基盤を最大効率で運用できる構築環境として、NRT10の利用を開始した。

「Gaggle Cluster」写真(チューリング提供)

 NRT10は、NVIDIAのDGX-Ready認証を取得し、一般的に消費電力が膨大なGPUにも対応する電力供給能力や、運用時の排熱を効率的に冷却できる設備を有していると説明。これにより、GPUの能力を最大限に引き出し、最大効率で運用できるとしている。

 また、チューリングはNRT10をGaggle Clusterの構築環境としたことで、自社にオンプレミス環境を構築した場合と比べ、構築開始から運用開始までの期間を、約1年から3カ月と大幅に短縮できたと説明。MCデジタル・リアルティが提供する高密度コロケーションサービスを利用することで、一般的なデータセンターに同基盤を構築した場合には20ラックのスペースを要するところ、8ラックに圧縮でき、拡張性を確保しながら、AIインフラの効率化も実現したとしている。

MCデジタル・リアルティ代表取締役社長の畠山考成氏

 また、MCデジタル・リアルティは16日、同社の2024年の振り返りと2025年の事業展望を説明した。同社代表取締役社長の畠山考成氏は、2024年はMCデジタル・リアルティにとってエポックメイキングで、さまざまなことが始まった年になったと説明。3月には千葉県印西市で「NRT12」データセンター運用を開始するとともに、4月には「NRT14」の建設に着工。これによりNRTキャンパスは100MW級の大規模データセンターになるとした。

2024年には「NRT12」が開業、「NRT14」が着工

 サービス面では、ユニアデックス株式会社とデータセンター向けマネージドサービスで協業し、テルストラ・ジャパン株式会社(以下、テルストラ)とは包括的業務提携により、NRT/KIX両キャンパスでテルストラの接続性サービスが利用可能になるなど、パートナー企業との協業によりサービスを拡充し、顧客の利便性向上への取り組みを続けているとした。

 また、2024年はAI関連需要が大きく伸長し、MCDRのデータセンターでは株式会社マクニカがNVIDIA DGX H100の検証環境をNRT10に構築したほか、株式会社Preferred Networksが新たに構築するAI計算基盤施設としてNRT12を採用したといった事例を紹介した。

導入事例

 2025年の展望としては、AI時代の本格化でデータセンター需要が加速度的に拡大することや、経済安保・地政学上、日本はAPACにおける最重要市場になるとともに、データは国家安全保障の問題になるといった認識を説明。大手クラウド事業者は、兆円規模で日本国内でのデータセンター関連投資を計画しており、研究開発拠点も日本に開設していることを紹介した。

 こうした状況に対して、業界としての主な課題は、データセンター事業の育成伸長に関わる国家戦略・グランドデザインおよび官民連携の強化が必要だとして、電力供給能力の拡大整備や、AIインフラの構築、専門家人材の育成が必要だと説明。MCデジタル・リアルティも、既存キャンパスをベースと事業拡大を進めるとともに、コロケーション・コネクティビティサービスの拡充によるエコシステム強化、さらに専門家自在・プラットフォームの強化を進めていくと語った。

データセンターを取り巻く環境と課題