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日本マイクロソフト、Dynamics 365やPower Platform向けCopilotの価値を説明
ビジネス環境における普遍的な課題の解決をAIで支援
2024年1月24日 12:47
日本マイクロソフト株式会社は23日、Dynamics 365やPower PlatformなどのビジネスアプリケーションにおけるAI機能について説明した。
日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部の野村圭太本部長は、「マイクロソフトのビジネスアプリケーションは、統一されたSaaSとして、CRMとERPを提供して価値を提供できること、ローコードにより課題解決を迅速に行うことができるという特徴に加え、新たにAI Copilotを追加したことで、さらなる生産性向上を実現できる」としたほか、「Dynamics 365は、CRMからERPまであらゆる役割に応じた世界初のビルトインAI Copilotであり、Power Platformは、世界初のAI Copilot内蔵ローコードツールになる」とコメント。
「すでに、全世界で13万社を超える組織が、Dynamics 365とPower Platformにおいて、Copilotを体験しており、お客さまの関心はますます高まっている。お客さまからのフィードバックを得て、より革新的な製品を提供していくことになる」と語った。
Copilot for Dynamics 365は、Copilot機能をネイティブに組み込み、Microsoft 365ともシームレスな連携を実現。Azure OpenAI Serviceを搭載しているほか、責任あるAIの実践や、企業のデータを安全に守ることができるのが特徴だ。Dynamics 365のEnterprise版では、追加料金なしで利用が可能となっている。
日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部 GTMマネージャーのサンタガタ 麻美子氏は、「Copilot for Dynamics 365は、Dynamics 365にネイティブに組み込まれたCopilotの機能であり、2023年3月に発表して以降、新たな機能を次々と追加している。ビジネスパーソンを支援するAI搭載のアシスタントとして、アイデアやコンテンツを早く生み出し、タスクの実行と自動化を高速に実現。インサイトをもとにした行動のレコメンドを提示する。これらを自然言語によって利用できる。AIの力で、業務部門の働き方を変革できる」とした。
営業向けCopilotでは、Teamsによる商談の要約を作成できるほか、顧客へのeメールの返信文の作成、リアルタイムでの案件インサイトの提供、営業案件の概要の表示などが可能になる。
すでに、マイクロソフトの世界中の営業担当者がMicrosoft Copilot for Salesを使用しており、83%の社員が事務作業を削減でき、生産性が向上したと回答。さらに、1週間に削減できた時間が90分間となり、より少ない労力でCRMシステムを最新の状態に保つことができたとの回答は68%、顧客との対話時間を増やすことができたとの回答は67%に達しているという。
「CRMデータと自動的に連携し、データを最新の状態に保つことができる。マイクロソフトの営業部門の生産性を最大化している」という。
マーケティング向けCopilotでは、メールなどのコンテンツアイデアの生成、自然言語による顧客ターゲットセグメントの作成や推奨、顧客インサイトを提供するという。利用者のなかには、1時間以上かかっていたメール作成を15分で完了させることができているという事例が出ているという。
また、サービス向けCopilotは、カスタマサービスやフィールドサービスで利用でき、すでに、一部で日本語対応している。問い合わせへの回答作成やナレッジ発見の加速、チャットボットによるセルフサービスの実現、フィールドサービスにおける作業指示書の作成とスケジューリングの合理化などの効果があるとした。
ここでは、マイクロソフトのカスタマサポート部門で、この機能を活用している事例を紹介した。同社では、120カ国80か所のコンタクトセンターで、4万5000人以上のエージェントが勤務し、10億人以上のエンドユーザーに対応。1億4500万コンタクト、6億以上のメール、1140万回のチャットに対応しているという。2020年からDynamics 365にIT基盤を統一。2023年からCopilot機能を活用しているとした。
「Copilotは、問い合わせ内容の要約やナレッジ記事の提示による回答のサポート、メールの返信原稿の作成などで活用しており、同僚の支援が必要なケースの10%を自力で解決したり、チャット対応のケースでは平均対応時間12%軽減したり、エージェントの生産性が向上し、一部では平均処理時間が12~16%改善したり、といった成果が生まれている」と述べた。
Copilot for Microsoft 365のロール特化型ソリューションであるMicrosoft Copilot for Salesと、Microsoft Copilot for Serviceについても説明した。
Copilot for Microsoft 365のすべての機能を含みながら、SalesやServiceの役割に応じた機能を追加したものになり、OutlookやTeamsとの連携を拡張したり、WordやPowerPointなどにおいて、Copilotの拡張機能を提供している。
いずれも2014年2月1日から一般提供を開始。月額50ドルで利用できる。Copilot for Microsoft 365を含むCopilot for Microsoftを契約済みの場合には月額20ドルを追加すれば利用できる。
Microsoft Copilot for Salesでは、Wordで営業向けコンテンツを作成する際に、CRMのデータをコンテンツ生成プロンプトに直接統合したり、CRMのデータからのインサイトを、生成したコンテンツに直接反映できたりする。
また、Microsoft Dynamics 365 SalesおよびSalesforce CRMと接続できるほか、内部および外部データ接続では、Power Connectorsと連携。Copilot StudioによるカスタムCopilotの設計ができる。
一方のMicrosoft Copilot for Serviceは、コンタクトセンターなどに、すでにSalesforceや ServiceNow、Zendeskを導入していても、数分で生成AIを導入できるもので、ケースの要約や回答作成、専用チャットによるエージェントの生産性の向上、顧客のニーズに合わせた拡張やカスタマイズができるのが特徴だ。
「Dynamics 365 Customer Serviceを提供しているCopilotのエクスペリエンスを、ほかのコンタクセンターシステムを使っているユーザーにも提供するのがコンセプトとなっている。Dynamics 365に置き換えが難しいというユーザーも、既存システムをそのままに生成AIの機能だけを搭載できる」という。
Power PlatformにおけるCopilotの活用
このほか、Power PlatformにおけるCopilotの活用についても触れた。AIによって進化したPower Platformを、「どのような人に対しても、開発作業を加速し、簡易化するAIエージェント」と位置づけ、ローコードプラットフォームにAIを搭載することで、デジタル化のニーズに応えたアプリケーションを、より多くの人が開発できる環境を実現できるとした。
IDCの調査によると、現在のテクノロジーを使って自動化できるデジタルワークは50%に達し、2025年までに、7億5000万本の新しいアプリを構築する必要があるという。だが400万人の開発者が不足しており、技術的人材の採用に苦労している企業は86%を占めているという。
日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部GTMマネージャーの内田真美氏は、「開発リソースが限られているため、従来型のアプリ開発ではすべての課題を解決できないという実態がある。Power PlatformにCopilotを搭載することで、利用できる人が格段に増え、日常的にアプリを使用するのと同じ感覚で、アプリが開発できるようになる。世界初のAI Copilot内蔵ローコードプラットフォームである」と述べた。
Copilot in Power Appsでは、必要なものを自然言語で記述するだけで、新しいアプリを作成でき、データ作成からUXのカスタマイズまでを、複数回の会話によって実現できる。
特に、Power Platformのひとつとして新たに提供するMicrosoft Copilot Studioは、顧客のカスタムCopilotをローコードで開発可能な統合プラットフォームと位置づけ、独自のCopilotをゼロから作ることができ、1100以上の標準搭載されたプラグインとコネクタを用意して、社内システムのデータや公開サイトのデータも容易に活用。OpenAI GPTも使用できるという。
Microsoft Copilot Studioは英語版でのサービスを開始しており、1テナント月額200ドルで利用できる。日本語版の提供時期は現時点では公表していない。
また同社では、Copilot for Dynamics 365活用サービスである「Copilot Accelerator」も提供している。
IT管理者向け教育メニューやユーザー向けトレーニング支援するほか、適用シナリオの整理、効果などの目標設定、効果モニタリングなどを提供するもので、「Copilot for Dynamics 365 の使いこなし支援を行うことになる。AIの導入および活用を促進するとともに、投資対効果も把握することができる」(日本マイクロソフトの野村本部長)とした。
AIの学習方法や適用領域、業務への組み込み、運用管理、目標設定、効率化の進捗管理などを支援。顧客の状況やニーズなどによって提供内容を変化させるという。
さらに、Copilot活用を包括的に支援する「マイクロソフト ユニファイドサポート」を提供。Copilot for Dynamics 365にとどまらず、さまざまなCopilotを活用するための支援を実施するという。固有のソリューション領域だけでなく、業務部門やナレッジワーカー、ソフトウェア開発者、セキュリティ運用者、市民開発者を網羅し、業務プロセス全体を考慮した支援を行う。「単なる便利ツールの導入が目的のサービスではなく、ビジネス成果創出を目的とした支援になる」としている。
ビジネス環境における普遍的な課題をAIで解決する
なおマイクロソフトによると、同社のビジネスアプリケーションを活用している企業は、全世界50万社となり、Fortune 500の97%に達しているという。また、CRMおよびERPアプリケーションが、共通データモデル上に構築されていることや、アプリ開発、RPAおよびオートメーション、BIの各分野でにおいて、世界No.1のローコードプラットフォームであること、CRMやERP、ローコードのための世界初のビルトインAIコパイロットを搭載したことを強調した。
日本マイクロソフトの野村本部長は、「マイクロソフトは、30年以上に渡り、エンタープライズのビジネスアプリケーションを提供し、進化させてきた」と述べ、「変化が激しいビジネス環境においても普遍的な課題がある。それは、サイロ化したチームとデータ、技術革新の遅さ、仕事に対する充実感の欠如といったものであり、これらの課題を解決する必要がある」とする。
同社の調査によると、64%の従業員がツールとプロセス間の統合が不十分であるために共同作業の難しさを感じており、77%の従業員が目標を早く達成するためにローコードツールを利用したいと考えている。また、89%の従業員がAIやオートメーションを多くの仕事に適用し、より重要な仕事に時間を割けることを望んでいるという。
「これらの課題を解決するのがAIであり、ビジネスの変革を支援する。個人のコラボレーションを強化し、クリエイティブな仕事を支援するほか、営業やサポート、開発者をはじめとして、すべての役割の人たちに貢献でき、さまざまな業種にAIの価値を提供できる。また、これまでのビジネスアプリケーションは、メインフレームからPC、クラウド、モバイルで使われるようになってきたが、フォームに入力し、データを蓄積し、レポートし、情報を共有するという仕組みは変わっていない。しかし、これからのビジネスアプリケーションは本質的に再考されることになる。対話型で業務やアプリケーションを進化することになり、その進化への扉を開けるのがAI Copilotになる。AIがビジネスを変革することになる」と述べた。