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Pure Storage、HDDに負けない低コストを実現した「FlashArray//E」などでフラッシュへの置き換えを促進
2023年6月22日 11:39
米国のエンタープライズ・ストレージ・ベンダーPure Storageの日本法人となるピュア・ストレージ・ジャパン株式会社(以下、両社合わせてPure Storage)は、6月21日に東京都内の同社オフィスで記者説明会を行い、同社が先週米国で開催した「Pure//Accelerate 2023」で発表した内容などに関しての説明を行った。
Pure Storageは、同社の主力製品である「FlashArray」シリーズの最新製品としてFlashArray//X R4 と FlashArray//C R4の投入、そしてQLC NANDを利用したより大容量を実現したFlashArray//Eなどの新しいハードウェアを投入し、同社が推進するエンタープライズ・ストレージをHDDからフラッシュへの転換を実現していくと強調した。
米国で行われたPure//Accelerate 2023で新製品を発表、その日本版イベントは8月30日に開催
ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 田中良幸氏は、Pure Storageの同社会計年度の2024年第1四半期(2023年2月~4月期)における同社の概況やPure//Accelerate 2023での発表、その日本版イベントなどに関しての概要を説明した。
田中氏は「ここ近年は売上が増える好調な決算を実現しているが、今回もそれは同様だった。中でも今回は、当社がEvergreenと呼んでいる、サブスクリプションの売上が過去最高になっている。それも当社の強みであるソフトウェアとフラッシュを組み合わせて、電力効率や高い信頼性をお客さまに提供してきたことがよい影響になっている」と述べ、同社が推進するソフトウェアとフラッシュを組み合わせたソリューションが顧客の支持を得て、売上を伸ばしていると強調した。
Pure Storageは、同社が独自に開発しているストレージ専用のOS(Purity)と汎用プロセッサ(現行の製品ではIntelのXeon Scalable Processor)を活用して、NANDフラッシュを制御する、ユニークなソフトウェア定義アーキテクチャを採用している。そうした仕組みを採用することで、より高度なNANDフラッシュの制御や管理が可能になり、信頼性を向上させ、高性能を実現することが可能になっている。
Evergreenプログラムはそうしたソリューションを、サブスクリプションとして契約するプログラムで、顧客はPure Storageと定期契約することで常に最新のストレージを利用することが可能になる。顧客企業にとっては月々の支払額が明確になり、ハードウェア初期投資も不要になるため会計上の透明性やコスト計算が容易になるなどのメリットがあり、「Evergreenは企業のTCOを削減する効果をもたらす。そうした具体的な効果がお客さまに指示されている」(田中氏)との通りで、近年そうした契約に移行する顧客が増えていると、同社では説明している。
田中氏は「先週ラスベガスで開催したPure//Accelerate 2023は、ついにHDDの時代は終わりを告げようとしているというメッセージを前面に打ち出した。これまで一貫して訴えてきたHDDからフラッシュへの移行ということが実現に近づいてきている」と述べ、Pure//Accelerate 2023で発表した新製品により同社が一貫して訴えてきたエンタープライズ・ストレージのHDDからフラッシュへの移行が完了する時期が近づいてきていると説明した。
なお、田中氏によれば、同社はPure//Accelerate 2023の日本版となるイベントを8月30日(水)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催する予定とのことで、現在イベントの参加登録を絶賛受け付け中であるとアピールした。
第4世代Xeon SPを採用することでより高性能になったFlashArray//XとFlashArray//CのR4を発表
ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 アジア太平洋・日本地域担当 プリンシパル・テクノロジスト 岩本知博氏は、Pure//Accelerate 2023で新しく発表された製品に関しての説明を行った。Pure Storageは本年の前半にもFlashBlade//Eという新製品を発表しており、今回Pure//Accelerate 2023で発表された新製品はそれに次ぐ製品となる。
岩本氏によれば、Pure//Accelerate 2023では、同社が「FlashArray」と呼んでいる製品のうち、FlashArray//X、FlashArray//Cの新バージョンと、新しい製品となるFlashArray//Eが発表された。
同社製品には大きく分けて、FlashArrayとFlashBladeという2つのシリーズが用意されている。簡単に言うと、両者の違いは同社がコントローラと呼んでいるCPUの搭載数だ。FlashArrayは5U(XLなど)ないしは3U(X、Cなど)のラックマウントサーバーに、2つのCPUが搭載されており、その2つのCPUがラックマウントサーバーに搭載されるNANDフラッシュ(DFMと呼ばれるモジュールを複数枚実装できるようになっている)を制御する仕組みになっている。
それに対してFlashBladeは、1つのラックマウントサーバーに対して最大10枚のブレードサーバーが搭載できるようになっており、そのブレード1つ1つにCPU(昨年のPure//Accelerate 2022で発表されたFlashBlade//SではIntelの第3世代Xeon SP)が搭載され、1つのブレードあたり4つのNANDフラッシュモジュール(FlashArrayと同じDFM)を制御する仕組みになっている。つまり、FlashBladeの方が1つのCPUが制御するNANDフラッシュの数は少なく、より高度で高性能だが、CPUの数は増えるため高コストになる、そうした製品のポジショニングの違いがあることになる。
こうした2つのハードウェアを、同社がPurityと呼んでいるフラッシュストレージ用の制御OSがコントロールしており、より高度な制御や管理を行うというのがPure Storageのストレージ製品ということになる。
今回発表されたFlashArray//X、FlashArray//Cの新バージョン、FlashArray//Eは、いずれもFlashArrayシリーズの製品となる。このうち、FlashArray//X、FlashArray//Cの新バージョンは、R4(第4世代という意味)が製品名につけられており、従来製品の新バージョンという位置付け。最大の強化点は、CPUが従来製品で採用されていたIntelの第3世代Xeon SP(開発コードネーム:Ice Lake-SP)から第4世代Xeon SP(開発コードネーム:Sapphire Rapids)に強化されていることだ。
第4世代Xeon SPに関しては上記記事が詳しいのでそちらをご参照いただきたいが、特にAMXという新命令を利用すると、AI関連の性能が大幅に改善される点が最大の特徴だ。加えて、マイクロアーキテクチャの改善などで基本性能も強化されている。岩本氏によれば「R1からR3の時には世代間の性能向上は1.25倍程度だったが、今回のSapphire Rapidsは“当たり世代”で、1.4倍も性能が向上している」とPure Storageでは評価しており、そうしたCPUの性能向上がFlashArray//X R4、FlashArray//C R4の最大の特徴だとした。
また、同社では現行製品では1モジュールあたり最大48TBのDFM(QLCの場合)を採用しているが、本年の末までに1モジュールあたり75TBの容量に強化したDFMを投入する計画で、その75TBのDFMを利用した場合には、FlashArray//C R4は最大8.9PBの容量を実現するという予定だという。
なお、FlashArray//X R4はTLC NANDベースのDFM、FlashArray//C R4はQLC NANDベースのDFMを採用していることが最大の違いで、コントローラ(第4世代Xeon SP)や基本的なシャシーの構造などは共通となる。
DFMあたりのコントローラを削減し低コストを実現したFlashArray//Eで、HDD駆逐を狙う
岩本氏が「現代のエンタープライズ・ストレージで最もボトルネックになっているのはニアラインSASのHDDだ。今回発表したFlashArray//Eではそこにメスを入れていく」と述べ、Pure Storageとしては、エンタープライズストレージで性能や信頼性のボトルネックになっているニアラインSASのHDDをNANDフラッシュに積極的に置き換えていく製品として、FlashArray//Eを積極的に売り込んでいくと強調した。
Pure Storageは本年の4月から、FlashBlade//Eという、FlashBladeシリーズの容量あたりの単価が最も安価なモデルを日本でも投入している。今回発表されたFlashArray//EはそのFlashArray版となり、やはりFlashArrayシリーズの中では容量あたりの単価が最も安価なモデルとなる。
コントローラの数などがFlashArray//Cに比べて少なく、1つのコントローラが制御するフラッシュメモリの容量は増えるため、レイテンシなどはFlashArray//Cに比べて増えてしまうが、コストはFlashArray//Cに比べて安くなっていることが最大の特徴となる(コントローラはCと同じく第4世代Xeon SP)。このため、フラッシュメモリの容量あたりの単価がFlashArrayシリーズの中では最廉価となっている。そうした低価格により、ニアラインSASやSASのHDDにコスト面で対抗していき、HDDからの置き換えを狙う製品になると岩本氏は強調した。
岩本氏によれば、FlashArray//Eは標準の6Uラックで最大48のDFMを内蔵でき、75TBのDFMがリリースされた後には、最大4PBの容量を実現する計画とのことだった。
なおFlashArray//X R4、FlashArray//C R4は、すでに日本でも導入が開始されており、営業による商談などが開始されているという。それに対してFlashArray//Eに関しては、今秋から導入が開始される予定とのことだった。