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弁護士ドットコム、クラウドサインを軸にした“契約ライフサイクルマネジメント”を実現へ

6月末の新サービス提供も表明

 弁護士ドットコムは5月30日、運営する電子契約サービス「CLOUDSIGN(クラウドサイン)」の現状について説明会を開催した。弁護士ドットコム 執行役員の小林誉幸氏は、「決算が終わったタイミングで、クラウドサインに関する現状と今後の方向を説明する機会を設けたかった」と、説明会開催の狙いを説明した。

弁護士ドットコム株式会社 執行役員 クラウドサイン事業本部副本部長の小林誉幸氏

 今後の事業計画としても、現行のクラウドサインは「契約締結」から「契約管理」までをサービスとして提供しているが、決算発表ですでに公表している「契約レビュー」を新たなサービスとして提供することに加え、さらなるリーガルテック関連サービスの提供を計画しているという。

 2001年に「電子契約法」が施行されたが、電子契約サービスは2010年代中盤となってから複数のサービスが登場。クラウドサインも2015年にサービスを提供開始している。

 「その後、市場に大きな変化があったのはコロナ禍以降。ほかの社員は在宅勤務を行っているにもかかわらず、はんこを押すためだけに出社する必要がある社員がいることが話題になったこともあって、政府が電子契約への移行を後押ししたことで電子契約導入の後押しとなった」(小林氏)と分析する。

 2020年6月には内閣府・法務省・経済産業省が「押印についてのQ&A」を公表し、契約書に押印をなくしても法律違反とならないことなどをアピールした。さらに同年7月には「電子署名法2条1項に関するQ&A」、9月には「電子署名法3条に関するQ&A」が公表された。また、2021年には地方自治法施行規則の改正、2022年に宅建業法等の改正が行われたことも電子契約を利用する企業が増える後押しとなっていった。

 こうした影響もあって電子契約市場は年々市場が拡大し、富士キメラ総研の調査では2022年には201億円、2023年には250億円規模と予測しており、2026年には500億円規模になると推定している。

 クラウドサインの売上も順調に伸長し、2023年3月期は42.7億円の売上となった。電子署名が事業者署名型の中で比較すると、2022年はシェア約40%となったという。

 「売上高は順調に右肩上がりで伸びている。特に直近四半期を見ると、有料導入企業からあがる固定売上に加え、送信件数ごとにかかる従量売上、導入支援コンサルティングなどスポット売上のいずれも伸びている。特筆すべき従量売上が伸びていること。従量売上は、有料契約を結んだ企業が電子契約を送信した分、売上につながることから、電子契約を利用件数が増えていることを示している」(小林氏)。

 2023年3月期の契約送信件数は604万件で、2022年3月期と比較し40%増となった。「送信件数が増えることで、電子契約が浸透し、ネットワーク効果もあることから、当社の競争優位にもつながっていく」と分析している。

 2024年3月期の売上目標は、前年同期比35%増となる57億円。「これまで利益については公表していないが、すでに黒字化は達成しており、今後はさらに利益が拡大していく見通しだ」(小林氏)。

今期の業績予想

 同社の強みは、大企業に多くのユーザーを持つこと、さらに96の地方自治体が導入しているなど、大きな実績を持っていることにある。「電子署名の技術面については、コモディティ化が進み、競合との差別化は難しい状況にある。また、電子契約というサービスの特性から、企業の場合にはどんな企業が導入し、どんな実績があるのか、自治体の場合には国産ベンダーの製品か否かなどが焦点となることが多く、当社が実績を積む要因となっている」(小林氏)。

 実績が次のビジネスにつながることから、サービス提供開始時点ではベンチャー企業中心に導入が進んだものの、コロナ禍以降は意識的に大企業にアピールを行った。その波及効果で中小企業ユーザーにも広がり、利用企業が増加傾向となっているという。

 今後のビジネス拡大としては、電子契約に加えリーガルテックの導入が進むと見て、新たなサービス導入を行う計画だ。電子契約を行う際の契約レビューは、すでに決算などで提供することを公表している。

リーガルテックの動き

 「契約業務のフローに沿って、契約ライフサイクルマネジメントというビジネスモデルを計画している。すでに提供しているクラウドサインは、契約締結から契約管理を行うが、そこに契約レビューが加わることになる」(小林氏)。

契約ライフサイクルマネジメントとは

 さらに、現在は具体的な内容は未公表だが、新しいサービスを6月末にローンチすることを計画している。「当社の母体は、弁護士ドットコムという、弁護士と顧客をつなげる無料法律相談などを行っているサービスで、代表の元榮太一郎も弁護士資格を持っている。きちんと法律にのっとったサービスを提供していくという姿勢が当社の強みでもある」(小林氏)と述べ、法律にのっとった新たなリーガルテックサービスを提供する計画であるとした。