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サイバートラスト、MIRACLE LINUXをAlmaLinuxとの共同開発体制に移行へ
米CloudLinuxと協業、AlmaLinuxユーザー向けに最長16年のサポートを提供
2023年5月23日 06:15
Red Hat Enterprise Linux（RHEL）互換のOS「MIRACLE LINUX」を開発しているサイバートラスト株式会社は22日、同じくRHEL互換の「AlmaLinux」との共同開発体制に移行すると発表した。
また、AlmaLinuxをもともと開発し、開発団体The AlmaLinux OS Foundationを立ち上げて、現在も開発を主導している米CloudLinuxとの協業も発表した。サイバートラストから、AlmaLinuxの商用サポートやセキュリティサービスなどが提供される。
同日都内で開催された記者会見には、The AlmaLinux OS Foundation 議長のBenny Vasquez氏と、CloudLinux, Inc. 創業者兼CEOのIgor Seletskiy氏も登場した。Vasquez氏は、「われわれのビジョンを信じ、信頼できるパートナーとして、The AlmaLinux OS Foundationを選んだことに深く感謝を申しあげる」とサイバートラストを歓迎した。またSeletskiy氏は、今回の提携によりコラボレーションを強化し、ライブパッチや延長サポートの提供によってLinuxを堅牢にしてイノベーションを促進していくと語った。
なお、今回の発表による売上への影響について質問されたサイバートラスト株式会社 代表取締役社長の眞柄泰利氏は、「今年と来年で、中期計画の中で売上10億円を目指す」と回答。その根拠として、RHEL互換のCentOSの終了によって6万のダウンロードがあったことや、CentOS 6のサポート終了時に延長サポートが3～4億円の売上となったところに、2024年にCentOSのサポート終了があることから、パートナーとともに10億円を目指すと語った。
開発コミュニティにプラチナスポンサーとして参加、バージョン10からは共同開発してリリース
CentOSが2021年にRHEL互換OSを終了して以来、その代替として、いくつかのRHEL互換OSが登場している。その中でもAlmaLinuxは、Rocky Linuxとともに、RHEL互換OSの最大手といえる立場にある。またサイバートラストのMIRACLE LINUXも、長年のLinuxビジネスにより、国内でのエンタープライズおよび産業向けLinuxとして広く使われてきている。
今回の発表によりサイバートラストは、AlmaLinuxを開発している団体「The AlmaLinux OS Foundation」にプラチナスポンサーとして参加する。プラチナスポンサーはサイバートラストを含めて世界で3社であり、日本からは初となる。
また、The AlmaLinux OS Foundationの理事会にサイバートラストのOSS技術本部 執行役員本部長の吉田淳氏がノミネートされた。そのほか、サイバートラストのエンジニアが2名、AlmaLinux開発コミュニティにフルタイムで参加する。
今後のMIRACLE LINUXとAlmaLinuxについては、それぞれでRHEL互換OSを開発するために同じ作業をしていた「Fork」から、共同開発する「Join」にと変わると説明された。
具体的には、現在リリースしているMIRACLE LINUX 8と9（それぞれRHEL 8と9に対応）については、今後もサイバートラストで継続して開発し、EOS（サポート終了）までメンテナンスとサポートを提供する。また、後述するように、サイバートラストによるAlmaLinuxのサポートも並行して提供する。
そしてAlmaLinux 10からは共同で1つのOSイメージを開発することになる。なお、MIRACLE LINUXは存続するが、製品名としてMIRACLE LINUXが使われるかどうかは検討中だという。
なおMIRACLE LINUXでは従来、開発リソースを集中するために、RHELのマイナーバージョンアップの1つおきに対応するMIRACLE LINUXのバージョンをリリースしてきた。共同開発により、毎回のマイナーバージョンに対応してリリースできることになるとのこと。
なお、MIRACLE LINUXではこれまで、RHELをベースにパッケージ構成に若干の独自の味つけを加えてリリースしていた。それらをAlmaLinuxにも反映するかどうかについては、今後AlmaLinux開発コミュニティ内で検討するという。
サイバートラストがAlmaLinuxを選んだ理由としては、The AlmaLinux OS Foundationに多数の支援企業が参加していることで、継続性や公平性が高いと思われること、非営利団体として議事録を公開するなどの透明性や公平性の高い運営をしていること、活発なコミュニティによるリリースの早さ――が挙げられた。なお、RHEL 9.2が5月10日にリリースされたときには、AlmaLinux 9.2も同じく5月11日にリリースされるという素早い対応がされている。
AlmaLinuxの商用サポートを6月1日から開始
またサイバートラストでは、CloudLinux社との提携により、AlmaLinuxの商用サポートサービス3点を、6月1日から受付開始する。これは両社によるOSSセキュリティサービスの第1段だという。
1つめは、長期サポートを提供する「AlmaLinux Standardサポート（仮称）」で、16年継続の専用リポジトリや、日本国内での日本語サポートを提供し、問い合わせ数は無制限。価格は、OS稼働数あたり年額8万4000円（税別）。なお、AlmaLinux Standardサポートは、続く2つのサービスにも含まれる。
2つめは、OS無停止でのOSアップデートに対応する「AlmaLinuxライブパッチサービス（仮称）」。Linuxカーネル、glibc、OpenSSLに対応し、管理画面も提供する。価格は、OS稼働数あたり年額12万円（税別）。
3つめは、暗号化モジュールセキュリティ標準であるFIPS140-3に対応するための「AlmaLinux FIPS140-3対応サービス（仮称）」。FIPS240-3は何か修正があると検証しなおす必要があるため、変更を最小にするなどの維持継続を支援するサービスである。価格は、OS稼働数あたり年額16万2000円（税別）。
サイバートラストの全国130社のパートナーに向けては、5月22日より、販売技術支援として、技術相談窓口を開設し、編集可能な製品資料やLinux基礎教育コンテンツ（教材／動画）を無償提供する。
6月13日からは、パートナー向けに無償でLinux技術セミナーを開催。8月1日からは、有償の教育セミナーを開催する。なお、これは一般顧客も一緒のセミナーだが、パートナー優待受講を設ける。
さらにAlmaLinuxへの移行キャンペーンとして、6月1日から9月30日の申し込みで割引キャンペーンを行う。無償ダウンロードを含むMIRACLE LINUX利用者は50％引き、サイバートラストのLinuxサポートへの加入者は70％引きとなる。
両社の提携について、サイバートラスト株式会社 執行役員本部長の鈴木庸陛氏は、「両社はディストリビューションとして近しく、またビジョンも近しい」ことによるものだと説明した。
サイバートラストは長らくミラクル・リナックス株式会社として商用のLinuxディストリビューションやサポートを提供してきたほか、2017年に旧サイバートラスト社と合併したこともあり、オープンソースセキュリティに力を入れてきた。
CloudLinux社も、ホスティングサービスを運営する中で「CloudLinux OS」を開発し、それがAlmaLinuxの基になったほか、現在でも商用OSとしてリリースしている。また、セキュリティやコンプライアンスのサポートにも力を入れている。
今後、両社によるOSSセキュリティサービスを展開。2025年までに導入企業10万台を目指す。さらに韓国や台湾への海外展開など、互いの商材を世界へ発信していくという。
