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HPE・望月弘一社長が2023年度事業方針を説明、ソリューションメニューの拡大やセールスエンゲージメントの変革などを図る
2022年12月12日 06:00
日本ヒューレット・パッカード合同会社(以下、HPE)は9日、2022年11月からスタートした同社2023年度の事業方針を説明した。同社・望月弘一社長は2023年度の事業方針として、前年度と同じ「Edge-to-Cloud Company」を掲げながら、「昨年度との違いは、幅を拡大しながら、さらに加速させる点である。コア領域での安定的成長と、as a Serviceの活用促進、顧客提供価値の最大化、持続可能な社会への貢献に取り組む」と述べた。
また、「エッジ、クラウド、データの3つのメガトレンドにまたがるハードウェア、ソフトウェア、サービスを、HPE GreenLakeによって、as a Serviceで提供。サイロ化されたITを有機的に結合し、そこからひとつでも多くの洞察を導く、Data-First Modernizationを実現し、お客さまのDXに貢献する」と述べた。
2023年度の注力分野として挙げたのが、HPE GreenLake Solution Menuの拡大や、DNA(Digital Next Advisor)コンサルタティブアプローチの推進による「ソリューションメニューの拡大」、顧客の購買特性に呼応した営業体制への変革を進める「セールスエンゲージメントの変革」、HPEの循環型経済実現に向けた活動促進や、人、社会への投資を行う「持続可能な社会への貢献」の3点である。
「ソリューションメニューの拡大」では、5GおよびIoTの取り組みにおいて、テレコム業界に加えて、さまざまな業界や業種に向けたソリューション、エコシステムの拡充を図るほか、ローカル5G向けに、シームレスなWi-Fi連携機能を追加。ミッションクリティカルのアプリケーションに加えて、クラウドネイティブアプリを共存させることができるHPE Green Lake for Private Cloud Enterpriseや、顧客がセルフポータルを活用して自由に、必要なときに、必要なソリューションを利用できるManaged by Customer型エンタープライズIT管理向けクラウドサービスの国内展開を開始することも明らかにした。
さらに、HPE GreenLake for Data Fabricの国内展開の開始、AI開発に向けたフルポートフォリオの提供、HPE GreenLakeを通じたパートナー連携を加速するという。
「日本のローカル5G市場をさらに盛り上げていきたいと考えている。また、DNAコンサルタティブアプローチにより、世界中で蓄積したDXのメソドロジーを活用し、エッジ、クラウド、データの領域でアセスメントを行い、顧客とともにジャーニーマップを作成していくといったビジネスを拡張していきたい」と述べた。
2つ目の「セールスエンゲージメントの変革」では、より魅力的な製品を、効率的に迅速に調達したいと考えるテクノロジーバイヤーと、改善策を一緒に導き、伴走型でサポートしてほしいと考えるソリューションバイヤーという、それぞれの購買特性に対応した2つの営業体制を新たに構築。ソリューション領域でのパートナーリングを強化することで、パートナーソリューションをHPE GreenLakeで展開する取り組みを推進する。また、顧客との継続的な関係構築を行うために、サポート営業とCustomer Success Managerを統合、強化するという。
3つ目の「持続可能な社会への貢献」では、製品開発では、都市鉱山由来の原料を多く使用するほか、製造工程において再生可能エネルギーを活用。エネルギー使用量を30%削減可能なHPE GreenLakeの提案や、すでに99%がリサイクルが可能になっている製品群の活用提案を促進するなど、サステナブルへの対応力を生かし、循環型経済実現に向けた活動を促進するという。
さらに、2030年までに女性エグゼクティブ比率および女性社員比率を30%以上にする「Vision 30」の推進や、DiversityやEquity、Inclusionを推進するための体制を確立し、会社横断で課題に取り組む「DEI推進カウンシル」を開始するという。
また、日本では、エッジ市場が2025年までに2.1倍、クラウド市場が1.6倍、データ市場が1.9倍になることを指摘。「エッジ領域では、セキュリティ、データセンタースイッチング分野にも新たなソリューションを提供していく計画である。データセンタースイッチングでは、Aruba CX 10000を投入したほか、Pensandoとの連携により分散サービススイッチを提供。セキュリティではSASEやゼロトラストにおいて、パートナーとの協業を含めて活動を広げていく。また、クラウド領域では、クラウドマネジメントに注力し、複雑化するハイブリッドクラウド環境において共通の管理、運用ができる基盤をHPE GreenLake上で提供していく。データ領域においては、データプロテクションやAI at Scale分野で新たなソリューションを提供していく」と語った。
一方、先ごろ米本社が発表した2022年度第4四半期(2022年8月~2022年10月)業績は、売上高が前年同期比12%増の79億ドルとなり、四半期売上高としては過去2番目に高い実績を達成(第4四半期としては過去最高)。2022年度通期(2021年11月~2022年10月)の売上高は前年同期比3%増の285億ドルとなった。そのうち、HPE GreenLakeによるas a Service事業の第4四半期受注総額が前年同期比33%増に達し、2022年度通期では68%増という高い成長を遂げていることも強調した。
「第4四半期は主要な事業はすべて順調であり、Intelligent Edgeは23%増、Computeは過去最高となり、Storageも2桁成長した。好業績を支えている要因は、一貫した戦略の実践である」と総括した。
日本においては、HPE GreenLakeのビジネスがさらに好調であり、売上構成比が20%を突破。全世界の平均に比べて2倍に達しているという。
「日本では、HPE GreenLakeが高く評価されている。グローバルに比べて、HPE GreenLakeの売上比率が高い理由は、日本法人の約半分がサービスおよびデリバリーを担当しており、サービス部門が強いことが背景にある。日本ではオーダーメイド型のビジネスが多かったことから、グローバルのなかでもアドバイザリー部門を強化しており、HPE GreenLakeの提案を積極的に行っている。今後も日本におけるHPE GreenLakeのビジネスは拡大していくことになる」と語った。
また、望月社長は、HPE GreenLakeの特徴として、GreenLake CentralやAruba Central、Data Services Cloud Consoleといった管理環境の統合のほか、オンプレミス、クラウド、エッジを統合し、共通したクラウド体験を実現する「統合および自動化されたセキュアなプラットフォーム」、他社との連携を含めて設計、構築、運用をサポートする「アドバイザリー、運用、ファイナンス」、世界で初めてオンプレミスによる従量課金を実現した実績に基づく「スケーラブルな従量制」、パートナーに対して、オープンなクラウドAPIを提供することで実現する「パートナーエコシステム」、消費電力の削減を実現する「サステナブルを配慮したサービス」の5点を挙げた。
このほか、デル・テクノロジーズのAPEXとの比較についても触れ、「HPE GreenLakeは、前身となるFlexible Capacityをあわせると、長年の経験があり、完成度が違う。多くのワークロードメニューを持っている点も異なる。地に足がついた形で本当のクラウドサービスとして提供できる。一日の長がある」と語った。
2022年度の国内における成果として、エッジ領域では、移動体通信事業者向けのOpen RAN Solutionの提供を開始したほか、HPE 5G core Stackの提供を開始。HPE GreenLake for Arubaによるネットワークのas s Service化を実現したことを挙げた。また、クラウド領域では、ハイブリッド管理を劇的に進化させたセルフサービスが可能なポータルであるHPE GreenLake platformの提供を開始。Google AnthosとHigh Performance Edgeを使ったIoT向けソリューションの開発を挙げた。データ領域では、AIモデル学習ソリューションのHPE Machine Learning Development Systemや、HPE Swarm Learningの提供を開始。AI関連パートナーとの協業が進展した1年だったと述べた。
また、「2022年度は、1年間で40社を超える公開事例を発表することができたという点も大きな成果だった」と述べた。
その一方で、これまでのHPEの取り組みについても振り返った。
「HPEは2015年に分社化し、2016年時点では、これからはハイブリッド時代を迎え、それに対応することをいち早く宣言した。2019年には、すべてのポートフォリオをas a Serviceとして提供することを打ち出し、3年以内に実行することを発表した。2022年には予定通りに、HPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォームによって、それを実現できた。エッジからクラウドまで、複数の世代に渡るインフラを連携させ、Data-First Modernizationを実践する活動を展開している」とする。
加えて、「ハイブリッドに対する要望がさらに高まっており、半分の企業がハイブリッド/マルチクラウドを求め、3年後にはこれが70%に増加する。背景にあるのは、ミッションクリティカルの業務をハイブリッド化したいという要望である。セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスの課題からクラウドに移行できないワークロードがあり、パブリッククラウドに移行できるのは30%、残りの70%はオンプレミスに存在するという指摘もある。だが、複数世代に渡るオンプレミス環境を連携し、クラウドと同様の体験により、そこから洞察を導き出せるようにしたいという声が多い。この実現に向けては、コストの最適化やビジネスの変化に追随する俊敏性が必要である。そこに、HPEのビジネスチャンスがある」と述べた。
さらに、「as a Serviceによるトランスフォーメーションは第2章に突入している」と述べ、「当初は、HPE GreenLakeの上で、ひとつでも多くのワークロードを稼働させることで、CAPEXからOPEXへの移行を促進し、過剰投資を抑制したり、テクノロジーリフレッシュの煩雑な作業から解放し、マルチクラウド管理や共通プラットフォーム整備の観点でもさまざまなツールを提供してきた。だが、これらは顧客ごとにオーダーメイドで対応するものであった。これに対して、第2章は、オンプレミス、クラウド、エッジの境界線をなくし、共通のクラウド体験、運用モデルを提供していくことになる。そのために、セルフサービス機能の強化、70以上のメニューを用意しているワークロードサービスのさらなる拡張、ISVをはじめとしたパートナーとのエコシステムを強化することで、オンプレミスで提供するパートナー製品を従量課金で提供することにも力を注ぐ」と述べた。
会見では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、HPEとの連携などについて説明。同社におけるHPE GreenLakeのビジネスが、2017年度から2022年度までの年平均成長率が70%以上の高い成長を遂げていること、HPEビジネス全体に対するGreenLakeの割合が10%以上に達していることを示した。
CTC エンタープライズ事業グループ エンタープライズビジネス企画室の田中匡憲室長は、「旧コンパックのサーバーの取り扱いを開始して以降、HPEとの協業は30年の歴史があり、最上位となるHPEプラチナパートナーの1社となっている。最近では、HPE GreenLakeに関するアワードも受賞している。HPEのNo.1パートナーとして、顧客のDXを実現するためにベストな提案を行っていく」と発言。
「CTCがHPE GreenLakeを推進する理由は市場のニーズに応えるためである。DXを加速するために最先端ITを必要とする顧客と、ITコストを最適化したITプラットフォームを求める顧客のいずれに対しても、HPE GreenLakeはベストなソリューションを提供できる。他社製品を組み合わせてas a Serviceの提案ができる点も特徴のひとつである。また、顧客のカーボンニュートラルへの取り組みにも貢献できる」と語った。
CTCの顧客である国内製造業では、100以上のサイロ化したシステムを、ビジネスへの迅速な対応と、厳格なセキュリティを実現にするためにHPE GreenLakeを採用。調達とシステム運用の完全な切り離しが可能になったという。今後、数年をかけて、HPE GreenLakeにシステムインフラを統合していく予定だという。