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「2025年度はネットワーキング、ハイブリッドクラウド、AIに注力する」とHPE社長

 日本ヒューレット・パッカード合同会社(以下、HPE)は12日、2025年度の事業方針説明会を開催し、「ネットワーキング、ハイブリッドクラウド、AIの3つの領域に注力した事業を推進する」と、日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏が述べた。

日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長 望月弘一氏

 「データの価値が高まっていることから、当社はデータを中心とした戦略に注力している。企業でもデータ駆動型トランスフォーメーションを必要としている」と望月氏は言う。

 そのデータ駆動型トランスフォーメーションに取り組む際の課題について望月氏は、「ネットワーキング領域では、データをこれまで以上に安全に接続する必要がある。ハイブリッドクラウドにおいては、複合的な環境を最適化し、コストを制御することが求められている。そして、AIを活用してデータから多くのインサイトを導き出し、意思決定に結びつけなくてはならない」とし、「これらの課題を解決することをHPEは目指している」と述べた。

組織が必要とするデータ駆動型トランスフォーメーション

 まず、ネットワーキングについては、「インテリジェントエッジに必要となるセキュアなネットワーク接続を提供する」と望月氏。統合されたエクスペリエンスで安全な接続を実現するために、「HPE GreenLake Network as a Service」を提供するという。「ネットワーキングに求められる要件は、セキュアなエッジ接続と、リアルタイムな分析を可能にするローレイテンシーな接続、さらにはネットワーキングにAIを活用して運用を効率化することだ。これをすべてNetwork as a Serviceとして提供する」(望月氏)。

インテリジェントエッジに必要なセキュアネットワーク接続を提供

 ハイブリッドクラウドについては、「Hybrid Cloud by Design」(設計によるハイブリッドクラウド)の実現を支援する。望月氏によると、クラウドに移行できているシステムは全体の3割に過ぎず、残りの7割はセキュリティやデータガバナンスなどの問題でクラウドに移行できていないという。このため、偶発的にハイブリッドクラウド環境ができているが、「この環境は最適化されておらず、データが統合管理されていないため、データ活用の阻害要因になっている」と指摘。そこで、計画的にハイブリッドクラウドを設計し、最適化と統合管理を実現したHybrid Cloud by Designを推進するという。

 Hybrid Cloud by Designに必要な機能について望月氏は、「オンプレミスのすべての環境をセルフサービスかつ消費ベースで、必要な時に提供できること。クラウド環境もオンプレミス環境もすべてが連携し、それぞれの環境でスケールアップとスケールダウンが自由にできること。他社の環境も含め、全体の状況が把握できること。そして、最適化と自動化ができることだ」と語る。

 こうした機能は、「HPE GreenLakeを中心として実現していく」と望月氏は述べており、これらの機能によってハイブリッドクラウドに求められるコストの予測可能性と透明性や、ハイブリッドAI、エッジへの展開、ハイブリッドDevOpsとITOps、セキュリティとコンプライアンスの強化などの要件に対応するという。

Hybrid Cloud by Designの実現を支援

 AIについては、「これまでは、IT戦略といえばほぼクラウド戦略のことと考えられていたが、今では企業のIT戦略はAI戦略のことだと言っても過言ではない」と望月氏。「ただ、組織として横断的にAIを活用できているのは一握りの企業だけだ」と指摘する。

 こうした中、HPEではAIのライフサイクル全体でソリューションを提供するという。「ハードウェアやソフトウェアなどのテクノロジーだけでなく、サービスも含め支援する。データの取得、準備、管理というフェーズから支援を開始し、モデル開発、トレーニング、チューニング、そしてモデルのデプロイと推論まで幅広く対応する。その時に重要となるのが、シームレスなデータアクセスのためのグローバルデータプレーンと、AIに最適なハードウェア。これらを提供することで、AIをライフサイクル全体で管理できるようにする」(望月氏)。

AIのライフサイクル全体にソリューションを提供

 AIの領域では、NVIDIAと共同で「NVIDIA AI Computing by HPE」というAIソリューションも発表している。これは、両社の持つテクノロジーを融合し、さまざまな企業がAIのワークロードに合わせてそのまま使えるようパッケージ化したターンキーソリューションで、「すべての企業でAIを民主化することを目指し、AIのより一層の活用に貢献していきたい」と望月氏。ビデオでメッセージを寄せたNVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝氏も、「この製品で、日本企業がAIの力を最大限活用できる環境を提供し、競争力を高める支援を続けたい。HPEとの協業は、単なる技術提供にとどまらず、次世代の産業基盤を築くためのパートナーシップだ」と述べた。

NVIDIA AI Computing by HPE
NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏

「Journey to One」から「One HPE」へ

 国内での施策について望月氏は、「2024年度は『Journey to One』をモットーに、ワンチームで結束して最大価値を提供することを目指していたが、2025年度は『One HPE』と改め、HPEのメンバーはもちろんパートナーも共同で活動を推進する」という。

「Journey to One」から「One HPE」へ

 フォーカスする施策のひとつは、引き続きEdge-to-Cloudサービスを拡充することだ。2025年からは「Modernize your business」(事業のモダナイズ化)をテーマに、Hybrid Cloud by Designによってデータ駆動型トランスフォーメーションを実現できるよう、新しい発表を予定しているという。

 その内容について望月氏は、「エンタープライズAIソリューションのほか、サービスカタログでハイブリッドクラウド環境を手軽に使える機能も強化する。仮想化については、VMwareとの協業を継続しつつ、顧客が求めるほかの選択肢も用意。KVMをベースとしたHPE VM Essentialというライセンスを提供し、よりリーズナブルな仮想化環境を実現する。さらに、国家機密など非常に機密性の高い状況において、完全にディスコネクトされた環境の中でもGreenLake型のサービスを提供するという発表も予定している」と説明する。

Edge-to-Cloud サービスの進化

 パートナーとの協業も強化する。まずパートナーセールスへの支援体制として、Compute/Storageのパートナーセールスと、Aruba製品のパートナーセールスを11月よりひとつのチームに統合した。ソリューション面では、HPEのアセットとパートナーの独自ソリューションをバンドルし、価値を最大化して提供するよう取り組む。AIに関しても、パートナーとの販売協力支援を強化し、「日本企業におけるAIの民主化に取り組む」(望月氏)としている。

 最後に望月氏は、持続可能な未来に向けた取り組みについても触れ、「HPEは、2040年までにバリューチェーン全体でネットゼロ企業になることを約束した最初の2社のうちの1社。その取り組みは順調に進んでおり、2030年までに自社事業の二酸化炭素排出量を70%削減し、サプライチェーン全体の二酸化炭素排出量を42%削減するという目標も予定通りだ。これにより、2040年までに90%の環境負荷を削減すべく、真剣に取り組み、順調な成果を出している」とアピールした。