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NTTデータ、NTTグループのビジネスユーザー向け海外事業を統合 ITサービスの競争力強化を図る

 株式会社NTTデータは9日、NTTグループのビジネスユーザー(B2B、B2B2X)向け海外事業を統合すると発表した。

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)の完全子会社であり、グローバル通信事業を行うNTT Limited(NTT Ltd.)をNTTデータの傘下に移管し、同社を統括する海外事業会社を2022年10月1日に設立。NTTデータが55%、NTTが45%を出資する。

事業統合スキーム

 また2023年7月には、NTTデータを持株会社とし、その傘下に新設する国内事業会社と、今回設立した海外事業会社による事業運営体制へと移行することになる。持株会社、国内事業会社、海外事業会社の社名は、現時点では決定していない。

 事業統合後、NTTデータグループは売上高が約3兆5000億円、従業員数が全世界で18万人の規模となり、現在は約4割の海外売上比率が約6割に拡大することになる。

NTTデータとNTT Ltd.との事業統合

 NTTデータの本間洋社長は、「ITサービスの競争力強化に向けて、海外事業を統合することにした。海外事業会社への共同出資は、戦略面・実務面においてNTTとの連携を強化し、One NTTビジネスの推進、IOWN構想などのR&D分野での連携強化を行うことに加え、NTTグループにおける海外事業に関する知見やグローバル人財を結集して、海外事業の成長を支える強固なグローバルガバナンス体制を構築することが狙い。ITとコネクティビティを融合したサービスをトータルで提供する企業へと進化し、統一した戦略のもと、両社の強みを掛け合わせて、お客さまの事業の成長、社会課題の解決に貢献していく。また2023年7月以降は、国内事業会社と海外事業会社が、地域ごとのニーズや法規制にあわせて事業を推進する体制を整備することになる」と述べた。

事業統合スケジュール
NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏

 また、「海外事業の統合は、戦略、提供価値、コスト削減、人材の4点でメリットがある」とし、それぞれについて、「戦略面では、これまでの連携とは異なり、統合することによる戦略の一体化、戦略の一貫性が実現できる。どんな業種の顧客にどんなサービスを提供するのかといったことが、しっかりと策定できる。また、エッジ・トゥ・クラウドや、コネクティビティの領域での先行投資やM&Aが可能になる」、「顧客への提供価値では、つくる力とつなぐ力でトータルサービスを提供でき、クロスセルを進化させることができる。強み、競争優位性、独自性を持ったフルスタックのソリューション開発を進められる」、「コスト面では、IT基盤の統合やコーポレート機能の統合によってコスト削減効果が見込める」。「さらに人材面ではグローバルレベルでデジタル人財が不足するなかで、NTTデータグループのつくる力を持ったデジタル人財と、NTT Ltd.のつなぐ力を持ったデジタル人財を結集させることができる」と説明。

 「これらにより、お客さまへの提供価値を高め、企業価値も高めたい」と語った。

 事業統合により、データ活用ビジネスの高度化、5GおよびIoT関連ビジネスの創出・拡大など、企業の事業変革に向けた革新的サービスの創出に加え、スマート関連ビジネスの創出および拡大、IOWN技術を活用した革新的サービスのグローバル展開などによって、社会課題を解決する社会変革プラットフォームの創出に取り組むという。

 一方、NTTの澤田純社長は、「NTTデータから、自らの成長戦略のひとつとして、NTT Ltd.の事業統合について提案があった。両社間で協議を進めた結果、NTTデータとNTT Ltd.の事業を統合し、新NTTデータグループは、ビジネスユーザー向けグローバルデジタルカンパニーになる。これがNTTグループ全体の成長につながると考えた」と述べた。

NTT代表取締役社長 社長執行役員の澤田純氏

 なお海外事業会社は、NTTデータとNTTの海外事業の評価額に基づき、51%:49%の出資比率となるが、その後、NTTが保有する海外事業会社株式の一部を現金対価でNTTから取得することで、出資比率は55%:45%になる。

海外事業会社への共同出資について

 NTTグループは、2018年にグローバル事業を統括する中間持株会社であるNTT,Inc.を設立。2019年にNTT,Inc.傘下に、NTTコミュニケーションズグループ、Dimension Dataグループ、NTTセキュリティグループの各グローバル事業をNTT Ltd.グループとして再編。さらにNTTデータとの連携により、NTTグループとして、アプリケーションからITインフラまでを提供するグローバルプレイヤーとしての地位を「One NTT」として確立してきた。

 NTTのグローバル事業の売上高は約2兆円(2021年度見込みで189億ドル)に達している。2020年度は3.0%だった海外営業利益率は、2021年度には6.1%に拡大する見込みであり、NTTグループが目指す2023年度の営業利益率7%が射程内に入っているところだ。

NTTグループのグローバル事業の状況

 またNTT Ltd.は、2020年度実績で売上高が99億8000万ドル。フォーチュン100社の75%以上の企業に、データセンターやネットワークサービスを提供しているのに加えて、クラウドからエッジまでのITインフラ、関連サービスを提供している。従業員数は3万8150人、ネットワークサービスは約190カ国で展開しているという。

NTT Ltd.の事業概要

 NTTデータでは、2015年度までの取り組みを、「Global 1st Stage」とし、グローバルカバレッジの拡大に取り組み、海外売上比率を31%に拡大。2018年度までの「Global 2nd Stage」においては、グローバルブランドの確立を図り、海外売上比率を41%にまで拡大してきた。2019年度から2021年度までを「Midpoint to Global 3rd Stage」と位置づけ、さらに、2022年度からの新たな中期経営計画では、「Realizing a Sustainable Future」を掲げ、「世界中のお客さまから信頼される企業を目指し、質を伴ったグローバル成長に取り組んでいる」(NTTデータの本間社長)としている。

NTTデータの事業成長の変遷

 2025年には、ITサービス業界において、グローバルトップ5に入ることを目指しており、「グローバルで信頼される企業ブランドをしっかりと確立していく目標がある。ここ2~3年で、事業構造改革に取り組んでおり、その効果が出てきている」(NTTデータの本間社長)と述べた。

 また、「NTTデータの海外事業は、コンサルティング、アプリケーションサービスを中心にしたシステムインテグレーション事業が中心であり、NTT Ltd.はデータセンター、ネットワーク、クラウド、マネージドサービスなどのつなぐ領域が中心となっている。マネージドサービスの領域などで一部重複しているところはあるが、その部分は統合することで効率的な運営ができる」とした。

 さらにNTTの澤田社長は、「顧客ニーズの多様化や高度化、社会やテクノロジーの変化など、グローバルレベルでのダイナミックな環境変化に対応していく必要がある。そのために、NTTグループのグローバルガバナンスの強化と、ビジネスユーザー向け事業能力の強化が不可欠である。今回は、事業会社そのものを統合するものとなり、両方の良いところをお客さまに提供できるようになる」と、その効果を説明。

 「NTTグループのグローバル人財を結集し、グローバルガバナンスの知見を持ったリーダーシップのもとに自律的な経営を推進して、事業ポートフォリオの拡張による安定した収益構造を実現したい。また、サービスオペレーションをITインフラからアプリケーションまで、フルスタックで提供できるひとつの体制を整え、お客さまにとって価値あるパートナーを目指して、事業を推進したい」などと述べた。

 このほかNTTデータの本間社長は、「地球環境の保全、つながるモノの拡大、消費・生活スタイルの変化など、ITやデジタルの普及により、企業活動から消費・生活スタイルまで大きく変化しており、企業が対応しなければならない課題、ニーズは複雑化、多様化している。こうした社会トレンドの変化の裏にはテクノロジーの進化がある。あらゆるデータを活用したサービスの高度化が進み、新しい社会の実現に向けて、エッジ・トゥ・クラウド(Edge to Cloud)によるコネクティビティに関連した技術の重要性が高まっている点も見逃せない。さらに、モノや人の行動から、セキュアに情報を収集、分析し、企業や業界の枠を超えたデータ活用を行うデータドリブンな社会への期待が高まっている」と前置き。

 「NTTデータは、お客さまのビジネスや業務を深く理解し、高度な技術力でシステムを作り上げる『つくる力』と、さまざまな企業システムや業界インフラを支え、人と企業、社会を『つなぐ力』で、事業成長や社会課題の解決に貢献してきた。サステナブルな社会の実現に向けて、『つくる力』と『つなぐ力』をさらに高める必要がある。NTTデータが持つ『つくる力』と、NTT Ltd.が得意とする『つなぐ力』を組み合わせることで、新たな競争優位性を獲得し、お客さまや社会に新たな価値を提供したい」と述べた。

 なお、NTTは、NTTデータ株式の取得についても発表。市場買付により、6000万株または1000億円を上限として、NTTデータ株式を取得するという。