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NTTデータの2022年度連結業績、海外事業の統合や全セグメントの規模拡大で増収増益に
中期経営計画の進捗状況についても説明
2023年5月12日 00:00
5月11日、NTTデータが発表した2022年度(2022年4月~2023年3月)の連結業績は、売上高が前年比36.8%増の3兆4901億円、受注高(NTT Ltd.除く)が同13.5%増の2兆7256億円、営業利益は同21.9%増の2591億円、税引前利益が同12.5%増の2428億円、当期利益が同4.9%増の1499億円となった。なお、統合した海外事業のNTT Ltd.が、2022年10月以降の6カ月間の連結対象となっている。
NTTデータの本間洋社長は、「NTT Ltd.の連結による拡大影響、円安進行による為替影響、すべてのセグメントの規模の拡大により、増収増益となった。NTT Ltd.の連結を除いても増収となっている。また、受注高は公共・社会基盤において前期に獲得した国内大型案件の反動減はあったが、国内外での案件獲得、為替影響により増加した。全体的に好調な決算だった」と総括。
「NTT Ltd.との海外事業統合により、グローバル事業を一層加速させるとともに、財務、非財務の両観点での外部評価が向上したが、不採算案件による損失の計上が課題となった。また、財務の健全性や投資の収益性も課題となっている」と指摘した。
なお、受注高をNTT Ltd.を除いた数値としているのは、受注算定方法が異なるためとのことだ。
セグメント別業績は、公共・社会基盤の売上高は前年比7.7%増の6359億円、受注高が同8.9%減の4957億円、営業利益は同1.0%増の686億円。公共・社会基盤では不採算案件による損失があったという。
金融の売上高は前年比3.5%増の6622億円、受注高は同11.1%増の4866億円、営業利益は同13.2%増の688億円。法人の売上高は前年比11.5%増の5204億円、受注高は同19.8%増の4043億円、営業利益は同18.4%増の514億円となった。
海外の売上高は前年比80.8%増の1兆8804億円、受注高は同24.9%増の1兆2677億円、営業利益は同162.4%増の816億円となった。
2023年度の連結業績見通し、全セグメントにおいて増収増益を計画
一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)の連結業績見通しは、売上高が前年比17.5%増の4兆1000億円、受注高(NTT Ltd.除く)が同4.6%増の2兆8500億円、営業利益は同12.7%増の2920億円、税引前利益が同1.2%減の2400億円、当期利益が同4.0%減の1440億円とした。全セグメントにおいて増収増益を計画している。
「2023年度は、NTT Ltd.が年間を通じて連結することになり、収益、費用それぞれで増加影響がある。NTT Ltd.の連結影響を除くと、売上高は国内事業においてデジタルなどの新規案件獲得による売上計上によって増収。営業利益は、海外事業統合に伴う統合コストの増加などはあるものの、国内外の事業成長、公共・社会基盤での不採算案件の戻りなどにより増益を見込んでいる。また、当期利益は、海外における低採算事業撤退に伴う費用の増加や、設備投資増に伴う金融費用の増加などによって減益を予想している。受注高は、NTT Ltd.の連結影響を除いても、国内外でのデジタル関連などの良好な受注環境が見込まれ、増加すると見ている」と述べた。
セグメント別業績見通しは、公共・社会基盤の売上高は前年比4.6%増の6650億円、受注高が同4.9%増の5200億円、営業利益は同16.5%増の800億円。金融の売上高は前年比4.5%増の6920億円、受注高は同6.9%増の5200億円、営業利益は同6.1%増の730億円。法人の売上高は前年比5.7%増の5500億円、受注高は同3.5%減の3900億円、営業利益は同7.0%増の550億円とした。海外の売上高は前年比29.6%増の2兆4360億円、受注高(NTT Ltd.除く)は同5.8%増の1兆3410億円、営業利益は同21.3%増の990億円とした。
5つの戦略を徹底して実践
今回の決算会見では、中期経営計画の進捗状況についても説明した。
NTTデータでは、最終年度となる2025年度の経営目標として、連結売上高4兆円超、連結営業利益率10.0%、年間売上高50億円以上の顧客基盤を120社、海外EBITA率10.0%を掲げており、「中期経営計画期間中は、利益率を高め、質を伴った成長を遂げていくことを優先する」との方針を示している。
2023年度の売上高見通しでは4兆1000億円を計画しており、中期経営計画で掲げた4兆円超は前倒しで達成することになる。最終年度までに、「超」をどこまで伸ばせるかが注目されることになる。だが、経営目標の見直しについては、「今後の事業の中身、内容、方針などとともに考えていきたい」とした。
また、「ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出」、「Foresight起点のコンサルティング力の強化」、「アセットベースのビジネスモデルへの進化」、「先進技術活用力とシステム開発技術力の強化」、「人財・組織力の最大化」を、5つの戦略に位置づけており、「5つの戦略を徹底して実践し、お客さまへの提供価値を継続的に高めていく」と語った。
戦略1とする「ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出」では、業際連携やNTT Ltd.との連携により、事業分野単体の枠を超えたサービスの創出に取り組んでいるとし、国庫金の納付をキャッシュレスで決済できる「KOKOPASS」では、公共、金融領域での業際連携により実現。BMWの工場DXの取り組みは、NTT Ltd.のプライベート5Gに関するケイパビリティを活用した事例だという。
また、NTT Ltd.の主要事業のひとつであるデータセンター事業では、ハイパースケーラーを中心とした事業展開を進め、世界第3位のシェアを獲得。「データセンター事業を、中長期的な事業基盤の柱として重視している。積極的な投資の継続による事業基盤の拡大、ハイパースケーラーとのパートナーシップの強化、エンタープライズ向けサービスの展開を目指す」とした。
戦略2の「Foresight起点のコンサルティング力の強化」では、顧客とともに新たな価値を共創することを目指しており、具体的に取り組みとして、ヘルスケア分野において、Foresightをもとに展開するヘルスケア共創ラボを開設するなど、顧客やパートナー企業との共創機会の創出に取り組んでいることを示した。また、「グループ内の連携により、経営からITまでを一体化したコンサルティングブランドサービスを確立していく」との考えを明らかにした。
さらに、「IT投資の目的が、既存業務のIT化から、デジタルを活用したサービスやビジネスモデルの創出に変化していることをとらえ、Foresight起点のコンサルティングをより重視していく。NTTデータでは、グループ会社を含めて2000人規模のコンサルタントが在籍しているが、これをさらに増やしていく。Foresight起点の方法論やメソッドを準備しており、これを各分野に展開し、お客さまとの共創により、新たなビジネスモデルを創出する。アーキテクチャに裏づけられた提案ができる点がNTTデータの特徴である」などと語った。
戦略3の「アセットベースのビジネスモデルへの進化」においては、事業を通じて生み出した暗黙知を、アセット(形式知)に昇華させ、広く活用することで、知識集約型のビジネスモデルへと進化させるという。「アセットを含めたベストプラクティスをサービスとして提供することで、高付加価値サービスを、高品質、高速に提供す。アセットの活用は、デジタル人材不足への対策にもなる」とした。
戦略4の「先進技術活用力とシステム開発技術力の強化」では、アセット創出に関わる重要な取り組みと位置づけ、技術の成熟度に応じて、活用技術の獲得や蓄積、ビジネス適用検証、人材育成などに取り組む。2022年8月には世界6カ所にイノベーションセンタを設立。「イノベーションセンタでは、少し先の新たな技術を含めた中長期的な技術戦略の策定を行ったり、顧客との共創によるビジネスへの適用検証などをグローバルレベルで進めたりしている」と述べた。
戦略5の「人財・組織力の最大化」では、「Best Place to Work」をキーワードに、企業としての魅力を継続的に高める姿勢を強調。また、ジョブ型人事制度の導入や経験者採用の強化を進めており、「社内外から見て、より魅力的な企業への変革を進める」とした。
さらに、中期経営計画では、「Realizing a Sustainable Future」をキーワードに、サステナブル経営にも取り組んでおり、「企業活動と事業活動により、社会課題の解決や地球環境への貢献に、お客さまとともに取り組んでいる。企業活動の『Of IT』では、データセンターやソフトウェアのグリーン化にいち早く着手。事業活動の『By IT』では、サステナビリティオファリングの一例として、温室効果ガス排出量可視化プラットフォームである『C-Turtle』の提供を開始している」などと述べた。
中期経営計画における投資戦略
また、中期経営計画における投資戦略として、「Strategic Investments」、「M&A」、「データセンター投資」の3点から説明した。
「Strategic Investments」では、注力技術やインダストリーの強化を目的にしており、中長期的な成長に向けた次世代ビジネスの拡大や発掘につなげる考えを示した。ここでは、前年度同様に320億円規模の投資を計画。テクノロジーをベースとしたデジタルデリバリー力の強化に約190億円、インダストリーのデジタルオファリングの強化に約70億円、先進技術活用力の強化に約30億円、業際連携やサステナビリティビジネスの推進に約30億円を予定している。
「M&A」では、デジタル関連ケイパビリティのさらなる獲得、海外売り上げやシェア拡大によるプレゼンスの向上を取り組む。2022年度実績で約800億円を投資しており、2023年度以降も同規模のM&A投資を実施する予定だという。
「データセンター投資」は、NTT Ltd.との統合によって獲得したデータセンター事業において、旺盛な需要に対応した積極的な投資を進める姿勢をみせた。2022年度は約2800億円の投資を行ったが、2023年度は約3500億円の投資を計画している。
「これまではアセットライトなビジネスが多かったが、データセンター事業が加わったことで、アセットヘビーなビジネスが増えてきている。投資回収期間の短縮化や、収益性の向上などに取り組みながら、積極的な投資を進める」としたほか、「データセンター事業の利益率は10%台後半であり、営業利益に貢献している。安心、安全、高信頼性に加えて、グリーンの強みを生かしたい。また、IOWNの技術を組み合わせることで、大量のデータを高速に処理できるようになる。海外ビジネスではハイパースケーラーが中心であり、国内ビジネスではエンタープライズが中心となる。ネットワーク、コンサルティング、システムインテグレーションなどを組み合わせたフルスタックによるサービス提供を増やしたい」とした。
これらの投資戦略について、NTTデータの本間社長は、「M&A投資やデータセンター投資は、統合作業や建屋の建設といった先行投資が必要となり、投資の回収には一定の期間を要するが、中長期的な競争力強化には欠かせないものになる。持続的な競争優位性の維持および強化に向けて、投資ポートフォリオの適切なマネジメントを実行していく」と述べた。
さらに、課題となっている財務の健全性と投資の収益性については、「質を伴う成長により、EBITDAを向上させることに加えて、データセンター事業における第三者資本の活用により、投資回収期間を短縮化させることで、2023年度をボトムとして、投資収益性、財務健全性の改善を図っていく」としている。
NTT Ltd.統合以降の海外事業の進捗
一方、2022年10月のNTT Ltd.統合以降の海外事業の進捗についても触れた。
2022年10月に海外事業会社であるNTT DATA, Inc.を設立。2023年7月から、持株会社のNTTデータグループ、国内事業を担当するNTTデータ、海外事業を担当するNTT DATA, Inc.の3社体制へと移行するこれまでの計画には変更がない。
本間社長は、「海外事業統合前からそれぞれに実行してきた事業構造改革によって、質を伴った成長が順調に進捗している。海外事業は、2022年度調整後EBITA率が8%となっている。営業連携強化や海外事業再編を本格的に推進することで、2025年度にEBITA率10%の達成を目指す」と述べた。デジタルシフトとショアリング、通信機器のサポートサービスの強化などにより、EBITA率の改善に取り組むという。
また、「これまでにも、One NTT DATAとして、海外各地域の営業力強化により、新たな事業機会の創出、サービス提供価値の拡充による収益性の向上に取り組んできた。営業連携パイプラインが増加し、お客さまからの期待感が高まっている。さらなるシナジーを創出すべく、2024年度からの新たなオペレーティングモデルを推進することになる」とした。
新たなオペレーティングモデルは、Regional UnitsとGlobal Unitsで構成。Regional Unitsでは、EMEAL、APAC、North Americaの3地域にわけて、NTTデータの海外グループ会社とNTT Ltd.を統合。地域単位で、一元的にオファリング提供できる統合体制に移行し、各地域での顧客エンゲージメントを強化する。
Global Unitsでは、NTT Ltd.によるデータセンターやネットワークといったグローバル共通のサービスを提供する「Global Technology Services」と、SAPビジネスを展開しているNTT DATA Business Solutionsと各リージョン組織との連携によって、サービス提供を強化する「Business Solutions」で構成する。さらに、コーポレート機能の全体最適化を実現するとともに、グローバルレベルでのサービスやデリバリーの成長戦略、パートナー戦略を推進していくと述べた。