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NTTデータ、2025年度までの新中計を発表 4兆円超の連結売上高を目指す

 株式会社NTTデータは12日、2025年度を最終年度する新中期経営計画を発表した。それによると、2025年度の連結売上高は4兆円超、連結営業利益率は10%、海外EBITA率は10%のほか、年間売上高50億円以上となる顧客基盤で120社の獲得を目指す。営業利益目標は約4000億円となり、2021年度の約2倍の計画になる。

2025年度経営目標

 NTTデータでは、2022年10月に、ビジネス向け海外事業を行うNTT Ltd.と事業統合することを発表。ITとコネクティビティを融合したサービスをトータルで提供する企業へと進化する考えを示している。オーガニックな事業成長とともに、M&Aを積極化することで、高い成長を目指すことになる。

 売上高では、NECが2025年度目標に掲げている3兆5000億円を抜き去ることになる。また、富士通の2022年度売上収益目標は3兆7000億円であり、今後の富士通の成長戦略次第では、同等水準になることも見込まれる。

 NTTデータの本間洋社長は、「『Realizing a Sustainable Future』をテーマに、未来に向けた価値をつくり、さまざまな人々をテクノロジーでつなぐことで、お客さまとともにサステナブルな社会を実現することを目指す」とし、「海外事業の質を伴った成長の加速、デジタル領域におけるさらなる競争力の強化、人財が成長する組織への変革、真のグローバル企業となるための本社機能の強化の4つの課題に取り組む。Global 3rd Stageの到達に向けて、世界中のお客さまから信頼される企業を目指す」と述べた。

NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏

新たな中期経営計画での5つの戦略

新中期経営計画 戦略全体像

 新たな中期経営計画では、5つの戦略を打ち出す。

 戦略1とするのが、「ITとコネクティビティの融合による新たなサービスの創出」である。

 NTTグループとのさらになる連携強化により、Edge to Cloudのサービス提供力を強化。幅広い業界にシステムを提供する強みを組み合わせ、さまざまな顧客接点やデータをセキュアにつなぎ合わせることで、企業や業界の枠を超えた業際連携を実現し、新たな社会プラットフォームや革新的なサービスを創出するという。

戦略1:ITとコネクティビティの融合による新たなサービスの創出

 戦略2は、「フォーサイト起点のコンサルティング力の強化」だ。

 顧客や業界の未来を構想するインダストリーコンサルティング力と、テクノロジー起点で未来を構想するテクノロジーコンサルティング力を強化し、共創パートナーとして顧客の成長を支え、ビジネス変革を実現する。各分野にコンサルティング専門組織を立ち上げるとともに、顧客や業界の未来(フォーサイト)を構想する方法論を整備し、その実践を支援。コンサルティング人財の育成などをサポートする機能も設置する。さらに、世界各地の業界、業務のスペシャリストが持つさまざまな知見を集めて活用するネットワークを立ち上げる。

戦略2:フォーサイト起点のコンサルティング力の強化

 戦略3とする「アセットベースのビジネスモデルへの進化」では、グローバルレベルでNTTデータグループ内の技術、知見、経験などをアセット化し、それらを有効活用することにより、顧客への提供価値を最大化する。

 具体的には、業界や業務のフォーサイトベストプラクティス、ソフトウェア、自社ツールなどを、顧客に提供できる価値として、再利用可能な状態で集約化。それらを活用したコンサルティングから、デリバリーマネージドサービスまでをグローバル全体で推進する。これまでの受託SIを主体としたビジネスモデルから、自ら提案し、発信するビジネスモデルへと変革し、デジタル時代に最適化したビジネスアジリティを備えた体制へと転換する。

戦略3:アセットベースのビジネスモデルへの進化

 戦略4の「先進技術活用力とシステム開発技術力の強化」では、技術の成熟度に応じた3つ領域における活動を推進し、未来の競争力獲得に向けた先進技術の活用力強化と生産性の向上に向けたシステム開発技術力の強化を両輪で進める。現在活用されているメインストリーム領域では、NTTデータが強みとしている技術の活用力を磨き、グロース領域やエマージング領域の技術に関しては、将来活用される先進技術の目利きを行って、グローバルレベルでのPoCなどを実行するという。また技術探索や技術者育成などを行い、テクノロジー面での競争力強化を図っていくことになる。

戦略4:先進技術活用力とシステム開発技術力の強化

 戦略5とした「人財・組織力の最大化」では、「価値創出の原動力は人財であり、働く人にとって、魅力的な企業へと変革することが重要である」と語り、グローバルで最先端技術が学べる育成プログラムの導入や、多様な人財が活躍できる制度の導入、先進的な職場環境の整備に取り組む。グローバル企業としての本社機能の強化も行う。

 高い専門性に応じた処遇の実現や、社員の自律的な成長を促す制度を整備。業務の特性などに応じて、働く時間と場所を柔軟に設定できる環境を実現することで、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進し、従業員エンゲージメントを向上させる。これにより、各戦略の実行を支える人財や組織力を最大化するとともに、将来に渡って企業価値を高めていくという。

戦略5:人財・組織力の最大化

 さらに、「5つの戦略を支える仕組みとして、投資と成長の好循環を確立し、Global 3rd Stageに向けた事業成長を実現していく」と語り、Industry、Technologyといった注力領域に加えて、サステナビリティやIOWNといった社会変革を実現するテーマへの投資枠を新設し、将来のビジネス創出に向けた戦略的な投資を、グローバル全体で推進していくとした。

 戦略的投資枠として150億円を先行投資分として用意。テレコム、自動車、銀行、保険、ヘルスケアといった注力領域において、グローバルで戦えるオファリングをそろえるという。また、セキュリティ、クラウド、D&I、EAS、ADMといった技術領域への投資も行うほか、2022年度からは、社会変革の実現に向けた投資も新たに開始する。

事業成長に向けた戦略投資

 あわせて、グローバルを前提としたMarketing、Innovation、Governanceの機能を強化し、事業環境の変化に迅速に対応する考えも示す。「NTTデータは、これまでお客さまとトラステッドな関係を築いてきた。ビジネスや業務を深く理解して、高度な技術力でシステムを作り上げる『つくる力』と、さまざまな企業インフラや業界インフラを支えて、人と企業、社会を『つなぐ力』で、事業成長や社会課題の解決に貢献してきた。サステナブルな社会の実現に向けて、『つくる力』と『つなぐ力』を、さらに高めるとともに、2つの力を掛け合わせ、企業や業界の枠を超えた社会プラットフォームや革新的なサービスを提供する」と述べた。

 このほか、サステナビリティ経営についても言及した。NTTデータの本間社長は、「社会を取り巻く環境は大きく変化しており、社会課題の解決や、地球環境への貢献が企業や経営にも求められている。また、地球環境の保全、つながるモノの拡大、消費スタイルや生活スタイルの変化など、ITとデジタル技術の普及により、企業が対応しなければならない課題や、ニーズは複雑化し、多様化している」点を指摘。

 「これらの社会トレンドの変化の裏には、テクノロジーの進化がある。あらゆるデータを活用したサービスの高度化が進み、新しい社会の実現に向けて、Edge to Cloudといったコネクティビティに関連した技術の重要性が高まっている。さらに、モノや人の行動からセキュアに情報を収集し、それらを分析し、企業や業界の枠を超えたデータ活用を行うデータドリブンな社会への期待も高まっている」とした上で、「こうした大きな変化の局面を、さらなる成長の機会ととらえ、長期的視点を持ち、経営におけるサステナビリティへの取り組みを推進する。『Clients'Growth』、『Regenerating Ecosystems』、『Inclusive Society』の3つの軸を定め、9つのマテリアリティを設定。サステナブルな社会の実現に向けて、事業活動と企業活動によって、社会課題の解決、地球環境へ貢献に取り組むことで、お客さまとともに成長していく」などとした。

9つのマテリアリティ

 また、「Global 3rd Stageの到達に向けて、Trusted Global Innovatorとして、未来に向けた価値をつくり、さまざまな人々をテクノロジーでつなぐことでお客さまとともにサステナブルな社会を実現することを目指す」と述べた。

2021年度の連結業績は増収増益、すべての項目が過去最高を更新

 一方、2021年度(2021年4月~2022年3月)の連結業績は、売上高が前年比10.1%増の2兆5519億円、受注高が前年比8.0%増の2兆4008億円、営業利益が前年比52.8%増の2126億円、税引前利益が前年比65.5%増の2158億円、当期利益が前年比86.1%増の1430億円となった。営業利益率は8.3%だった。

 NTTデータの本間社長は、「すべての項目が過去最高を更新。当期利益は海外における事業構造改革の効果などにより、大幅な増加になっている」とした。

 第3四半期には通期予想を上方修正していたが、売上高はすべてのセグメントにおいて業績を拡大したの加えて、為替影響により、33期連続での増収を達成。受注高は、海外事業の規模拡大および為替影響により増加したという。

2022年3月期 実績

 セグメント別業績は、公共・社会基盤セグメントの売上高は前年比7.8%増の5824億円、受注高が同13.0%増の5443億円、営業利益は同0.4%増の681億円。

 金融セグメントの売上高が前年比4.2%増の6331億円、受注高は同17.6%減の4465億円、営業利益は同9.9%増の623億円。

 法人・ソリューションセグメントの売上高は前年比10.5%増の6529億円、受注高は同9.4%増の3764億円、営業利益は同22.6%増の641億円。

 北米セグメントの売上高は同10.8%増の4757億円、受注高は同23.6%増の4257億円、営業利益は前年から333億円増の172億円となった。EMEA・中南米セグメントの売上高は前年比21.3%増の5509億円、受注高は同20.1%増の5714億円、営業利益は前年から217億円増の156億円となった。

 「前年度に獲得した銀行向け大型案件の反動減はあったが、北米の金融および法人向け大型案件の獲得、スペイン、ドイツなどでの案件獲得があった。国内では、法人・ソリューションにおいて、製造業、流通業、サービス業向けサービスの規模の拡大に加えて、為替影響もプラスに働いた。営業利益はビジネス拡大のための先行投資および不採算案件の発生はあったが、北米やEMEA・中南米での構造改革の効果や増収などにより増益になった」とした。

 2021年度は、中期経営計画の最終年度であったが、計画に掲げていた売上高2兆5000億円、営業利益率8%を、顧客基盤80社以上の3つの指標を達成。経営指標のなかでは、唯一、海外EBITA率が7%の目標に対して、実績は6.5%にとどまった。

 本間社長は、「中期経営計画では、GETS(Growth、Earnings、Transformation & Synergy)による成長する力、稼ぐ力、変革する力、連携する力を高めることに取り組んできた。海外EBITA率は目標には届かなかったが、事業構造改革の成果によって、北米市場では目標の7%を達成している。引き続き、収益性改善とデジタルシフトの推進に取り組まなくてはならないという認識がある」とした。

 また、「変える勇気:お客さまへの提供価値最大化」をテーマに、3+1戦略と位置づけてきた取り組みについては、「戦略1である『グローバルデジタルオファリングの拡充』では、グローバルマーケティング、DSO(Digital Strategy Office)、CoE(Center of Excellence)の3つのオファリングでグローバル連携を加速。多くの成果が生まれている。戦略2の『リージョン特性に合わせたお客さまへの価値提供の深化』では、お客さまとのLong-term Relationshipsを生かして、デジタル事例を数多く創出し、新たな価値を提供できた。戦略3の『グローバル全社員の力を高めた組織力の最大化』では、人材育成の各種施策や制度の拡充を図るとともに、ガバナンス強化の観点から不採算抑止に取り組み、不採算案件総額の割合を売上比0.3%以下に抑える目標を達成した。そして、『NTTグループ連携の強化』では、先進顧客との協業プロジェクトに参画し、お客さまに貢献してきた。NTT連携はさらに強化していく」と述べた。

前中期経営計画の振り返り

2022年度の連結業績見通し

 2022年度の連結業績見通しは、NTT Ltd.との事業統合によって大きく伸長。売上高は前年比28.1%増の3兆2700億円、営業利益は11.0%増の2360億円、税引前利益が6.6%増の2300億円、当期利益が4.9%減の1360億円を見込む。

 NTTデータの本間社長は、「NTT Ltd.との事業統合に加え、国内事業を中心とした規模拡大および為替影響を反映し、大幅な増収を見込んでいる。営業利益は増益を予想しているが、新中期経営計画目標達成に向けた戦略投資を増加させたい」と述べた。

2023年3月期 業績予想

 2022年10月に予定しているNTT Ltd.との事業統合においては、IT基盤の統合やコーポレート機能の統合などから着手。2025年度には営業利益で300億円のシナジー効果を見込んでいるとした。

 なお、NTT Ltd.との事業統合影響を除くと、売上高が前年比4.2%増の2兆6600億円、受注高が前年比1.2%増の2兆4300億円、営業利益が4.4%増の2220億円、当期利益が2.8%増の1470億円の計画としている。

 また、NTT Ltd.との事業統合を除いたセグメント別業績見通しは、売上高、営業利益は、すべてのセグメントで増収増益を予想。公共・社会基盤セグメントの売上高は前年比4.9%増の6110億円、受注高が同12.0%減の4790億円、営業利益は同8.7%増の740億円。金融セグメントの売上高が同3.9%増の6580億円、受注高は同11.5%増の4980億円、営業利益は同5.9%増の660億円。法人・ソリューションセグメントの売上高は同4.1%増の6800億円、受注高は同3.3%増の3890億円、営業利益は同6.0%増の680億円。

 北米セグメントの売上高は前年比6.8%増の5080億円、受注高は同2.9%増の4380億円、営業利益は同28.1%増の220億円。EMEA・中南米セグメントの売上高は同4.0%増の5730億円、受注高は同2.4%増の5850億円、営業利益は同53.8%増の240億円とした。