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F-Secureの企業向け部門、新ブランド「WithSecure」として分社化へ

日本法人は「ウィズセキュア株式会社」に社名変更

 フィンランドF-Secureは22日、同社の企業向けセキュリティ事業の社名/ブランド名を「WithSecure(ウィズセキュア)」に変更し、分社化することを発表した。またこれに伴い、日本法人の社名をエフセキュアから「ウィズセキュア株式会社」に変更することも発表された。

 F-Secureはこれまで、企業向け部門とコンシューマ向け部門を2つの柱として事業を推進してきた。今回、この2つの部門をそれぞれの主要市場においてさらに強化していくため、企業向け新ブランド「WithSecure」をローンチするとともに、分社化を実行する。「WithSecure」のブランドプロジェクトには、約300人のF-Secure社員が積極的に参加し、何千ものコメントを寄せながら、ブランドストーリーやビジュアルアイデンティティー、新社名の制作にあたったという。

 WithSecure アジアパシフィック地域担当バイスプレジデントのジョン・デューリー氏は、「もはや、一つのブランドの元で、すべての人のためのサイバーセキュリティを提供するという戦略は、通用しなくなってきている。その中で当社は、コンシューマ向けと企業向けの両方のビジネスを本格的に成長させるためには、それぞれが独立したブランドを持つべきであると考え、企業向けに特化した新ブランド『WithSecure』を導入することとした。この新ブランドは、顧客およびビジネスパートナーとの『グッドパートナーシップ』を表すものであり、当社のあらゆる行動の土台となる考え方となる」と、新ブランドを立ち上げる背景を語った。

WithSecure アジアパシフィック地域担当バイスプレジデントのジョン・デューリー氏

 WithSecureの事業ビジョンについては、「WithSecureでは、『デジタル社会における信頼の構築を支援する』ことをパーパスとし、『サイバー攻撃により、誰も深刻な被害を受けない未来を作る』ことをビジョンに掲げている。これを実現するための要素となるのが、『アウトカム(成果)ベースセキュリティ』、『直感的で使いやすいテクノロジーの追求』、『サイバーセキュリティ最前線の現場で培われたノウハウ』、『コ・セキュリティ(共同セキュリティ)のアプローチ』の4つとなる。これらの取り組みによって、顧客やビジネスパートナーに向けた価値の創出・提供を図っていく」との考えを示した。

WithSecureのビジョン実現に向けた4つの要素

 具体的には、「アウトカムベースセキュリティ」では、製品やサービスの導入だけに終わらないセキュリティの成果を提供する。顧客のセキュリティ態勢を向上させるだけでなく、ビジネスの運営効率を向上させ、その結果サイバーセキュリティの成果とビジネスの成果の密接な連携を実現する。「直感的で使いやすいテクノロジーの追求」では、初めて製品やサービスを導入した人でも迷わず操作できる直感的なインターフェイスを提供し、企業活動の効率化を支援する。また、同社の専門知識と自動化機能、インテリジェンスを組み合わせることで、サイバーセキュリティ業務を効率化する。

 「サイバーセキュリティ最前線の現場で培われたノウハウ」では、30年以上にわたり、サイバー脅威の最前線で研究/調査を行い、そこで深めた専門知識をシームレスにテクノロジーに反映していく。これにより、顧客やパートナーは、同社の経験とインサイトを常に活用できるようになる。「コ・セキュリティのアプローチ」では、サイバーセキュリティに関わる問題は一人で解決することはできないという認識から、ステークホルダー間の協力や協調を介して、セキュリティの能力、コンピタンス、文化の向上を支援していく。

 また、WithSecureでは、顧客やパートナー、アスリート、アーティスト、活動家、起業家、イノベーターなど、世界で鋭い頭脳を持つ人々をブランドアンバサダー(コ・クリエイター)に迎え、コ・セキュリティコミュニティを形成。ブランドアンバサダーとアイデアを共有し、新しいラディカルな考え方をサポートすることで価値を提供していくという。今回、日本のブランドアンバサダーとして、創作和菓子「鎌倉手毬」代表取締役の御園井裕子氏が就任したことが発表された。

創作和菓子「鎌倉手毬」代表取締役の御園井裕子氏

 WithSecureが提供する企業向け製品・サービスのポートフォリオは、クラウドネイティブでインテリジェントなエンドポイント保護製品「WithSecure Elements」、Salesforce向けのクラウドコンテンツ保護製品「WithSecure Cloud Protection for Salesforce」、マネージドサービスの「WithSecure Managed Services」、ユーザー企業のニーズに合わせてカスタマイズするサイバーセキュリティコンサルティングサービスの「WithSecure Consulting」から構成される。

WithSecureの製品・サービスポートフォリオ

 「WithSecure Elements」について、ウィズセキュア サイバーセキュリティ技術本部長の島田秋雄氏は、「『WithSecure Elements』は、エンドポイントセキュリティのバリューチェーン全体をカバーするために必要なソリューションと、シームレスなサービスを提供するクラウドベースのセキュリティプラットフォームとなる。シングルエージェントでサイバーセキュリティ機能を統合化し、管理ポータルの『WithSecure Elements Security Center』でセキュリティ対策状況を可視化する。これにより、IT資産のセキュリティ対応の優先付けや、脆弱性の特定およびパッチ管理作業、セキュリティイベントの依存関係の把握が可能になる。また、顧客への技術トレーニングやワークショップ、サービス構築の設計・サポート、さらにはパートナーのビジネス展開のサポートも提供する」と説明した。

ウィズセキュア サイバーセキュリティ技術本部長の島田秋雄氏

 「WithSecure Cloud Protection for Salesforce」について、ウィズセキュア 法人営業本部シニアセールスマネージャーの河野真一郎氏は、「昨今、Salesforce環境に対するマルウェア/ランサムウェア対策の重要性が高まってきている。『WithSecure Cloud Protection for Salesforce』は、Salesforceとの共同開発により、Salesforceのセキュリティ機能を補完するように設計されており、Salesforce上のファイル、URLリンク、メールを監視し、ユーザーの利用を妨げることなくセキュリティチェックすることができる。危険なコンテンツが検知された場合には、ユーザーに検知画面を表示するとともに、管理者に自動的に警告を送信する。国内の導入事例として、コロナ禍の2021年は、電子申請や窓口業務のオンライン化に伴うファイル送信のマルウェアチェック案件、通信事業者や大手製造業のコールセンター案件が増加した」としている。

ウィズセキュア 法人営業本部シニアセールスマネージャーの河野真一郎氏

 「WithSecure Consulting」について、ウィズセキュア プリンシパルセキュリティコンサルタントのアンッティ・トゥオミ氏は、「『WithSecure Consulting』では、世界約15か国からの専門家200人が、技術的な優秀性や、標準との準拠方法、セキュリティ経営の経験を持って、それぞれの専門性と特技を生かし、顧客企業のあらゆる環境・システムに応じたセキュリティコンサルティングサービスを提供する。国内では、グローバルチームの専門知識を日本語で提供しており、これまでに、車載用ECUのハードウェア、ファームウェアとアプリケーションのセキュリティ診断や、金融機関系システムのオンプレミスシステムとAWSやAzure環境のセキュリティ診断、工場用機器とシステム構成の脅威分析とセキュリティ診断など、多くのコンサルティング事例がある」と紹介した。

ウィズセキュア プリンシパルセキュリティコンサルタントのアンッティ・トゥオミ氏

 なお、コンシューマ向けのセキュリティ製品とサービスは、引き続き既存の「F-Secure」ブランドでエンドユーザーとセールスパートナーに提供される。また、企業向け新ブランド「WithSecure」立ち上げに伴うF-Secure本社の会社分割は今年6月を予定している。