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セールスフォース、MuleSoft製品に関する国内の事業体制を強化 世界で蓄積してきた実績をもとに日本企業のDXを支援
2021年4月21日 06:00
株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)は20日、米本社が買収した米MuleSoft製品に関して、国内における事業体制を強化することを明らかにした。
組織や製品、サービス、サポートに関して、日本に最適化した体制へと移行。MuleSoftのフラッグシップ製品である「MuleSoft Anypoint Platform」と、Salesforceの各製品の有機的な統合、グローバルで蓄積したペストプラクティスを活用するほか、パートナー企業との連携強化を推進し、特にアクセンチュア、NTTデータ、NECとの連携を強化するという。
MuleSoft Japanの小枝逸人カントリーマネージャーは、「日本の企業は、システムの老朽化や肥大化、複雑化、ブラックボックス化によってDXが進まないという課題がある。これを解決できるのがMuleSoft。既存システムをアンロックし、データを利活用することができる。世界で蓄積してきた実績をもとに日本の顧客を支援できる」と述べた。
また「2021年2月に大規模な組織変更を行った。これにより、顧客の意見を聞くことができ、日本に最適化したトレーニングや認定制度を実施し、日本語で顧客をサポートできる体制が整った」としている。
システムとシステムを連携して、データを活用するためのソリューション
MuleSoftは、あらゆる場所に格納されたデータを連携させ、必要なときにリアルタイムでデータを活用できるインテグレーションプラットフォームに位置付けられる。
小林氏は、「システムとシステムを連携して、データを活用するためのソリューションだ。同時に、顧客のビジネスの課題を浮き彫りにし、パートナーとともにゴールを共有して、課題を解決できる。ビジネスの成果を生むためのテクノロジーであり、MuleSoftを導入することで企業の生産性は60~65%向上し、ビジネスが3倍の速度で進められるようになる」と述べた。
ガートナーのマジッククアドラントでは、MuleSoftはiPaaSおよびフルライフサイクルAPI管理の両分野において、4年連続でリーダーのポジションにあるとのこと。国内では、東京海上日動グループやアフラック、NEC、三井住友フィナンシャルグループ、カインズなどがすでに採用し、Salesforceとレガシーシステムとの連携や、マルチクラウド連携のAPIプラットフォームとして、またはアジャイル型開発基盤として利用しているという。
具体的な製品としては、API主導の接続性を実現する「MuleSoft Anypoint Platform」と、新たな業務モデルを実現するための包括的なIPとオファリングを提供する「MuleSoft Catalyst」で構成される。
このうちMuleSoft Anypoint Platformでは、API開発を行うAnypoint Design Center、開発したAPIを共有するAnypoint Exchange、プラットフォーム全体を管理するAnypoint Management Center、データ保護を行うAnypoint Security、クラウドやオンプレミスなどのハイブリッド環境で利用できるRuntime Engine & Servicesの5つのコンポーネントを用意。さらに、エコシステムによって提供される200以上のコネクターも利用できる。
一方のMuleSoft Catalystでは、チュートリアルやテンプレートを提供するKnowledge Hubなどを提供している。
MuleSoft Japan 執行役員の小山径氏は、「DXの取り組みのうち、85%はシステム開発やシステム連携の問題で遅延するか、頓挫すると言われている。事業スピードが加速するなかで、サイロ化されたデータを活用することが困難なのが理由だ。顧客が期待する一貫した体験を実現できないほか、効率化ができず、社内コストが高止まりしている。それにもかかわらず、新たなビジネスニーズは増大し、ITデリバリーギャップはますます拡大することになる。現代の企業に求められる新しいアプローチは、ITを組み立てブロックのように簡単に再利用できるようにすることであり、それを実現するのがMuleSoftになる」と、自社製品をアピール。
「APIとマイクロサービスを用いたシステム連携によって、データ利活用を促進できるほか、API主導のアプローチによってシステムからデータを開放し、データを業務プロセスとして処理し、利用者に公開することで、インテグレーションの定義を根本から変えられる。また、APIとマイクロサービスのローコード開発から、社内外での共有、再利用までのライフサイクルを支援する機能をプラットフォームで提供できる」と、その特長を説明した。
なお、Salesforce.comは2018年4月にMuleSoftの買収を完了。日本ではSalesforce.comの一部門として、MuleSoft Japanがソリューションやサービスを提供してきた。
セールスフォース マーケティング本部プロダクトマーケティング/マネジメントシニアディレクターの林淳二氏は、「当社をCRMの会社だと思っている人が多いが、それは正しくもあり、間違ってもいる。2018年以降に、MuleSoft、Datorama、Tableau、Vlocityを統合しており、Salesforce Customer 360によるイノベーションを促進。全方位型で、顧客中心型のCRMソリューションの提供につながっている。そのなかで、MuleSoftは業界ごとに存在する特殊なシステムやデータと連携できるソリューションとなる。当社のSalesforce Customer 360戦略と、業界ソリューション戦略の2軸を強化する上で、APIの民主化を打ち出すMuleSoftは重要な役割を果たす。レガシーシステムのモダナイズを実現し、業種、業態を問わないカスタマーサクセスを実現できる」と述べ、Salesforce.comにおけるMuleSoftの位置付けを説明している。
国内の事業体制強化における3つのポイント
今回の日本における事業体制強化では、3つの観点から説明した。
ひとつめが、日本の顧客に合わせた国内における運営体制と、米本社やアジア太平洋地域との協働による「日本市場に対するコミットメント」である。
MuleSoft Japanの小枝カントリーマネージャーは、「世界中のすべてのシステムやアプリケーション、データ、デバイスを接続し、顧客のビジネス価値高め、日本のDXをけん引することを目指す。組織やプロダクト、イネーブルメント、サービス、サポートといった観点から日本にあった運営体制に移行し、同時に、グローバルのベストプラクティスを日本の顧客に提案する。また、顧客やパートナーとの信頼を築き、多様性を尊重し、すべてのステークホルダーの成長と成功を追求する。顧客の声に耳を傾けて、製品やサービスにフィードバックすることができるようになる」と述べた。
2つめが「Salesforceとのシナジー」である。ここでは、Salesforce Customer 360を実現するデータインテグレーションを推進することになる。
「Salesforce.comの創業者であるマーク・ベニオフは、『DXの鍵は顧客に始まり、顧客に終わる』と言っている。すべての情報をまとめ、ユーザーのシングルビューを実現することが大切であり、それを可能にするのがMuleSoft Anypoint Platform。Salesforceのカスタマーサクセスプラットフォームと組み合わせることで強力なものになる。多くのパートナーと連携し、日本の顧客とともに成長していく。日本におけるMuleSoftの経営を、地に足がついたものにする」とした。
3つめが、「パートナーとの連携強化」だ。
「各パートナーが持つ特徴や強みに加えて、顧客や既存システムのことを理解しているといったパートナーと顧客の関係性を生かしたい。データの再利用を実現し、日本の企業を次のステップに持っていくために、パートナーとの連携強化を図りたい」と述べた。現在、約20社のパートナーが、国内でMuleSoftが取り扱っているという。
パートナー企業3社からのメッセージ
さらに会見では、3社のパートナー企業がメッセージを寄せた。
アクセンチュア Accenture Technology,Cloud First Applications Lead,Asia Pacific, Africa and Middle East マネージングディレクターの篠原淳氏は、「アクセンチュアは、かなり早い段階からMuleSoftのビジネスを手掛けている。APIのマネジメント、ETLの機能の両方を兼ね備えた特徴的なシステムツールであり、企業のクラウドへの旅路を実践するために欠かせないツールである。MuleSoftのナンバーワンパートナーとして、日本におけるビジネスの拡大にまい進したい」と述べた。
NTTデータ 執行役員 技術革新統括本部長の冨安寛氏は、「NTTデータは、2019年からMuleSoftとの協業を開始。海外グループ会社とも連携し、MuleSoftのグローバルワンチームを組織化している。以前は既存システムの全面刷新やマイグレーションの提案を主軸にしてきたが、現在は外部サービスと連携し、既存システムを温存・活用しながら、価値創出に貢献するといった提案も行っている。ここに、MuleSoftを活用している。Salesforceをはじめとしたサービスやアプリケーションとの連携を一元的に管理でき、ビジネスに迅速に対応できる。すでに大手銀行や保険会社でも採用されている。2021年度も、適用案件は増えていくだろう」と述べた。
NEC 執行役員常務 デジタルビジネスプラットフォームユニット担当の吉崎敏文氏は、「NECは社内システムにもMuleSoftを採用している。点在するAPIにMuleSoftをつなぐことで、スムーズにシステム間連携が可能になる点を評価している。特にリアルタイム性のあるデータ連携に効果があり、日本の顧客にも積極的にMuleSoftを提案し、顧客接点の改革領域において活用していく。また、MuleSoftの技術者育成にも力を入れているところである」などと語った。