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日立、CMOSアニーリング技術により大規模な勤務シフトを作成するソリューションを提供開始

 株式会社日立製作所(以下、日立)は19日、CMOSアニーリングを活用して、数十人や数百人規模の勤務シフトを作成する「勤務シフト最適化ソリューション」の提供を開始した。

 勤務シフト最適化ソリューションは、量子コンピューターを疑似的に再現し、大規模で複雑な組み合わせ最適化問題を高速に解くことができる日立のCMOSアニーリングを活用して、時間ごとの必要人数やタスク(職務)、休暇希望、勤務頻度、通勤時間などの複雑な条件に対応した勤務シフトの作成を可能にする。

 職場ごとの複雑な制約・条件を考慮しながら、大規模な要員配置の最適解を導き出すことで、過剰配置によるコスト増加や人員不足による対応の遅延、サービス品質の低下などを防ぐことが期待できる。導入にあたっては、過去の実績をもとに、混雑が予想される日時など、将来の業務量を予測する機能の提供もオプションで対応する。

 これらの機能により、サービスセンターやコールセンターなどの大規模な勤務シフトにおいて、画一的なローテーションによるシフト組みではなく、細かな制約を複合的に考慮した最適な要員配置を実現するとしている。

 また、CMOSアニーリングの利用環境はクラウドサービス形態で提供するため、マシン購入や専用回線の設置は不要。顧客の使い勝手や実際の運用を考慮しながら、シフトを決定する上で必要な条件を個別にカスタマイズするセミオーダーメイドタイプのソリューションのため、導入後はウェブブラウザーなどから必要項目を入力するだけで手軽に最適なシフトを作成でき、シフト作成の作業負荷を軽減できる。

 ソリューションの提供開始に先立って、三井住友フィナンシャルグループのコールセンター数カ所で活用し、共同で実務上の評価観点を検討・実証したところ、人手で作成する従来の勤務シフトと比較して余剰配置の発生を約80%削減するなど、要員配置の適正化に対する高い有効性が確認できたという。

 また、日立社内においても、CMOSアニーリングを活用した高速シフト作成の先行実証を進めており、緊急事態宣言下の2020年5月から、日立の中央研究所に所属する約360名の研究者を対象に、CMOSアニーリングによって作成したシフト出社制を導入。研究活動は特別な設備を使用する必要があるため、出社時間を4シフト制とし、所属チームや研究内容、実験の進捗、実験設備の使用状況、希望出社頻度、通勤時間など条件を細かく設定することで、数百人規模の「3密」回避のシフトを効率的に作成し、新型コロナウイルスへの感染リスクを最小限に抑えながら、円滑に研究活動を継続することができたとしている。

 勤務シフト最適化ソリューションの価格は個別見積もり。日立では、勤務シフト最適化ソリューションを、デジタルイノベーションを加速する日立のLumadaソリューションの一つとして幅広い業種業態に展開し、企業のワークライフバランスや多様な働き方への対応を支援していくと説明。また、CMOSアニーリングの開発をさらに強化し、金融商品のポートフォリオ作成や、物流倉庫におけるピッキング作業の高度化といったさまざま分野において、顧客のビジネスを支える基幹業務での活用をめざして、各種ソリューションの拡充に取り組んでいくとしている。