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日立、組み合わせ最適化問題に特化したクラウド計算サービスの無償提供を開始

CMOSアニーリングマシンを活用

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)と株式会社日立製作所(以下、日立)は19日、「組み合わせ最適化問題」に特化したアニーリングマシンを利用したクラウド型計算サービスの無償提供を開始した。

 NEDOと日立では、人口減少や交通渋滞などの社会課題の解決に向けて、膨大な選択肢から最適な解を見つけ出す「組み合わせ最適化問題」を高速に解く技術としてアニーリングマシンへの注目が高まっていることを受け、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立研究開発法人理化学研究所、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構、学校法人早稲田大学とともに、2016年度からアニーリングマシンの研究開発事業に着手した。

 今回、事業の成果として、日立がNEDOの委託を受けて開発した「CMOSアニーリングマシン」を活用し、インターネットを通じてCMOSアニーリングマシンを無償で利用できるクラウド型計算サービスとして「Annealing Cloud Web」の無償提供を開始した。

 これにより、利用者は組み合わせ最適化問題の計算処理を効率的に実行できるとともに、アニーリングマシンを用いた最適化計算プログラムの開発が可能となり、交通渋滞解消をめざした都市交通の最適化シミュレーションなどに適用できるとしている。

 CMOSアニーリングマシンは、イジングモデルの動作を半導体のCMOS回路で擬似的に再現する、日立独自の新型コンピューター。2015年2月には20480パラメータに対応した専用チップの試作に成功し、2016年11月にはFPGAを用いた試作機により、計算規模を拡大する技術を開発、2018年6月にはFPGAを複数接続してスケーラブルに動作する技術を開発した。なお、今回の事業で使用するCMOSアニーリングマシンは、これらとは別に新たに開発したものとなる。

 サービスでは、初心者でもアニーリングマシンを使いやすいよう、豊富なチュートリアルを揃えたほか、アニーリングマシンの利用シーンを分かりやすく体感してもらうためのデモプログラムも同時に公開。さらに、ソフトウェア技術者育成に向けて、さまざまな問題のプログラムを開発することが可能なWeb APIの提供も予定する。

 日立ではサービスを通じて、アニーリングマシンの普及と関連技術者育成の加速を図るとともに、利用者の使い方などのフィードバックを得ることで課題を抽出し、今後の研究開発に生かすことで、アニーリングマシンの性能向上につなげるとしている。