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量子コンピューティング関連技術で勤務シフト作成時間を半減――、KDDIエボルバ、KDDI、日立の3社が実証実験

 株式会社KDDIエボルバ、KDDI株式会社、株式会社日立製作所(以下、日立)の3社は26日、量子コンピューティング関連技術を活用し、auのメッセージサポート業務を担うコンタクトセンタースタッフの勤務シフトを自動作成し、2022年7月に実勤務へ適用する実証を行ったと発表した。

 この実証により、管理者がシフト作成にかける時間を5割超短縮できることを確認したという。

本実証のイメージ

 コンタクトセンターを中心にBPO事業を展開するKDDIエボルバは、従来、勤務シフトを作成する専門の管理者が、勤務希望やスキル平準化など、20個以上の勤務条件をもとに人手で勤務シフトを作成していたという。しかし、日ごと・時間帯ごと・スキルごとに必要なスタッフ数を満たすなど、諸条件を考慮する必要があり、熟練した管理者でも、約100名のスタッフの勤務シフト作成に11時間以上を要していたとのこと。

 また、一般的な勤務シフト作成ツールを利用した場合、必要人員数の調整は可能なものの、勤務条件を十分に満たせずに人手による修正が発生するため、全体工数が増えてしまう点が課題で、このツールを用いて100名規模のシフトを作成すると20時間(修正作業やスタッフとの調整を含む)を要してしまったという。別の側面としては、特定スタッフの勤務時間帯に偏りが出るシフトが生成されてしまうことから、不公平感からスタッフの理解が得られない点も問題となっていた。

 一方でKDDIは、KDDI総合研究所の協力のもと、量子コンピューティング関連技術を用いて勤務シフトを作成するための計算手法を研究している。また日立は、量子コンピューティングを模した日立独自の計算技術「CMOSアニーリング」を用いた「勤務シフト最適化ソリューション」を提供しており、両社では量子コンピューティング関連技術に関する知見を共有し、実勤務に適用可能なレベルを確保するため実証内容について議論・協創してきた経緯があるとのこと。

 今回はこうした3社が集まり、KDDIエボルバの持つ課題解消に向け、量子コンピューティング関連技術を用いて、勤務シフトを自動作成する実証実験を行った。具体的には、KDDIエボルバの北海道地区事業所に勤務する、約100名のスタッフの1カ月分の勤務シフトを作成したところ、勤務条件に関するデータの準備やスタッフとの最終調整も含め、約5時間で作成を完了できたという。

 また本実証では、量子コンピューティング関連技術によって、シフト作成にかかる工数削減だけではなく、特定スタッフに偏りの出ない勤務シフト作成が可能になったとのことで、実際の勤務への適用後に実施した調査では、9割以上のスタッフが勤務シフトの自動作成に肯定的な回答をしているとした。

 なお3社では今後も、量子コンピューティング関連技術を使った勤務シフト作成の実導入を目指して取り組みを進め、2023年度以降の実用化を目指すとしている。