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日立、小数などの連続変数に対応したCMOSアニーリング技術「relaxed MA」を開発
2024年6月6日 15:15
株式会社日立製作所(以下、日立)は6日、大規模で複雑な社会課題解決の鍵となる技術として、従来の2値の変数(1または0)に加え、連続変数(0から1の間の任意の小数)を用いた最適化計算が可能なCMOSアニーリング技術「relaxed MA」を開発したと発表した。連続変数を活用することで、より大規模な組み合わせ最適化問題を、高精度に解くことが可能となる。
日立は2015年に、最適化問題に特化することで高速な計算を可能とする、CMOSアニーリングと呼ばれるコンピューティング技術を開発した。さらに2019年には、GPUを用いた並列計算により、10万変数の全結合問題を高速に計算可能なアルゴリズム「モメンタム・アニーリング(MA)」を開発し、2022年から「CMOSアニーリング クラウドサービス」として提供している。
モメンタム・アニーリングでは、組み合わせ最適化問題を解くための変数として、例えば最適化したい対象を「選択する」か「選択しない」を表すために、2値(1または0)変数が用いられてきた。しかし、この方法では、1または0だけでは表現できない小数(割合)を最適化する場合に、複数の2値変数を組み合わせた計算が必要となるため、顧客が必要な小数の桁数(精度)に応じて、使用する2値変数の数が増大する課題があった。
例えば、金融商品のポートフォリオ最適化において、さまざまな契約の保有割合を有効数字3桁の小数で表現するためには、契約数の約10倍の2値変数が必要となる。このため、計算の有効桁数を増やすと契約数が限られてしまい、契約数を増やすと計算の有効桁数が限られてしまうため、大規模なポートフォリオを高精度に最適化することは困難だった。
こうした課題に対し、日立では小数など連続変数にも対応可能なCMOSアニーリングのアルゴリズムを開発し、さらに、GPUを用いた並列計算により高速に最適化計算を行うrelaxed MAを開発した。
これにより、金融商品のポートフォリオ最適化において、一つの契約の保有割合を一つの連続変数で表現できるようになる。大規模災害における複合した災害要因に対応するため、数多くの保険契約を対象とする再保険ポートフォリオの最適化問題を、高速かつ高精度で解くことが可能となった。
日立では、大規模災害を想定した複合的な災害要因に対応する再保険ポートフォリオの最適化業務に、同技術を適用して効果を検証した。その結果、従来比約10倍の数の保険契約に対して、期待される収益金額を1円刻みの細かな精度でポートフォリオ計算ができることを確認したという。
日立は今後、再保険ポートフォリオ設計業務に加え、需給バランスを考慮した電力網の運用効率化、Eコマースにおける販売促進施策の最適化、物流計画作成業務の効率向上などに技術を活用することで、顧客や社会のさまざまな課題の解決に貢献するとしている。また、成果の一部は、6月10~14日に英国グラスゴーで開催される「Adiabatic Quantum Computing(AQC)2024」で発表予定。