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日立、疑似量子コンピューター「CMOSアニーリング」をクラウドサービスとして提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は3日、さまざまな大規模組み合わせ最適化問題を高速に解くことができる日立の「CMOSアニーリング」を、新たにクラウドサービスとして提供開始すると発表した。価格は個別見積もり。

 CMOSアニーリングは、量子コンピューターの一種である量子アニーリングの仕組みを半導体上で疑似的に再現し、手軽に扱える利便性を有しながら、量子コンピューターのように膨大かつ複雑なパターンから最適解を探索する独自のコンピューター技術。

サービスの概要図

 サービスでは、CMOSアニーリングの利用に必要となる、ハードウェアからソフトウェア、アプリケーションまでを搭載したプラットフォームを、月額制のクラウドサービスとして提供する。開発環境やアプリケーションの構築・保守が不要となるため、導入期間・コストを大幅に削減できるほか、イジングモデルといった高度な量子技術に関する物理・数学的な専門知識や、最適解を得るための数式のチューニングなどの技術がなくとも手早く利用できる。

 また、サービスでは、エンタープライズKubernetesプラットフォームの「Red Hat OpenShift」を採用し、クラウドネイティブなシステムの導入を支援することで、プラットフォーム内のリソースをより柔軟かつセキュリティ重視の機能で最適化できる。

 サービスには、金融や製造、物流、交通などさまざまな業種で活用できるアプリケーション群を搭載する。Webブラウザーからアプリケーションを選択し、必要項目を入力するだけで、CMOSアニーリングが計算した最適解を得られる。各アプリケーションは、これまでの実証実験や実導入で培った日立のノウハウをもとに、各業種・業務で共通的なケースをあらかじめ取り込み設計しているため、迅速な導入や手軽な活用が可能。必要に応じて、各企業特有の項目を個別カスタマイズして開発することもできる。

 日立では、金融のポートフォリオ最適化や勤務シフト最適化のアプリケーションからスタートし、今後も、継続的に顧客との協創や実証を重ね、アプリケーションのラインアップを拡充していくとしている。

 また、サービスでは日立が、業務・技術面の双方から実業務の課題解決を支援する。業務に精通した日立の営業・SEと、CMOSアニーリング専門チームが連携し、課題の数式化やCMOSアニーリングへの実装などを行う。個別開発がある場合でも、日立がシームレスにサポートするため、数学的な専門知識や技術は不要で利用できる。

 日立では今後、在庫管理や渋滞解消など、サービスで提供する業務アプリケーション群の拡充に向けて、自社での開発やパートナーとの協創を進めていくと説明。量子技術やAIなどデジタル技術を活用したLumadaソリューションを拡充し、業務改善や収益向上など顧客のDXに貢献するとしている。