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IBM Cloud、9月までに大阪リージョンを開設 年内には「IBM Cloud Satellite」「Power on IBM Cloud」のサービス提供を開始へ

 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は27日、IBM Cloudの最新の機能拡張および、今後のサービス提供ロードマップに関するメディア向け説明会をオンラインで開催した。

 また本説明会において、2020年第3四半期(2020年7~9月期)までに国内2拠点目となる大阪リージョンを開設するとともに、10月には現在ベータ提供中の分散型クラウド「IBM Cloud Satellite」の正式なサービス提供を、12月までには「Power Systems Virtual Server」の国内提供を開始することを明らかにした。

国内2拠点目となる大阪リージョンを開設へ

 大阪リージョンは、東京リージョンと同じく複数のゾーンで構成された「アベイラビリティゾーン(AZ)」。アクセスポイント数は、東京リージョンが2つあるのに対し、大阪リージョンは1カ所となる予定だ。

 IBM Cloudテクニカル・セールス部長 シニア・アーキテクト 安田智有氏は、「大阪リージョンは東京リージョンと同じ規模で構成されており、サブリージョンではなくメインリージョンとして利用できる。アクセスポイントは1カ所を予定しているが、機器等は冗長構成になっている。利用するお客さまが増えればアクセスポイントも増やしていく。東京リージョンも最初は1カ所だった」と説明した。

 また、大阪リージョン開設に至った経緯についてIBM Cloud Platform事業部 事業部長 田口光一氏は、「金融業界および官公庁のお客さまから、国内にDR(Disaster Recovery:災害復旧)の拠点が欲しいという要望が多く寄せられていた。大阪リージョンはプライマリーとして利用できるサイトだが、DRとしてのニーズは高い」と説明した。

 東京と大阪のリージョン同士の通信はもちろん、ほかのIBM Cloud拠点との通信についても無料であるため、海外に拠点を持つ企業には大きなメリットとなる。なお、大阪リージョン以外にも、ブラジル、フランス、カナダにも新たな拠点が開設予定となっている。

2020年第3四半期に、国内2拠点目となる大阪リージョンが開設

「IBM Cloud Satellite」や「Power Systems Virtual Server」も提供

 IBM Cloud Satelliteは、IBM Cloudで提供されているマネージドサービスをオンプレミス、他社パブリッククラウド、エッジなどでも稼働できる分散型クラウドのサービスだ。それぞれの環境においてRed Hat Enterprise Linux(RHEL)上でOpenShiftが稼働する環境を構築すれば、IBM Cloudのサービスをコンテナとして実行できるようになる。

 コンプライアンスなどの都合でオンプレミスからデータは動かせないが、マネージド・データベースや分析環境を利用したい、データが生成されるエッジ環境ですぐにデータ処理を実行したいといったユースケースを想定したサービスとなっている。安田氏は「RHELとOpenShiftが稼働する環境さえあれば、お客さまのアプリケーションとIBM Cloudの各種サービスを一気通貫に横ぐしで管理したりデプロイしたりできる。ほかの分散型クラウドサービスと比較しても導入しやすいという特長がある」と説明した。

2020年10月に正式サービスが提供開始となる「IBM Cloud Satellite」

 Power Systems Virtual Serverは、IBMの強みでもある「Power Architecture」ベースの仮想サーバーを利用できるサービスだ。すでにグローバルでは提供されており、IBM Cloudの「コンピュート」サービスカタログ画面からAIX(7.1、7.2)とIBM i (7.2、 7.3、7.4)が利用できる「Power Systems Virtual Server」およびzLinuxの「Hyper Protect Virtual Server」の仮想サーバーが選択できるようになっている。これらのコンピュートサービスについて、2020年11月には東京リージョンからの提供が開始し、次いで12月には大阪リージョンでも提供が開始される予定となっているという。

 安田氏は「クラウドでもPower Architectureを使いたいというお問い合わせが非常に多く寄せられている」と述べ、参考価格として 0.5コア CPU、8GB RAM、50GB ストレージ、OSはAIXで月額1万5000円からと非常にリーズナブルな設定であることをアピールした。

 さらに2021年には、東京リージョンからLinux専用サーバー「IBM LinuxONE」のクラウド版が利用できるようになる。Ubuntu、Red Hat Enterprise Linux、SUSE Linuxが利用可能。LinuxONEの参考価格も、1vCPU、4GB RAM、100GB ストレージ、Ubuntuで月額1万9000円からとなっており、非常にリーズナブルな設定になっている。

AIX、IBMi、zLinuxを利用できる「Power Systems Virtual Server」

第2世代アーキテクチャの展開について紹介

 このほか本説明会では、2020年上半期のIBM Cloudにおける機能やサービスの強化、取り組みについても紹介している。前述したリージョンの追加、IBM Cloud Satellite、Power Architectureの提供のほか、第2世代アーキテクチャの順次展開についても紹介している。

 田口氏は「Enterprise Grade」「Secure&Compliant」「Cloud Services Anywhere」をIBM Cloudの3つの強みであるとし、この強みを軸にIBM Cloudの機能拡張を説明する。「Enterprise Gradeでは、企業が持つ主要ワークロードのリフト&シフトを実現する。ある調査では、クラウドに移行済みのワークロードは20%にとどまっている。残り80%をクラウド化するにあたり、モダナイゼーションあるいはマイグレーションの環境を提供する。Secure & Compliantでは、ミッションクリティカルなワークロードをクラウドに移行するにあたり懸念事項となるセキュリティやコンプライアンスへの対応。FIPS 140-2 Level4など業界最高水準のセキュリティ機能を提供し、国際標準だけではなくFISCやISMAPなど業界標準のコンプライアンスにも準拠する。Cloud Services Anywhereは、オープンで一環した分散クラウド基盤を提供する」(田口氏)

IBM Cloudの3つの強み「Enterprise Grade」「Secure&Compliant」「Cloud Services Anywhere」
IBM Cloudの代表的な機能拡張

 IBM Cloudの「第2世代アーキテクチャ」について安田氏は、「SoftLayerのアーキテクチャを踏襲した既存のクラウド環境を第1世代に対し、2019年から提供を開始したIBM独自のアーキテクチャに基づくサービスが第2世代」と説明。また、第1世代ではx86の仮想サーバー・物理サーバーしか利用できなかったが、第2世代ではPower Architectureのコンピュートも利用可能となっていることや、複数のIBM Cloudだけではなく、オンプレミス、エッジ、あるいは他社パブリッククラウドも管理対象にできることなどが特徴となっている。

IBM Cloud アーキテクチャの変遷
第1世代と第2世代の比較