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“現場で立って働くフィールドワーカー”に最適化した――、L is Bがチャットツール「direct」の強みを説明

建設業、小売業を中心にシェアを拡大

 株式会社L is B(エルイズビー)は5月27日、「建設現場の ICT および DX の現状について」と題し、主に建設現場で利用されているビジネスチャットツール「direct」を中心に、自社の製品を紹介する説明会をオンラインで開催した。

 L is B 代表取締役 CEOである横井太輔氏は、「建設業は日本経済の要。コロナ禍でも建設現場のほとんどは止まることなく稼働しており、経済復活の推進力としても期待されている」と述べる一方で、「建設業会は人材不足と高齢化が加速している業界。55歳以上の就労者が3割を超え、29歳以下は1割程度しかいない。高齢化による大量離職は避けられない」という建設業界の課題を説明した。

L is B 代表取締役 CEOの横井太輔氏

ビジネスチャットで建設現場の情報共有を促進

 建設業界における最優先事項は「安全性」であり、これまでICTによる効率化や生産性の向上はそれほど優先順位は高くなかった。しかし高齢化による人材不足の深刻化や社会課題である「働き方改革」の影響を受け、ICTを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが始まっている。そこでL is Bでも、現場で働くフィールドワーカーと、オフィスワーカーをつなぐビジネスチャットツールとしてdirectを提供し、建設業界をはじめ、小売業や公共の分野でシェアを拡大しているという。

 コミュニケーションプラットフォームとしてビジネスチャットの利用は定着しつつあるが、すでにslack、Chatwork、Microsoft Teams、LINE WORKSなど多くのチャットツールが市場に出回っている。「ほかのツールと何が違うのかと質問されることも多い。directは『現場で立って働くフィールドワーカー』に最適化したポジショニングになっている」と横井氏は説明する。

フィールドワーカーに最適化されたチャットツールの「direct」

 日本の全労働人口である6500万人のうち、directがターゲットとしているフィールドワーカーのいる業種は、建設業(8%、500万人)、卸売・小売業(16%、1000万人)、宿泊・飲食サービス業(6%、400万人)、医療・福祉(13%、800万人)となり、合計すると43%にあたる2700万人となるが、多くのビジネスチャットツールは、オフィスで座って仕事をするオフィスワーカー向けの製品であるという。

日本企業の43%にフィールドワーカーがいる

 directの特徴として横井氏は「教育コストがいらない。LINEが使えれば誰でも使える操作性を実現しており、導入後すぐに使えて定着する。情シスから見れば非常に手離れの良いツールで、稼働率も高い。ビジネス向けのチャットツールであるため、協力会社など外部の人とも安全につながることができる」と説明する。

 コンシューマ向けに圧倒的なシェアを持つLINEの操作性に近いUXを実現することで、教育コストを大幅に低減する一方、ビジネス向けツールであることから、アクセス制御を含むアカウント管理機能や組織管理機能、あるいはゲストモードによる社外メンバーと1対1または1対nでつながる機能などが実現されている。

 また、directにはオンプレミス版も用意されているため、情報統制のためにクラウド化できない環境でも利用できるという。

 2014年から提供を開始したdirectは、昨年の12月の時点で2,000社を超える企業に導入されており、今年4月の有効ID数は20万超、ユーザー数の増加率は年平均で224%と順調に推移している。また、導入企業の内訳は小売業30%、建設業21%と、特にフィールドワーカーの多い2業種が過半数を占める。

direct導入企業のうち、建設業および小売業の2業種が過半数を占める

 建設業界においてdirectがどのように利用されるかについては、具体的な事例を紹介している。竹中工務店では、すべての現場にdirectを導入。チャットだけでなく、現場で撮影した写真に具体的なコメントをつけて共有したり、写真に直接文字や印を書き込んで具体的な指示を出したり、といった活用をしている。

 建設業界に若い人材不足しがちな理由の1つとして、「休日が少ない」ということが挙げられており、業界全体で週休2日達成に向けた取り組みを実施している。国土交通省でも働き方改革の一環として、「週休2日達成に向けた取り組みの好事例集」を公開しており、その中でdirectによるコミュニケーションの効率化も紹介されているという。

 竹中工務店の一現場では、メールがチャットに置き換わったことで15分減、指示書の共有を印刷物や撮影場所への投影から写真共有に切り替えたことで4分減(投影との比較)、電話による現場での情報連絡をチャットで済ませることで6分減と、1人1日あたり25分の時間短縮を実現しているとのこと。

 「たった25分かと感じるかもしれないが、仮に1000人のフィールドワーカーがいれば2万5000分、1日8時間労働であれば52日分に相当する。建設業界でも週休2日を達成するには、こうした取り組みを積み重ねていくことが重要」(横井氏)。

竹中工務店では、direct導入により1人あたり1日25分の時間短縮を実現

 大林組でも現場でdirectを活用し、施工状況の写真などを共有している。気になったことはグループトークで共有することで、わざわざ集まらなくても、現場ですぐに話し合うことができるようになっている。また、directは、すべての投稿の未読者/既読者がわかるようになっているため、共有した情報の浸透度を把握しやすいというメリットもある。

directをハブにして、建設現場におけるDXを推進

 さらに横井氏は、directによる建設現場のDXの取り組み事例として、「現場のリスクアセスメント」「設計図面のリアルタイム共有」「作業現場のデジタルサイネージ」の3つを紹介した。

現場のリスクアセスメント

 現場のリスクマネジメントの事例としては、工事開始前に現場を確認して事故リスクのある危険個所をリストアップした「リスクアセスメントシート」の共有を紹介した。手書きの紙ベースで運用している現場が多く、その内容も煩雑で、提出がおざなりになりがちであるという。そこでL is Bでは、シムトップス社の現場帳票のペーパレスソリューション「ConMas i-Reporter」とdirectを連携させることで、リスクアセスメントシートなどの現場帳票管理の課題を解決している。

 製造業や建設業での導入事例の多いi-Reporterは、iPad、iPhone、WindowsタブレットからExcel帳票を編集する機能を持つ。i-Reporterでリスクアセスメントシートを共有し、現場にいる作業者がリスクアセスメントシートに記入すると、工事を管理する担当者のdirectにプッシュ通知と文書へのリンクが送信される。管理担当者はこのリンクからi-Reporterを起動して内容を確認することができる仕組みになっている。

 「i-Reporterを起動しなくてもdirectに情報が集約されることで、帳票の提出・未提出を管理できる」(横井氏)

リスクアセスメントシートなどの現場帳票をi-Reporterと連携して管理し、共有漏れや提出漏れを防ぐ
設計図面のリアルタイム共有

 建設現場では、設計図面も紙ベースで管理されているケースもまだ多く、かさばる図面を持ち歩く労力に加え、紛失や盗難による情報漏えいリスクを抱えている。また、設計に変更が発生した場合、図面を新たに印刷して共有するのだが、最新の図面がどれかわからなくなるなどの問題も発生することがある。

 もちろん設計図面のデジタル化に取り組む企業は多く、さまざまな製品が市場にリリースされているが、directは多くのゼネコンに支持されているレゴリス社の設計図面のデジタル化・共有システム「SPIDERPLUS」とシームレスに連携している。SPIDERPLUSで図面を変更した際、「サーバー登録後にdirectメッセージを送信」のボタンをクリックすれば、選択したdirectのユーザーに図面へのリンク付きメッセージが表示される仕組みだ。

 「これまで図面に変更が発生するごとに、現場で全員を集めて情報共有をしなければならなかった。しかし、この仕組みがあれば離れた場所にいても、directで図面が更新されたことがリアルタイム共有できるため、工事の手戻りが減り生産性が向上された」(横井氏)。

SPIDERPLUSと連携し、離れた場所にいる作業員とも設計図面の変更をリアルタイムで共有可能
デジタルサイネージ

 大きな工事の現場では、1つの現場に協力会社が50社~100社がかかわっているという。しかも、工期によって現場に出入りする協力会社や作業者が異なることから、すべての工事関係者に必要事項を伝達したり、注意喚起を促したりするための仕組みが必要になる。L is Bでは、この伝達の仕組みをデジタルサイネージで解決するという。

 「direct、サイネージボット、NTT西日本が開発した「光BOX+」、HDMIケーブル、サイネージを表示するモニターがあれば実現できるため、街頭などに設置されるような高価なサイネージシステムなどに比べると、手軽に導入できる」(横井氏)。

 デジタルサイネージのシステムフローは、非常にシンプルだ。(1)directから「サイネージボット」にコンテンツを送信する。(2)directからコンテンツを受け取ったサイネージボットは、コンテンツをサイネージ用に加工して、光BOX+に送信する。(3)光BOX+はHDMIで接続されているモニターに、受け取ったコンテンツを表示する。

手軽に始められるデジタルサイネージで、工事現場の一斉情報伝達を実現

 これらのツールのほかにも、dropboxなどdirectはさまざまなツールと連携することができるようになっている。directというコミュニケーションプラットフォームをハブにして、今後も多くのツールと連携することで、現場の情報共有を促進していくという。

 横井氏は「directを使っているお客さまから『こんなツールを使っているんだけどうまく連携できないか』といった相談を受けると、優先してそのツールを提供しているベンダーと協力して開発を進めている。お客さまの課題を解決し、その結果として当社の製品の機能が充実している」と説明した。

企業のDXを推進するL is Bの提供サービス

 L is Bでは、direct以外にも企業の働き方改革やDXを推進するためのサービスを提供している。

 長時間労働を是正する「direct Smart Working Solution」では、通常の勤務時間が終了すると自動的にPCをロックする仕組みを提供している。ロックを解除するには、残業を申請して承認される必要がある。横井氏は「残業を禁止するのではなく、残業を見える化して実態を把握し、改善するためのソリューション。従業員一人一人が仕事のやり方を見つめなおし、上手に時間を使うことが働き方改革」と説明する。

 コンタクトセンターソリューション「direct Contactcenter Solution」は、directとチャットボットを組み合わせ、コンタクトセンターの受付自動化を実現するソリューションだ。コンタクトセンターの課題は受付時間の長さにあると言われており、受付を自動化することでオペレーターの工数を削減する。また、受付をチャットボットにすることで、「言い間違い」や「聞き間違い」による手戻りをなくし、記録として残すことができる。

 direct Contactcenter Solutionは、JR西日本の遺失物受付システムでも導入されており、鉄道業界初の24時間遺失物受付システムを実現している。

 FAQソリューションの「AI FAQ ボット」は、質問と回答を入力したデータを用意するだけで、AIがFAQを作成してくれるソリューションだ。AI-FAQボットのAIは、L is Bが開発したオリジナルのAIで、話し言葉のような自然文を理解し、言葉を自動学習する。

 開発のきっかけは、「他部署からの問い合わせが多く、本来の業務ができなくて困っている」という顧客からの相談で、自然言語による問い合わせや、ほかのソリューションでは見られないExcelでの管理機能を搭載したAI FAQ ボットを開発したという。

 なおL is Bには、ATOKや一太郎などで知られるジャストシステム出身の従業員が多く、日本語の自然言語処理に長けた人材も多く在籍している。そのため、チャットによるコミュニケーションプラットフォーム、チャットボット、AIは得意分野であるという。

 今回は建設業界を中心とした事例紹介となっているが、directをはじめとする同社のソリューションは、小売業や公共でも多くの導入実績を持っている。特に自治体での導入が堅調な伸びを示しており、すでに200を超える自治体がdirectの自治体向けOEM製品の体験版を導入しており、実証実験を開始しているとのことだ。