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ピュア・ストレージ、米国で開催された年次カンファレンスでの発表を一挙紹介
パブリッククラウドでのストレージサービスや、QLCによる低価格ストレージなど
2019年10月9日 06:00
エンタープライズ向けオールフラッシュストレージのベンダーであるピュア・ストレージ・ジャパン株式会社(以下、ピュア・ストレージ)は8日、新製品発表会を開催。米国で9月に開催された米Pure Storageの年次カンファレンス「Pure//Accelerate 2019」で発表された製品やサービスを国内で発表した。
具体的な内容としては、パブリッククラウドでのストレージサービスや、QLCによる低価格ストレージ、Intel Optaneメモリーによるキャッシュ、サブスクリプション型の提供形態などが発表された。
オールフラッシュのストレージアレイを主力とする同社だが、クラウドやソフトウェア、サービスにも注力する姿勢が見えた。
「ストレージアレイの再発明」から「サービスとしてのストレージの再発明」へ
製品の発表に先立ち、米Pure Storage 戦略部門副社長のマット・キックスモーラー氏が、同社の方向性について語った。
Pure Storageは今年で創業10年。「過去10年はオールフラッシュストレージによるストレージアレイの再発明をしてきた。しかし、目的はストレージ革新であり、フラッシュはそのとっかかりにすぎない。これからの10年はサービスとしてのストレージの再発明をする」とキックスモーラー氏は語った。
ここで氏が掲げた言葉が「Modern Data Experience」。優れたストレージアレイだけでは不十分で、ストレージのエクスペリエンスが重要という意味だ。
一方に人やアプリケーションなどのデータの消費者がいて、もう一方にデータのあるデータインフラがある。その両者を、PurityソフトウェアとPure1管理スイートで、ソフトウェアを中心とした形でつなぐという。そしてデータの提供をサービスとし、機器でもクラウドでも同じように使えて保護される。データ量が増え続けるのに対してAIを用いて管理する。こうしたデータエクスペリエンスをPure Storageが提供していくとキックスモーラー氏は語った。
AWS用ブロックストレージ「Cloud Block Store for AWS」
さて、最初の発表は、パブリッククラウド向けのストレージサービスだ。
Amazon Web Services(AWS)向けには「Cloud Block Store(CBS) for AWS」を発表した。Amazon EC2から使える、Amazon EBS(Elastic Block Store)と似たような使い方のブロックストレージだ。これまでベータ版として提供してきて、今回GA(正式版)となった。
CBSは、100%ソフトウェアとしてAWS上で動きつつ、コントロールソフトウェアはオンプレミスのFlashArray製品と同じ。これにより、オンプレミスとクラウドとでオペレーションやAPIなどが一貫したものとなる。なお、バックエンドでAmazon S3に保存することもできる。
Amazon EBSとの違いについては「高い信頼性を目指している」とキックスモーラー氏は説明した。具体的には、可用性やスナップショット、レプリケーションの機能によりデータの保護を強化。重複排除や圧縮、暗号化なども提供する。
CBSのベータ版ユーザーの利用事例についてもキックスモーラー氏は紹介した。最も好評だったのが、クラウドとの双方向データ移行と、クラウドへのディザスタリカバリ(DR)の2つのユースケースだったという。
スナップショットをAzureに保存する「CloudSnap for Azure」
もう1つのパブリッククラウド向けのサービスが、Microsoft Azureを利用する「CloudSnap for Azure」だ。これはデータ保護ソリューションで、FlashArray製品からデータバックアップのためのスナップショットをクラウドに保存するものとなる。従来「CloudSnap for AWS」が提供されていたが、それに続いてAzure版がGAとなった。
CBSやCloudSnapなどのクラウドへの取り組みについてキックスモーラー氏は「お客さまは、100%オンプレミスも100%クラウドも嫌がり、ハイブリッドクラウドを求めている」と語った。
ストレージからVMまで分析する「Pure1 VM Analytics」
こうしたクラウドへの取り組みはPure Storageのソフトウェアへの注力を示すものだ。そうしたソフトウェアの中でもキックスモーラー氏は、データストレージの管理や分析のための「Pure1」を「重要な資産」だと語った。特に予測分析のためのAIエンジンである「Pure1 Meta」が、これまで顧客のワークロードをもとに学習し続けてどんどん賢くなっているという。
こうした予測分析を含むPure1の製品として「Pure1 VM Analytics Pro」も発表された。昨年発表された「Pure1 VM Analytics」がベースとなった製品で、ストレージアレイだけでなくVMレベルの異常なども収集し、相関から問題を分析できるようになった。
Optaneをストレージキャッシュにする「DirectMemory」
ストレージ製品であるFlashArrayファミリーでは、従来製品よりハイエンドとローエンドでの新技術を用いた製品がそれぞれ発表された。
ハイエンドにあたるのが、メモリーとSSDの間ともいえるIntelのOptaneメモリー技術を搭載した「DirectMemory」だ。既存のFlashArray//X70とFlashArray//X90のスロットに挿すだけで、ストレージキャッシュとして利用できる。
Pure Storageでは、DirectMemoryによりアプリケーションを2倍高速化し、レイテンシーを50%削減できるとしている。より具体的には、Pure1 MetaでFlashArray//X70とFlashArray//X90のグルーバルな顧客のデータを分析した結果として、40%の顧客のユースケースで、30~50%のレイテンシーを低減可能というデータをキックスモーラー氏は示した。
価格としては、構成や容量にもよるが「FlashArray//XにDirectMemoryを追加すると、価格が15~20%程度アップするというのがひとつの目安」とキックスモーラー氏は説明した。
【お詫びと訂正】
- 初出時、DirectMemory追加時の価格目安に関して、「40~50%程度アップ」としておりましたが、正しくは「15~20%程度アップ」です。お詫びして訂正いたします。
QLCフラッシュで容量単価を下げた「FlashArray//C」
もう一方のローエンドの製品は、1つのメモリセルに4ビットを記憶する「QLC(Quad Level Cell)」のフラッシュを採用した「FlashArray//C」だ。これにより、従来の「FlashArray//X」より低価格にオールフラッシュストレージを利用できる。キックスモーラー氏によると、「FlashArray//Xに比べて30~40%安くなるのがゴール」だという。
QLCは一般に、TLCやMLCに比べて容量単価を下げられるが、信頼性や遅延で劣る面があった。これに対してPure Storageでは、FlashArray//Xシリーズ以降、SSDではなく生のフラッシュを直接扱うDirectFlash技術を採用してきたことをふまえ、QLC向けにチューンして信頼性や遅延の問題をある程度カバーしたという。
FlashArray//Cは、最小構成で実効容量1.3PBから、最大構成で実効容量5.2PBまで対応する。
Pure StorageではFlashArray//Cを、FlashArray//Xの対抗ではなく従来のHDDストレージの対抗のような位置づけで考えており、「オールフラッシュなデータセンターを創業以来追求してきたが、それを実現できる」とキックスモーラー氏は語った。
例えば本番環境にFlashArray//Xを使ってテスト環境にFlashArray//Cを使うとか、DR先でFlashArray//Cを使うとかいった例が考えられる。「こうしたことも、FlashArray//XやFlashArray//C、クラウドでソフトウェアが共通であることによるものだ」(キックスモーラー氏)。
全製品をサブスクリプションで利用できる「Pure as-a-Service」
提供形態の面では、「Pure as-a-Service」が発表された。
これまでPure Storageは、「ES2(Evergreen Storage Service)」の名前で、サブスクリプションによる従量課金制のOPEX形式によりPure Storageのデバイスを利用できるサービスを提供してきた。このサービスの範囲を全製品に広げて、ブランド名を変更したのが「Pure as-a-Service」だ。
例えば、前述のクラウド製品なども含まれる。そのため、1つのPure as-a-Serviceサブスクリプションにより、オンプレミスで始めてパブリッククラウドに移行するといった使い方も可能になるという。
FlashBladeが150ブレードまでのスケールアウトに対応
そのほか製品としては、非構造のデータを大容量に保存するのに向いたブレード型のファイル/オブジェクトストレージ製品「FlashBlade」において、150ブレードまでのスケールアウトに対応したことが発表された。1つのネームスペースで約8PBまで対応するという。
FlashBladeは、主にビッグデータ分析やAIに使われており、「どんどん大きくしたいという声が顧客から寄せられており、それに応えた」とキックスモーラー氏は語った。