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三井不動産、SAP S/4HANAなどで基幹系システムをフルクラウド化

基盤にはAzureとSAP HANA Enterprise Cloudを採用

 三井不動産株式会社は11日、基幹系システムの刷新に取り組み、2019年4月に新システムを導入したと発表した。SAP S/4HANAを採用し基幹系システムをフルクラウド化したほか、6月からはiPhone・iPadなどでのモバイル承認機能も追加し、働き方改革を推進しているという。

 三井不動産では2016年9月に、総勢80名による部門横断型の改革プロジェクトチームを立ち上げ、標準化・効率化の観点から業務の本質を議論し、一から業務プロセスの見直しを実施した。

 その中で、これまでは部門ごとに個別最適化されていた業務プロセスの標準化と、独立していた決裁システム/会計システムの統合を実施し、会計機能にSAP S/4HANAを採用したフルクラウドのシステムを構築したという。

 この新システム導入により、全社業務の標準化と効率化、データ多重入力の廃止、ワークフローの電子化などが実現し、年間で約5万8000時間の業務量が削減される見通しとのこと。

 具体的には、従来、部門ごとに異なる業務プロセスによって、契約書類や請求書、経費精算書などの膨大な帳簿書類を、従業員が手入力・紙出力・押印・回覧していた。新システムでは、各種プロジェクトの決裁書・契約書管理、支払い・入金予定がすべてシステム上で一覧化され、部門固有だった管理方法を統一している。

 また今後の事業拡大に対応できるよう、会計システム導入後、初めて抜本的に勘定科目体系を見直し、スリム化を実行している。

 さらに、決裁書に必要な記載項目をあらかじめフォーマット化。相手先、金額、業務期間など、決裁書に記載したデータを、押印申請から、支払い・入金予定、伝票計上などの会計業務まで連動させることで、多重入力を廃止した。これにより、ミスの削減およびチェック時間の短縮を図っている。

 加えて、経費精算にクラウドサービスを活用することで、読み取った領収書や交通系ICカードの内容が自動的に経費データとして連携されるようになり、利用者自身での申請が効率化された。

 このほか、従来は紙に押印して回覧していた決裁も電子化した。各種書類への押印や支払いのワークフローを電子化したことで、年間では約84万枚分の紙資料が不要となる見通し。それに加えて、印刷・郵送・保管コストの削減、書類管理・運用に伴う負荷軽減が期待されている。

 2019年6月からは、iPhone・iPadなどでのモバイル承認も導入した結果、自席でなくても業務が容易となり、働く場所を問わないモバイルワークの促進につながっているとのことだ。

 なお決裁・会計業務を支える基幹系システムは、NTTデータ イントラマートのシステム共通基盤「intra-mart」と、SAP S/4HANAを用いて構築され、経費精算機能としてコンカーの経費精算・経費管理クラウド「Concur Expense」と、クラビスのクラウド記帳サービス「STREAMED」を採用した。

 システム基盤には、Microsoft Azureに加え、SAPのマネージドクラウド基盤「SAP HANA Enterprise Cloud」を利用している。クラウド化によって、運用負荷の軽減やBCP・DRの強化を実現できることから、三井不動産では、ほかの基幹システムを含むすべてのITシステムをクラウドへ移行する計画だ。