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ピュア・ストレージ米本社のジャンカルロCEOが初来日、グローバルおよび日本市場の事業戦略を説明

ニフクラとの提携も発表

 ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社(ピュア・ストレージ)は25日、米本社会長兼CEOのチャーリー・ジャンカルロ氏の初来日と日本法人オフィス移転完了に合わせ、事業戦略発表会を開催した。

 発表会では、グローバルおよび日本市場における今後のビジネス戦略について説明した。また、経済産業省 商務情報政策局 総務課 情報プロジェクト室 室長補佐の吉田泰己氏と、富士通クラウドテクノロジーズ 代表取締役社長の愛川義政氏がゲストスピーカーとして登壇し講演を行った。

写真左から:経済産業省 商務情報政策局 総務課 情報プロジェクト室 室長補佐の吉田泰己氏、米Pure Storage 戦略部門副社長のマット・キックスモーラー氏、米Pure Storage 会長兼CEOのチャーリー・ジャンカルロ氏、ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏、富士通クラウドテクノロジーズ 代表取締役社長の愛川義政氏

 今回初来日となった米Pure Storage 会長兼CEOのチャーリー・ジャンカルロ氏は、「データ管理における将来の展望」をテーマに講演を行った。

 「現在、データの保管場所はHDDが主流になっているが、今後は大容量・省スペース・高信頼のフラッシュメモリへのシフトが加速していくと考えている。将来的には、すべてのハードディスクがフラッシュメモリに置き換わると予測している。一方で、これからのデータ管理には、『共有型の高速データ』、『オンデマンドと自動化への対応』、『ハイブリッドクラウドおよびマルチクラウド対応のデザイン』が求められる」と、データ管理を取り巻く現状と課題を述べた。

米Pure Storage 会長兼CEOのチャーリー・ジャンカルロ氏

 その中で、同社が提供するフラッシュストレージについて、ジャンカルロ氏は、「従来のデータストレージ製品は、システムをアップグレードするためにハードウェアを入れ替え、データを移行するという大変な作業が必要だった。これに対して、当社のフラッシュストレージは、ソフトウェアでの無停止アップグレードによって、常に最新のインフラストラクチャを維持することができる。また、バックアップからの高速リカバリや、グローバルな信頼性とセキュリティ、最新の制御ソフトウェアによる高度な自動化を実現している点も大きな特徴となっている」と、他社にはない多くのメリットがあることを訴えた。

 グローバルのビジネス状況としては、「当社は2019年10月に10周年を迎えるが、現在の顧客企業数は6200社に達し、2020年度の収益は17億ドルを見込んでいる。年間成長率は28%で、これはB2Bの企業として歴代最高レベルの成長率となっている。また、収益の23%を研究開発に投資しており、750以上のソフトウェア特許を持っている。ネットプロモータースコアも業界平均の24%を大きく上回る86.6%を獲得し、B2B企業の上位1%にランクインしている。そして、ガートナーのマジック・クアドラントでは、5年連続ソリッドステートアレイ部門のリーダーに位置づけられている」という。

 日本でのビジネス状況についても触れ、「日本市場に参入して6年目になるが、昨年、日本オフィスの従業員を前年比52%増員し、今回、従来の3倍規模となる新オフィスを開設した。収益についても、前年比73%以上の成長率を達成しており、幅広い業界に多くの顧客とパートナーを持っている」と、好調にビジネスが推移していることをアピールした。

データを効率よく活用し、スピーディに処理できる環境を提供していく

 同社の製品戦略とポートフォリオについては、米Pure Storage 戦略部門副社長のマット・キックスモーラー氏が説明。「企業のデジタル変革に向けて、今後データが中核的な役割を担うことになる。しかし、多くの企業ではさまざまなシステムやアプリケーションにデータが分散・複雑化し、作業効率を低下させているのが実情だ。当社が提供するストレージソリューションは、こうした障壁を排除し、企業のデジタル変革を加速させることをゴールにしている」と述べた。

米Pure Storage 戦略部門副社長のマット・キックスモーラー氏

 「製品ポートフォリオとしては、『簡易性』『効率性』『最新性』をキーワードに、エンタープライズクラスのブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージを展開している。これらの製品を活用することで企業は、『アプリケーションの高速化』『マルチクラウドの構築』『データ保護の近代化』『データハブの構築』『DevOpsの高速化』を実現することが可能となる。この5つのポイントは、デジタル変革を加速させるための重要な要素だ。今後も当社は、あらゆる規模でどの領域でも利用可能な最新のデータセントリックプラットフォームを通じて、データを効率よく活用し、スピーディに処理できる環境を提供していく」との考えを示した。

Pure Storageの製品ポートフォリオ

データマネジメント企業を目指しビジネス領域を拡大

 そして、日本市場における今後の戦略について、ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代では、データをどう活用していくかが企業にとっての死活問題になると考えている。特に日本では、『2025年の崖』という大きな問題を抱えており、年間で最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があるといわれている。これを乗り越えるためには、今からイノベーションに取り組んでいく必要がある。当社では、このイノベーションをリードし、従来のデータ管理/保存にかかわるさまざまな課題からの解放を支援していく」と語った。

ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏

 日本市場でのビジネス拡大に向けた施策としては、東京(東急キャピトルタワー)に新オフィスを開設するとともに、本格的に産業別の組織体制を構築したという。

 「具体的には、クラウド/サービスプロバイダ、ヘルスケア、公共、金融、製造、流通の6つの産業にフォーカスし、産業ごとにデータ・セントリック・アーキテクチャを推進していく。また、現在は東京本社と西日本支店、中部支店の3拠点だが、今後は全国各地に支店を拡大していく」との計画を明らかにした。

 さらに、従来の販売代理店ネットワークに加え、新たにMSP(マネージドサービスプロバイダ)として富士通クラウドテクノロジーズとパートナーシップを結び、パートナー施策も強化している。

 「DX時代に向けて、単なるストレージベンダーではなく、データマネジメント企業を目指し、ビジネス領域を拡大していく」と意欲を見せた。

経済産業省のデジタルガバメントの取り組みと政府の全体動向を説明

 発表会でゲストスピーカーとして登壇した、経済産業省 商務情報政策局 総務課 情報プロジェクト室 室長補佐の吉田泰己氏は、同省のデジタルガバメントの取り組みと政府の全体動向について語った。

 「経済産業省では、昨年7月に『デジタル・トランスフォーメーションオフィス』(DXオフィス)を設置。法人向けの行政手続きのデジタル化にフォーカスし、サービスデザイン思考とアーキテクチャ思考の両立、データドリブンな行政への転換、外部専門人材の採用、Govtechエコシステムの醸成などに取り組んでいる」という。

 そして、この具体的な取り組みとして、「法人デジタルプラットフォーム」や「法人インフォ」を紹介した。

経済産業省 商務情報政策局 総務課 情報プロジェクト室 室長補佐の吉田泰己氏

 政府全体の動きでは、6月9日にIT政策大綱が決定したことを踏まえて、政府のクラウド活用の論点として、「データセキュリティのレベルや用途に応じたクラウドの選択」、「マイグレーションによるコスト・ベネフィット」、「既存IT資産も考慮に入れた全体のシステムアーキテクチャ」、「サービス開発手法の転換、従来IT部門のマインドセット変革、政策立案部門と連携」、「インフラと開発の分離調達、SaaSのサービス契約など、調達・契約の見直し」の5つのポイントを挙げた。

3つの領域から富士通クラウドテクノロジーズの事業・サービスを説明

 また、2人目のゲストスピーカーとして、ピュア・ストレージ・ジャパンの最初のMSPとなった富士通クラウドテクノロジーズ 代表取締役社長の愛川義政氏が登壇。「IaaS/PaaS」「データサイエンス・IoT」「ソリューション」の3つの領域から同社の事業・サービス概要について紹介した。

 「IaaS/PaaS領域では、多様な利用要件に耐えうる高品質なICTインフラソリューションとして『ニフクラ』を提供している。『ニフクラ』は、VMwareベースのインフラ基盤をクラウドで提供するサービスで、国産クラウド最大級となる7000件超の案件で稼働している。この『ニフクラ』にピュア・ストレージの製品を利用しており、『ニフクラ』が提供する高性能・高信頼の一翼を担っている」と説明した。

富士通クラウドテクノロジーズ 代表取締役社長の愛川義政氏

 データサイエンス・IoT領域では、顧客データの「価値化」に必要なタスクについて方針設定から設計、構築、運用までワンストップでフォロー。データサイエンスの「いろは」を1日で習得可能な講座も実施しているという。また、ソリューション領域では、スマートフォンアプリでよく利用される汎用的な機能をクラウドから提供する「mBaaS(mobile backend as a Service)」など、中小企業が抱えるさまざまなビジネス課題を解決するソリューションサービスを提供している。

 今後の展開については、「“One Asia Cloud”構想のもと、グローバルビジネスに挑戦する。アジア各国のパートナーとの協業を積極的に進め、アジア太平洋・日本地域におけるクラウドサービスビジネスの成長を加速していく」との方針を述べた。