インタビュー

われわれはフラッシュストレージとともに成長してきた――、米Pure Storage

 米Pure Storageは、エンタープライズ向けのオールフラッシュストレージ専業ベンダーとして2009年に創業し、以来成長を続けている。主力製品のFlashArrayに加え、最近では大容量データ解析向けスケールアウト型製品のFlashBladeなども販売している。

 このFlashBladeを中心に、Pure Storageのデータとストレージに関する取り組みについて、Pure Storage社Vice President & Chief ArchitectのRobert Lee氏と、ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 代表取締役社長の田中良幸氏に話を聞いた。

Pure Storage社Vice President & Chief ArchitectのRobert Lee氏

応答速度のFlashArrayと帯域幅のFlashBlade

――FlashBladeが登場した背景について教えてください。

Lee氏:
 Pure Storageでは、バックオフィスのビジネスアプリケーションを高速化するための製品として、FlashArrayを2012年に発売しました。FlashArrayの高速さと管理運用のシンプルにより、ストレージへの業界の期待値を劇的に変化させることができました。

 2013年からは新しい製品の開発を開始しました。センサーのようなデバイスから来るデータや、テキスト、画像、音声などの非構造データとその分析の必要性が爆発的に成長していて、コンピュテーション(computation、計算)の強化が必要になってきたのがその背景です。

 全データのうち8割が非構造データ。そのうち、分析されるのは1%で、99%が無駄に収納されているといったデータがあります。そこでわれわれは、データを収納するだけでなく、それをいかにコンピュテーションに速く移せるかを考えました。

 こうして登場したのがFlashBladeです。最近注目されているAIや機械学習でも、GPUなどのデータ処理部分に目が向けられることが多いですが、試行錯誤のイテレーション(iteration)にはストレージのスピードも必要です。

――FlashBladeとFlashArrayは、どのように違うのでしょうか。

Lee氏:
 どちらも高速ですが、必要なパフォーマンスの種類が違います。FlashArrayは従来のアプリケーション向けで、応答速度が重要です。トランザクショナルデータベースの例としてATMを想像すると、小さなデータを高速に返す、といったことが求められているのがわかると思います。

 それに対してFlashBladeは、データ分析のアプリケーション向けで、帯域幅が重要です。両者の違いを例えると、東京から香港まで行くのに、1人なら戦闘機が速いというのがFlashArrayに相当し、多くの人なら旅客機が速いというのがFlashBladeに相当します。

 データのインターフェイスも違います。FlashArrayは既存のアプリケーションに向けて、ブロックデバイスのインターフェイスでアクセスします。SQLデータベースやVMwareなどの用途に向いています。それに対してFlashBladeは、オブジェクトストレージのインターフェイスでアクセスします。これは大量の非構造データを整理する用途に向いています。

 FlashArrayはスケールアップ型アーキテクチャで、FlashBladeはスケールアウト型アーキテクチャであるというのも、パフォーマンスの種類に関係があります。スケールアップ型アーキテクチャでは、より速いコントローラによって応答速度を向上させます。一方でスケールアウト型アーキテクチャでは、各ユニットにコントローラを配置することで、高帯域幅を実現しています。

ソーシャルメディア、F1チーム、ロケット会社、石油・ガス会社の事例

――Pure Storage製品は、実際にデータ分析の分野でどのように使われているのでしょうか。

Lee氏:
 世界で最大級の顧客に、あるソーシャルメディアの会社があります。この会社では、全ユーザーの全データを機械学習にかけて、トレンドを分析したり適切な広告を出したりしています。そのために、特殊なGPUアクセラレーションをかけたコンピュータ群を使っているのですが、データをそこに持っていくためのストレージ待ちの時間がボトルネックになっていました。先ほど話した「1%」の状態ですね。われわれは、この問題を解決できるユニークなポジションにいたわけです。

 データを活用するのは機械学習の分野だけではありません。メルセデスAMG F1チームでは、車体にとりつけたセンサーから得られる、空気の流れやタイヤの温度といったさまざまなデータを、レースの限られた時間の中で分析する必要がありました。われわれの製品を使うことで、同じ時間の中でよりクイックに分析を回して、F1のレース中で最も多くの調整をレースの間にできました。また、多くの都市を渡り歩くので、われわれの機器構成や管理・運用がシンプルなのも好評をいただきました。

 別の事例では、米国の民間ロケットの会社があります。この会社では、ロケット発射の2分前に気球を発射し、天候のさまざまなデータを計測します。その、刻々と入ってくるデータから、リアルタイムにモンテカルロシミュレーションを行っているのですが、データが増えれば増えるほど精度が上がるわけです。そのためのストレージにFlashBladeを採用しました。これだけ最先端の分野にかかわれるのは、私にとってPure Storageでの大きなやりがいです。

――FlashBladeはスケールアウト型ですが、どのぐらいの規模で使われているのでしょうか。

Lee氏:
 ユースケースによって違います。1つのシャーシが4Uサイズに15ブレードまで搭載でき、これで17~18GB/秒を実現します。通常はこれで利用しているところが多いと思います。その一方で、5台で75~80GB/秒を実現している事例もありますし、さらに多く使っている顧客もいます。

 米国の大手石油・ガス開発会社の事例を見てみましょう。採掘はかなりの投資がかかるので、適切な場所を探すのが重要です。そのための分析プラットフォームにFlashBladeが採用されました。この事例では、同じパフォーマンスで20ラックから8ラックに減らすことができました。GPUなどコンピュテーションの性能が上がるにつれて、ストレージがボトルネックになることは、利用企業もNVIDIAもわかってきています。

――反対に、小規模の構成でも使われるのでしょうか。

田中氏:
 大学での研究や、ゲーム開発などでは、スモールスタート構成で始めるケースがあります。スケールアウトできるので、後から構成を増やせます。

ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 代表取締役社長の田中良幸氏

日本でもPure Storageが理解されてきた

――Pure Storageの成長の調子はどうでしょうか。

Lee氏:
 2017年は特別な年でした。1つめは10億ドルの売り上げを達成したこと、これは最も速い成果です。2つめは、レガシーなストレージが伸び悩む中で利益目標を達成し、48%の成長を遂げたことです。

――Pure Storageの最大の競合は、どこでしょうか。

Lee氏:
 われわれは新しいストレージの使い方を提案しています。レガシーなストレージベンダーは競合ではありません。

――大手のストレージベンダーが新しいストレージベンダーを買収する動きもありますが、影響はあるでしょうか。

Lee氏:
 ビジネスにおいて、その影響をほとんど感じていません。われわれの差別要因はハードウェアではなくソフトウェアです。フラッシュストレージには従来とは別のアプローチが必要ですが、レガシーなストレージベンダーは20~30年前のソフトウェアスタックをフラッシュストレージに使っています。それに対し、われわれはフラッシュストレージの成長とともに成長してきた企業です。

――日本市場はいかがでしょうか。

田中氏:
 われわれの活動は5年になり、だいぶ手応えがあります。これまでと概念の違う製品なので、最初はそれを伝えるのが中心でしたが、利用企業が実績を上げることで、最近はだいぶ理解いただけるようになりました。昨年は日本でも特別な年でしたので、今後さらに加速していきたいと思います。

――最後に、読者に伝えたいメッセージをお願いします。

Lee氏:
 日本は戦略的に重要な国です。今回来日したのも、日本の企業に会い、ニーズをくんで製品に反映し、日本の市場を伸ばすためです。われわれは、企業がデータを活用するのをお手伝いします。今後も価値を提供していきたいと思います。

田中氏:
 われわれのグローバルでのテーマは「New World」です。そのとおり、ビジネスの新しい世界を作っていきたいと思います。