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中堅・中小企業に強いブランドイメージを作る――、三村真宗社長が強調するコンカーの新戦略

SMB向けにサービスを強化、パートナーとの協業による新サービスも

 株式会社コンカーは30日、中堅・中小企業(SMB)向けサービス「Concur Expense Standard」において電子帳簿保存法対応を行うとともに、サービス内容を強化すると発表した。これにより、SMB向けビジネスの強化を図る。また新たに、エボラブルアジアおよびボーダーと協業し、出張手配から経費精算に至るまでの統合サービスを提供開始するという。

 コンカーの三村真宗社長は、「コンカーは、これまでは大手企業に強いブランドだったが、今後はSMBに強いブランドイメージを作っていくことになる」とし、「2022年には、売上高では2017年比で19倍に拡大させたい。また、SMB向け売り上げ構成比を46%に、契約件数では全体の85%にまで引き上げる」とした。

コンカーの三村真宗社長
Concur Expense Standardの画面

間接費業務のすべてをカバーしていく

 コンカーでは、大手企業向けにプロフェッショナル版を提供しているが、従業員1000人以下の企業を対象に、機能をシンプル化して導入費用を無償にしたスタンダード版を投入している。

 三村社長は、「これまでSMB向け製品は、Concur Expense Standard、Concur Request Standard、Concur Business Intelligence Standardの3種類だけだったが、2018年度中には、経費精算および請求書管理の申請、精算、アウトソーシング、電子化サービスを提供し、間接費業務のすべてをカバーすることになる」とした。

間接費業務のすべてをカバーしていく

 コンカーの国内におけるSMB向けの事業構成比は、2016年度には4%だったものが2017年度には10%に拡大。2018年度には22%に拡大する見込みである。

 契約金額では、2016年度比で5倍以上に成長しており、さらに契約件数では、全社契約数の52%を占めることになるという。また、1000人以下の企業への累計導入実績は790社以上に達しているとのことで、「SMB向けビジネスは順調だが、さらに弾みをつけたいと考えている」と話す。

国内におけるSMB向けの事業構成比2018年度に22%へ拡大
2年間で5倍以上に成長する見込み
SMBへの導入実績も790社以上に達している

 同社がSMBを対象に実施した「間接業務に関する意識・実態調査」によると、回答企業の7割近くが「経費精算業務の改善が必要」と回答しており、さらに、出張規定の厳格化の必要性を感じるとしたSMBが49%、出張手配の簡素化に必要性を感じるとしたSMBは54%に達している。

 三村社長は、「不正・違反防止のためのプロセスの厳格化と手配の効率化という、相反する課題を抱える企業が多いことがわかった。一方で、SMBでは直接費に関心が高いと感じていたが、直接費のみならず間接費についても課題を持っていることかわかった」としたほか、「業務プロセスの改善の必要性を感じているSMBは69%に達しており、経費精算業務を楽にするだけでなく、多面的な課題意識がある。さらに、請求書支払いの業務プロセスの改善の必要性を感じる企業も67%に達している。加えて、49%の企業が出張プロセスに潜在的な不正リスクがあると回答。54%が出張手配業務に負担を感じると回答していることがわかった」と、現状を説明。

経費精算業務に対する課題

 その上で、「かつての手組みでのシステム開発やパッケージを活用していた時代には、大手企業とSMBでは活用できるものに差があり、我慢して利用しなくてはならなかった。だが、クラウド時代になり、利用するシステムに企業規模の差がなくなり、大手企業に見劣りするシステムを使う時代は終息した。SMB向け製品で妥協せず、全セグメント向け製品を活用する時代に入ってきている。これによって、SMBの業務品質を、大手企業並みに上げていくことができるようになる。手書きやExcel、ワークフローツールから脱却して、大手企業並みの高度なものへと当社が変えていくことになる」との意気込みを示す。

クラウド時代になり、SMBでも大企業と同等のツールを利用可能になってきたという
SMBにおける経費精算業務の進化

 実際に、米国におけるConcurの2017年度実績では、SMBの契約金額の構成比が56%に到達。2018年上期実績では、カナダで83%、豪州で59%、英国で57%がSMBの契約金額構成比となっており、日本での22%という計画には、まだまだ遅れがあるともいえる。

 「日本のSMBが欧米の企業に遅れないよう、最速の普及スピードで、日本のSMBに世界標準のサービスを提供することがコンカーの役割になる」とした。

日本のSMBに世界標準のサービスを提供することがコンカーの役割になるという

コンカーの導入で工数を4分の1に削減

 コンカーの導入事例として登壇した樫山工業は、半導体業界向け真空ポンプでトップシェアを持つSMB。海外事業の拡大にあわせて海外出張が増加したこともあり、これまでは紙ベースで行っていた経費精算などを改善して、経費業務の統合管理と出張経費の効率化、見える化を目指し、2018年5月末からコンカーを導入したという。

 樫山工業 管理本部経営推進部の柳澤一樹氏は、「5月からコンカーを稼働させているが、すでに工数を4分の1に削減できた。航空券の集中手配を行わなくても最適化したコストで航空券を手配できるようになり、社員の手配プロセスも簡素化している。今後は出張手続き工数の8割削減を目指すほか、出張経費の削減にもつなげたい」とした。

樫山工業 管理本部経営推進部の柳澤一樹氏

パートナーとの協業による新サービス

 またSMB向けサービスの強化として、新たなパートナーとの協業を発表。エボラブルアジアおよびボーダーのサービスと、クラウド型経費管理サービスである「Concur Expense Standard」を連携し、出張手配から経費精算に至る統合サービスを新たに提供する。

 エボラブルアジアは、国内航空会社全路線の料金比較サービスを提供する企業。またボーダーは、煩雑な海外出張手配をチャットベースで行うクラウド海外出張手配サービスを提供する企業である。

 今回、2つのサービスとConcur Expense Standardを連携させることで、国内外の出張手配を高度化と、経費精算までを一括で行えるようになり、安価かつ出張者のニーズをとらえた出張が可能になるという。

 料金比較サービスの「エアトリ」を展開するエボラブルアジアの吉村英毅社長は、「現在、国内で約3000社と契約しており、その多くがSMBである。ここには、大きなビジネスチャンスがある。BTM(ビジネストラベルマネジメント)市場は、未成熟であり、SMB向けの競合環境にないというメリットがある。コンカーのSMB向け取り組みを通じて、契約件数を国内1万社にまで拡大したいと考えている。コンカーのビジネストラベルのパートナーとして、今後のBTMのデファクトスタンダードを目指す」と語った。

エボラブルアジア 代表取締役社長の吉村英毅氏

 またボーダーの細谷智規社長は、「2016年9月から事業を開始し、120社の顧客を獲得。前年比4倍強の成長を遂げている。チャットで顧客対応を行うこと、在宅勤務を中心としたクラウド人材で対応していること、個人のチャットのやりとりを一元管理する体制を構築しているのが特徴である。今後、SMBの出張は今後増えていくだろう。今回の協業を通じて、業務渡航に関する申請や手配における課題を解決したい」とした。

ボーダー 代表取締役社長の細谷智規氏

 コンカーでは、今回のSMB向けサービスの強化にあわせて、日本国内において、他社クラウド型経費精算システムから、コンカーに乗り換えるユーザーを対象に、クラウド年間利用費用を最大50%引きで提供するという。

 コンカーの三村社長は、「日本のSMBが、機能が限定されたSMB向けシステムで我慢している状況をなんとかしたい。世界標準のサービスを提供し、大手企業並の業務品質を実現することを手伝いたい。我慢して既存システムを使っているSMB向けを救うためのキャンペーンになる」と位置付けた。

左から、樫山工業の柳澤一樹氏、エボラブルアジアの吉村英毅社長、コンカーの三村真宗社長、ボーダーの細谷智規社長