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日本企業の出張管理が夜明けを迎える――、コンカーの「パーフェクトトリップ・ネットワーク」

JTBビジネストラベルソリューションズとの提携も発表

 株式会社コンカーは10日、日本におけるビジネストラベルマネジメント推進に向けた「パーフェクトトリップ・ネットワーク構想」を発表した。

 コンカーが提供するクラウド出張管理サービス「Concur Travel」を中核としたクラウドサービスに加えて、各種コンテンツサービスとの統合技術である「TripLink」の活用、旅行会社やGDSなどとの「パートナー戦略」、タクシー会社や駐車場サービス会社などの関連企業との連携による「オープンプラットフォーム」の組み合わせにより、出張業務のプロセスとデータを一元化。「欧米に比べて約20年間遅れている日本の企業の出張業務に、変革をもたらすための業務基盤を提供することを目指す」(コンカーの三村真宗社長)という。

パーフェクトトリップ・ネットワーク

 同社では、パーフェクトトリップ・ネットワーク構想に基づいたConcur Travelの導入計画として、海外売上比率が高い大手企業や準大手企業を中心に、2020年までに400社への導入を図る予定であり、「これにより、遅れていた出張管理において、日本の企業が夜明けを迎えることになる」(同)と宣言した。

コンカーの三村真宗社長

さまざまな出張関連の機能を1つのサービスとして利用可能

 パーフェクトトリップ・ネットワークでは、出張前の検索、予約、申請、承認作業のほか、出張中の旅程確認、移動、Wi-Fiレンタルなどの各種サービス利用、リスク管理、支払い業務、出張後の経費精算、承認、支払い、出張分析などを1つのサービスとして利用できる。

出張に関連したクラウドサービス群

 海外出張の際には、Concur Travelを通じて、飛行機や鉄道、ホテルなどを予約。利用者の出張規程に基づいて、利用できる飛行機やホテルなどが表示され、そこから最適なものを選ぶことができる。

 また、国内出張の場合には、旅行会社などの予約サイトを利用することも可能。予約サイトとの連携については、統合技術であるTripLinkを利用する。すでに、じゃらんや出張ナビ、ユナイテッド航空、ルフトハンザ航空、Air B&Bなどが利用できるようになっており、「予約以降の出張業務や処理がそのままConcur Expenseなどと連動するため、いつも利用している外部サイトを、あたかもコンカーの一部のように取り扱うことができる」(コンカーの三村社長)という。

 TripLinkでは、外部サイトと統合するAPI連携に加えて、メール連携機能も持っており、外部サイトで予約した旅程などが記されたメールを解析して、コンカーによる旅程管理に利用できるようにする。メール連携では、日本航空、全日空、JR東海が対応済み。今後、楽天トラベルやJTB、Yahooトラベルなどの予約サイトのほか、航空会社、鉄道会社、ホテル、レンタカー会社など、2017年6月末までに約50サイトに対応する予定だ。

外部予約サイトとコンカーのプロセスを一貫化させる

 予約した内容は、スマートフォンなどでの旅程閲覧が可能なConcur Mobileに加えて、旅程を一元管理することができるTripItを、日本でも新たに提供開始する。TripItでは、Concur Travelによる予約情報、サイトからの予約確認メール、TripLinkと連動した各予約サイトの情報をもとに、旅程を自動生成。さらに、航空会社からのゲート変更や希望シート空き情報などをプッシュで通知したり、代替フライトの検索や旅程の共有、マイレージポイント管理などに利用したり、といったことができる。

 なおTripItは、プッシュ通知機能を持たない無償の英語版をリリースするのに続き、2018年を目標にプッシュ通知機能に対応した英語版を有償でリリース。さらにその後、日本語版を有償で提供するという。

 「英語版でもユーザーインターフェイスだけが英語であり、読み込んだサイトからの旅程情報やメール内容などは日本語で表示される。海外出張をする人であれば、ある程度の英語は理解できると考えており、英語版でも支障は少ないと考えている」。

TripIt
TripItとConcur Mobileの比較

 また、これらの旅程情報をもとに、リスク管理の「Concur Risk Messaging」、経費精算の「Concur Expense」、出張費分析の「Business Intelligence」と連動し、一元的なビジネストラベルマネジメントを実現する。

 「テロや災害などが発生した際にも、その地域に誰が出張しているのかを把握でき、そこに出張している社員に対しても、直感的な操作で、退避指示などをすぐに配信できる。さらに、経費精算も、すでに入力されているコンカーのデータを利用できることから、半日程度かかっていた海外出張の経費精算が、わずか数分で完了するようになる」とした。

 この仕組みを導入したアシックスでは、出張費用が約2割削減できたという。

 三村社長は、「Concur Travelは、国内ですでに11社が導入しているが、業務工数の削減効果よりも、最適化によって出張費用そのものが大幅に削減されるという効果が出ている点が特徴だ」と語る。

JTBビジネストラベルソリューションズと提携

 一方、パートナー戦略では、JTBビジネストラベルソリューションズと提携することを発表した。

 JTBビジネストラベルソリューションズは、コンカーが提供するクラウド出張管理サービス「Concur Travel」の販売から導入までのプロセスをサポートする。

 具体的には、ビジネストラベルマネジメント(BTM)の観点から、導入における各種コンサルティングとサポート、稼働後の発券、精算、トラベルプログラムの最適化などの一連のサービスを提供し、海外出張管理の高度化を支援。コンカーとは、相互の既存顧客に対する法人出張サービスの共同提案を行うという。

 両社では、今後3年間で100社への販売を計画している。

JTBビジネストラベルソリューションズとコンカーの提携

 また両社では、相互の人材交流やトレーニングを通じて、JTBビジネストラベルソリューションズが持つ旅行業界における知見を生かしながら、コンカーのConcur Travelの製品知識に長けた人材を育成し、Concurソリューションを軸としたBTMサービス事業を拡大する考えだ。

 JTBビジネストラベルソリューションズは、JTBが持つ日本固有の市場環境にあわせてサービスやサプライヤーとのネットワークを活用。さらに、英Carlson Wagonlit Travel(カールソン・ワゴンリー・トラベル)が持つ世界標準のBTMサービスを融合するとともに、コンカーが提供するクラウド出張管理サービス「Concur Travel」を組み合わせる。

 JTBビジネストラベルソリューションズの中村一郎取締役は、「日本の企業でもグローバルで通用するマネジメントの導入が急務になっており、それにあわせて、BTMが重視されるようになっている。これは、コストを削減するだけでなく、企業の成長にも寄与することができるものである。BTMサービスを提供することで、国際航空券の発券、ビザ取得などの渡航手続きのサポート、出張時の危機管理、業務の最適化提案、サプライヤーとの交渉などのマネジメントプロセスを、ワンストップを提供できる。今回の協業は当社にとっても重要なものであり、企業にとっても企業の出張管理の高度化を進めることができる。日本企業に対するBTMの理解の浸透と、戦略的なBTM活用を提案したい」と述べた。

JTBビジネストラベルソリューションズの中村一郎取締役
コンカーの三村真宗社長(左)とJTBビジネストラベルソリューションズの中村一郎取締役(右)

 さらにコンカーでは、オープンプラットフォームとして、先ごろ提携を発表したタイムズのレンタカー、駐車場との連携のほか、ぐるなびやオープンテーブルなどの飲食店情報サイト運営会社、海外出張の際に利用されるグローバル対応Wi-Fiルーターの提供会社、全国のタクシー会社やUberとの連携を進めており、出張時のレンタカー利用の予約や精算、取引先との会食の際のレストラン予約や精算なども連動させることができるようになる。

 コンカーでは、2020年までに400社への導入を計画しており、従業員3000人以上かつ海外事業比率が50%以上の企業の50%を占める221社への導入、従業員1000人以上3000人未満で海外事業比率が50%以上の企業の25%にあたる100社への導入、従業員1000人以上で海外事業比率が25%以上の企業の10%にあたる81社への導入を目指すという。

普及計画

 コンカーの三村社長は、「欧米の企業では、出張管理は間接費最適化の最重要テーマであり、出張者も統制された環境で出張するのが当たり前であると考えている。また、高度にIT化された環境で、出張者自身で予約をする仕組みが採用されており、費用対効果の面で高度に最適化されている」という現状を紹介。

 一方で、「日本では、出張費の管理は半ば放置状態となっており、違反や例外が頻発している。また、出張者には、福利厚生的な権利者意識があり、遠くまで出張するので便宜を図ってほしいという考え方もまん延している。結果として、高額な航空券や宿泊料になっていることもある」と述べ、日本の現状があまり良いモノではないという見方を示す。

 そこで、「今回のパーフェクトトリップ・ネットワーク構想を通じた基盤の提供により、人手のサービスに依存した旧態依然の業務を改善することが、日本の企業の出張業務を改善する上での大前提となる。業務基盤を欧米の先進企業並にすることで、出張に対する経営方針の変更や、出張者の意識改革を働きかけたい」と述べた。

出張のあるべき姿と実情
日本企業の出張はなぜ遅れているのか

 なお日本CFO協会の調査によると、63%の企業が国内出張費用において適正化の余地があると回答。海外出張では73%の企業が適正化の余地があると回答している。また、50%の企業で社内旅費規定における違反や不正が発生しており、限度額や規定グレードを超えた航空券やホテルの利用は26%に、“カラ出張”と呼ばれる架空の出張も21%に達しているという。

 こうした、企業の出張における課題も、パーフェクトトリップ・ネットワークの活用で解決していきたい考えだ。

出張費用適性化の余地
出張における不正の発生

 また三村社長は、コンカーの現状についても説明。「フォーチュン500社のうち61%の企業でコンカーを採用。日本では、経費精算ベンダーの市場において、53%のシェアを獲得している。日本法人の社員数は100人に達し、クラウド専業ベンダーとしては、セールスフォース・ドットコムに次いで、2番目の規模になっている」とした。