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SMB市場にも戦略的投資を――、2018年のSAP Concur事業戦略を発表
新オフィスもメディアに公開
2018年3月9日 06:00
出張支援、および経費精算管理クラウドサービスを展開するコンカーは6日、2018年の事業戦略、および「Concur Labs Tokyo」の開設を発表。さらに、新たな拠点としてGINZA SIXに開設した新オフィスをメディアに公開した。
規制緩和によって日本市場が急速に拡大
SAP Concur グローバル統括上級副社長 スコット・トリ―氏は、グローバルにおけるコンカーの現状について、全世界で顧客企業は約4万社、利用者数は約5200万人いると説明。成長率は昨年度比で22%、IDCによる調査ではマーケットシェアが57.4%と圧倒的な数字であり、同社のビジネスが順調に推移しているという認識を示した。
同氏は、日本市場についても成長率74%、マーケットシェアは57.4%と好調な数字で推移していることを示し、「欧米と比較すれば日本の経費精算サービスの導入は遅れているが、海外のベストプラクティスから急速に学んでいる」と述べた。
昨年コンカーは、JR東日本日本交通、国際自動車、大和自動車交通と提携し、経費精算サービス「Concur Expense」を利用した、鉄道およびタクシーの経費精算自動化についての実証実験を、2年にわたって行うことを発表している。トリ―氏はこの提携についても触れ、「鉄道、タクシー、航空などの分野の企業とコラボレーションし、日本のビジネスに貢献していきたい」と述べた。
続いて登壇したコンカーの代表取締役社長 三村真宗氏が、日本における具体的なビジネス状況、および今後の戦略について説明した。
まず、同社のこれまでの実績については、トリ―氏がすでに述べたように2017年だけでも前年比74%の成長だが、2014年からの3年間で4.5倍に成長しているという。
国別の年間契約額においても、2017年は日本が米国に次ぐ規模の契約額を達成。この急成長には、「領収書電子化の規制緩和」「働き方改革の具体策」「新製品の立ち上がり」「中堅・中小市場への本格参入」という4つの要因があると三村氏は説明した。
領収書電子化の規制緩和について三村氏は「規制緩和によってITのサービスが飛躍的に成長することはよくある。近ごろ、企業のCFOや経理の部長職の方々とお会いすると、『うちはまだ領収書の電子化が進んでおらず遅れている』という声を聞くことがよくある。多くの企業が領収書の電子化に向けて、ソワソワしているような状況」と述べた。
働き方改革についても、「働き方改革にはいろいろなやり方があるが、会議のやり方や休み方などの改革が多く、なかなか具体的な仕事の削減といった改革ができていない。コンカーのソリューションは経費精算という間接業務を実際できる」と説明する。
現在コンカーは、従業員経費の精算ソリューション「Concur Expense」、ベンダー経費精算の「Concur Invoice」、出張費清算の「Concur Travel」を提供している。
三村氏はさらなる新製品の立ち上がりとして、2018年の第2四半期にスマートフォンによって社用車の経費精算を自動化する「Concur Drive」、およびExpenseとInvoiceを横断的に予算管理する「Concur Budget」の追加を紹介。さらに、日本企業に共通した分析要件をテンプレート化した「日本版標準BIレポート」の機能が3月中にも提供開始する予定であることを明らかにした。
また、これまでコンカーは、大手企業に対して直販で新規契約を取るという戦略を中心に展開してきた。しかし最近は中堅・中小企業での導入が急速に拡大しており、すでに約半数の顧客は1000名未満の企業だという。
契約額としても2018年は中堅・中小企業が24%程度にまで推移する見込みとなっていることから、今後はこのエリアに対して戦略的な投資を行っていく予定であると三村氏は説明する。
また直販だけではなく、今後はチャネル戦略にも注力し、契約種別についても新規契約だけではなく追加契約も積極的に推進していくことを明らかにした。
なお、3月からソリューションのブランドを「SAP Concur」としたことについて三村氏は、「既存のSAPユーザーに対して安心感を与える効果がある。また、コンカーは経理など業務部門とのつながりが強いが、SAPはIT部門とのつながりが強い。この両社の強みを生かした連携をすすめていく」と述べた。
日本市場向けの新たなサービスを生み出す「Concur Labs Tokyo」
今回、日本で「Concur Labs Tokyo」が開設されるにあたってトリ―氏は、「少子高齢化によって労働人口が減少していく中、いかに作業を縮小化して生産性を高めていくかが日本にとっては喫緊の課題。Concur Labs Tokyoが最先端の技術から新しいサービスを創出し、経費精算の分野でイノベーションを起こしてワークスタイルを変革していきたい」と述べる。
2016年に米国でConcur Labsを立ち上げたSAP Concur プラットフォームマーケティング バイスプレジデントのジョン・デーツ氏は、Concur Labsの役割について「最先端のテクノロジーとアイデアを組み合わせることで、イノベーションを創出する」と説明した。
具体的には、チャットツールである「Slack」や音声によるサービス提供デバイス「Alexa」との連携によるサービス提供などがあるという。
また、Concur Labsのプロジェクトがどのように選ばれるのかについてデーツ氏は、「Concur Labsのプロジェクトには顧客が参加しており、さまざまな顧客のBacklog(実現したいがまだできていない機能など)から選ばれる」と説明した。
米国以外でConcur Labsが開設されたのは、今回のConcur Labs Tokyoが初であるという。その理由としてConcur Labs Tokyoで所長に就任した上田純平氏は、「日本は労働人口が減少したことにより、労働生産性の工場と働き方改革に対する需要が高い。経費精算の市場の需要も高まっており、そんな日本だからこそビジネスにイノベーションを起こせる。最終的には経費精算などの何も生み出さない業務をなくすことが目標」と述べた。
Concur Labs Tokyoで現在検討中、あるいは進行中の取り組みには次のようなものがある。
・外部アプリサービスとSAP Concurのプラットフォームを組み合わせた新しいワークスタイルの提案
・機械学習によるSAP Concurに格納された出張・経費に関するビッグデータの分析・活用とプラットフォームの進化
・AIアシスタントとの音声やチャットツールを通じたSAP Concurの利用
・VR(仮想現実)によるSAP Concurとユーザーとの双方向コミュニケーションの実現
・ユニバーサルデザインなどダイバーシティを重視した新たなサービス開発
このうちユニバーサルデザインについては、店舗、設備、製品のユニバーサルデザインの企画や設計を手掛けるミライロと提携し、推進していくことを明らかにしている。ミライロ講師で日本ユニバーサルマナー協会 理事でもある岸田ひろ美氏は、「障害(バリア)を価値(バリュー)へと変える」という視点から、TCTとユニバーサルデザインが融合することで、「情報の壁」や「意識の壁」を超えた働き方が実現できるのではないかと述べた。
働きがいのある会社ランキング1位のオフィスとは
経費精算の自動化ソリューションによって、コンカーは企業の働き方改革を推進している。そんなコンカー自身も、積極的に働き方を変革している企業だ。GPTW(Great Place to Work Institute Japan)の「働きがいのある会社」ランキングで4年連続ベストカンパニーに選出され、2018年ランキングでは中規模部門で1位となった。女性部門でも2年連続でベストカンパニーとなっている。
ビジネスが好調に推移したことで、スタッフも急増している。すでに外資系業務アプリケーションのSaaSベンダーとしては最大規模の1社となった。コンカーは手狭になった有楽町のオフィスから、新たにGINZA SIXにオフィスを移転し、できたばかりのオフィスをメディアに公開した。
来客エリアのテーマは「Experience Our Journey」。エントランスには大きなロゴが配置され、各会議室が世界各国の空港名になっているなど、オフィス各所が“旅”をイメージさせるような空間となっている。
スタッフの執務エリアのテーマは「Boundless Workstyle」で、固定席のエリアとフリーアドレスのエリアに境界線がなく、簡単なミーティングができるエリアを数多く配置するなど、スタッフ間でコミュニケーションしながら仕事を進められるような工夫がなされている。エリアごとに空港の搭乗口のような番号が振られており、グループ間で「今日はどのあたりで作業しよう」などの呼びかけができるようになっている。
その一方、電子会議などに利用できる個室ブースも複数用意され、スタッフそれぞれに合った働き方ができるようになっている。
もちろん、Concur Labs Tokyoのエリアも用意されており、ソファなどが配置され、リラックスできるような空間となっている。この空間から、どのようなイノベーションが生まれるのかが楽しみだ。