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ヴイエムウェア、「VMware Cloud on AWS」のアップデートを発表、マルチAZでのストレッチクラスタをサポート
2018年3月8日 12:07
ヴイエムウェア株式会社は8日、2018年第4四半期の国内正式提供に向けて注目度が高まる「VMware Cloud on AWS」に関して、3回目となるアップデートを公開した。
ロンドンリージョンが正式にローンチしたほか、複数のアベイラビリティゾーン(AZ)をまたいだストレッチクラスタ構成の実現、オンプレミスとクラウド間でのハイブリッドな仮想デスクトップ運用など、エンタープライズでのセキュアで俊敏なマルチクラウド運用を支援する内容が中心となっている。
大幅にアップデートされたVMware Cloud on AWS
今回発表されたVMware Cloud on AWS関連のアップデートの概要は以下の通り。
3月7日からロンドンリージョンでのサービスを開始
これまでの米国の2リージョン(オレゴン、ノースバージニア)に加え、欧州でも正式提供を開始、ロンドンにつづき、近日中にはフランクフルトリージョンでも提供へ。東京を含むアジアパシフィックでのローンチは2018年第4四半期を予定。
複数のAZにまたがるリアルタイムで弾力性の高いクラスタ構成(プレビュー)
VSANの機能として提供されているストレッチクラスタをマルチAZで提供(これまではシングルAZ)、地理的に最大100km離れていてもゼロデータロスの可用性を担保する。
論理ネットワーク(NSX)やvSphere HA/DRSもマルチAZ対応となり、AZ間での完全同期レプリケーションを実現、インフラレベルでワークロードをより強力に保護。「片方のAZが完全に落ちてしまっても、もう片方のAZだけで迅速に業務を再開/継続することが可能になる」(ヴイエムウェア チーフストラテジスト(SDDC/Cloud) 高橋洋介氏)。
「AWS CloudFormation」および「HashiCorp TerraForm」と連携した自動プロビジョニング機能
もともと仮想マシンの払い出しがシンプルだったVMware Cloud on AWSの運用を、JSONフォーマットによる払い出しを可能にすることでさらに効率化。自動化とセルフサービス機能の向上で、オンプレミスとクラウドをまたいだスピード感のあるデプロイが可能に。
また、初期ネットワーク設定とセキュリティ設定の確実性を確認するツールとして、NSXを使ってVPNトンネルをかんたんに通す「Tunnel Status Monitor」、インターネットへと抜ける部分を確認する「Connectivity Checker」(プレビュー)、ファイアウォールの設定を確認する「Firewall Rule Accelerator」(プレビュー)を提供。
コンソールに組み込まれたDevOps開発者向けツール「Developer Center」
PowerShellやシンプルなコマンドセットを含むCLIを実装した開発ツール。対話型のAPI Explorerを活用し、RESTful APIの効率的な実行と習得を実現。サンプルコードやSDK、ドキュメントなども提供。
複数の場所から仮想デスクトップ環境にアクセスできる「VMware Horizon 7 for VMware Cloud on AWS」(プレビュー)
オンプレミスで利用中のHorizonをVMware Cloud on AWSでも展開可能になりハイブリッドな仮想デスクトップ運用が実現。課金はオンデマンド形式なのでコストを抑えながらの一時利用が可能、災害対策にも適している。HorizonおよびWorkspace ONEのサブスクリプションライセンスを適用可能。
AWSサービスとの連携を拡張、新たに「AWS Greengrass on vSphere」(プレビュー)を提供
EC2やS3、Redshift、Direct Connectなどに加え、IoTサービスのGreenGrass(Lamdaの実行含む)もネイティブ利用が可能に。vSphere上からGreengrassを仮想アプライアンスのように使える。
利用期間および用途に合わせた料金体系
課金体系として「1時間単位のオンデマンド」「1年/3年専有型サブスクリプション」「アドオンサービスの購入」を提供。支払い方法は「VMware SPP HPP」「通常の発注」「クレジットカード」から選べる。既存のVMwareの顧客に対しては「Hybrid Loyalty Program」としてディスカウント価格での購入や既存の投資を生かした購入手段を用意する。
パートナープログラムを開始
トレーニングやインセンティブを含む新しいパートナープログラムとして、セールスおよびテクニカルトレーニングを提供する「VMware Solution Competency for VMware Cloud on AWS」、従来のソリューションプロバイダ向けプログラムに追加し、再販およびコンサルティングを強化した「VMware Solution Provider Program Expansion」、従来のMSPプログラムに追加し、マネージドサービスおよびコンサルティングを強化した「VMware Cloud Provider MSP Program Expansion」の3つを提供へ。
北米および欧州のパートナーとしてRackspace、Accenture、富士通など現在22社が認定されている。
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2017年8月に最初のローンチを果たしたVMware Cloud on AWSだが、3回目となった今回のアップデートを経て、ようやく「VMware発のサービス」というポジションがはっきりしてきた印象だ。
VMwareが提供するサービスでありながら、これまではどちらかといえばAWS寄りの評価が多かったが、マルチクラウド/ハイブリッド環境でのセキュアな運用を強く意識した今回のアップデート内容を見ると、「エンタープライズの求める柔軟性と俊敏性の高いITインフラ、一貫性のあるインフラを顧客に届ける、これがVMwareのミッション」(高橋氏)を忠実になぞった、VMware主導のサービスへと成長していることがうかがえる。
特に、100km離れた場所でもリアルタイムなストレージのシンクを可能にするVSANのストレッチクラスタ構成を、リージョン内の複数のAZに展開できるようにしたことは、いかにもVMwareらしいアップデートだといえる。この機能により、リージョン内のインフラレイヤの堅牢性が大幅に高まり、ミッションクリティカルなワークロードにも対応することができるようになった。
一方で、従来のVMwareのサービスとは明らかに方向性が異なっている部分もある。中でも目を引くのは新機能の「プレビュー(preview)」の記述の多さだ。
AWSは以前から、ベータ版やプレビュー版と称して開発中のサービスや機能を公開し、顧客からのフィードバックを反映させながら改善していくケースが多い。ここ1、2年は特にその傾向が顕著で、AWSが発表するサービスが最初からGA(General Availability: 一般提供)であることはむしろ少なくなってきている。
もっとも、AWSがプレビュー公開に踏み切るサービスは相当に作り込まれており、品質も十分に高いが、それ以上に「プレビューやベータでもかまわないから、いますぐ使わせてほしい」という顧客が後を絶たない。こうしたAWSのスピード感のある“文化”がVMwareにも影響しているのはたしかで、VMware Cloud on AWSは最初から顧客とともにプレビューを繰り返しながら機能向上を図っている。
実際、前述したマルチAZのストレッチクラスタに関しても現時点ではプレビューで、一部のリージョン/AZでは品質が保証されていない。それにもかかわらず「どうしても使わせてほしい」という顧客が多いため、VMwareが招待した顧客に限り利用可能としている。こうしたアプローチは従来のVMwareにはあまり見られなかったものであり、AWSとの協業を通して、VMwareも確実に変わリつつあるといえる。
最後に、日本のユーザーにとってはもっとも気になる「東京リージョン」でのローンチだが、すでに数社の国内企業がVMware Cloud on AWSの先行導入を行っているものの、正式提供開始時期については2018年第4四半期、今秋以降という予定からいまのところ変更はない。
高橋氏は「VMware Cloud on AWSについては日本の顧客から非常に強い要望をいただいており、だからこそわれわれも十分な検証を重ねてから臨みたい」と語っており、提供するサービスや機能、さらにはパートナープログラムまでを含めて、日本の顧客を満足させるレベルでのローンチを入念に準備している様子をうかがわせている。
東京リージョン開設までにはどんなサービスへと成長しているのか、引き続き両社の動きに注目が集まる。