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「VMware Cloud on AWS」が東京リージョンで提供開始、ゲルシンガーCEO「日本企業にアジリティを」

 ヴイエムウェア株式会社は12日、ハイブリッドクラウドサービス「VMware Cloud on AWS」の東京リージョンにおける正式提供開始を発表した。

 同社は翌13日から2日間にわたって「vForum Tokyo 2018」を都内で開催するが、もっとも重要な国内イベントのタイミングにあわせて、2018年最大のビッグニュースを国内ユーザーに届けることになる。

 来日した米VMwareのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)CEOは「今回、日本のユーザーにこのサービスを正式に提供できることを心からうれしく思う。VMware Cloud on AWSにより、日本のユーザーがコンサバティブ一辺倒な環境から抜け出し、ハイブリッドクラウドがもたらすアジリティの良さを知ってほしい」と語った。

米VMwareのパット・ゲルシンガーCEO

“2018年中にローンチ”という約束を果たす

 VMware Cloud on AWSは、2017年7月に米国オレゴンリージョンで最初の提供を開始。その後、バージニア、ロンドン、フランクフルトとローンチがつづき、2018年8月には初のアジアパシフィックとしてシドニーリージョンでの提供が開始されている

 東京リージョンでの提供開始時期については、1年前となる2017年11月のvForumにおいて、ヴイエムウェア 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン(John Robertson)氏が、AWSジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏とともに2018年中のローンチを約束していた。そして今回の正式提供開始のアナウンスをもって、その約束を無事に果たしたことになる。

 オレゴンリージョンから1年以上かけて準備してきた、待望の東京リージョンのローンチだけに、VMware Cloud on AWSではエンタープライズ向けにいくつかの大幅な機能強化を今回のアナウンスにあわせて提供を開始している。

ディザスタリカバリ

「VMware Site Recovery」による保護対象の仮想マシンを1000台に拡張。また、Dell EMCのハイパーコンバージドインフラ(HCI)である「VxRail」および「VMware vSAN」とSite Recoveryを組み合わせた押しボタン式のフェイルオーバー機能など、包括的なハイブリッドクラウド向けのディザスタリカバリを提供。

大規模でセキュアなクラウドマイグレーション

ダウンタイムなしで数千単位の仮想マシンのライブマイグレーションを可能にする「VMware Hybrid Cloud Extension(HCX)」の「VMware Cloud Motion with vSphere Replication」が利用可能に。さらに、vMotionによるSDDCや、アベイラビリティゾーンをまたいだアプリケーションのマイグレーションも可能になった。

仮想デスクトップ

VMware Cloud on AWSでの利用に最適化した「VMware Horizon 7」の提供によるインスタントクローン機能のサポートや、「VMware Horizon Cloud Service」との連携によるヘルプデスクモニタリングなどマネジメントの一元化。

 いずれの強化点も、日本のエンタープライズユーザーが強く要望していた項目であり、特に日本で人気の高い仮想デスクトップサービス「VMware Horizon 7」のサポートは、東京リージョンの正式ローンチを見据えてのエンハンスメントであることがうかがえる。

 また、オンプレミスからAWSクラウドへの大規模マイグレーションを実現するために、HCXの機能をほぼすべて網羅している点も興味深い。

最初のローンチから1年以上が経過し、エンタープライズグレードな機能を着実に強化してきたVMware Cloud on AWSの現在
日本を含むユーザーからのリクエストが強い4つの項目

 VMware クラウドプラットフォームビジネス担当シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャ、マーク・ローマイヤー(Mark Lohmeyer)氏は「VMware Cloud on AWSは現在、東京リージョンをはじめグローバルに拡張しており、エンタープライズグレードなハイブリッドクラウドサービスとして、その機能を着実にアップデートしている。具体的には顧客からの要望が高いデータセンターの拡張、ディザスタリカバリ(DR)、クラウドマイグレーション、そして次世代アプリケーションという4つのユースケースを中心に機能強化を図っている」と語り、今回のアップデートでもって、ハイブリッドクラウドサービスとしての完成度がさらに高まったことを強調する。

米VMware クラウドプラットフォームビジネス担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ、マーク・ローマイヤー氏

先行ユーザーとして10社ほどが導入済み

 東京リージョンでの正式提供は始まったばかりだが、VMware Cloud on AWSの国内先行ユーザーとしては、すでに九州電力やゼンリンデータコムなど10社ほど導入済みだ。

VMware Cloud on AWSの日本の先行ユーザーの一部。関西の企業も少なくない

 会見には、先行ユーザーとして、社内に構築済みの仮想化基盤をVMware Cloud on AWSで拡張したケイ・オプティコム 技術本部 サービスプラットフォームグループ システム基盤チームの福井希佳氏が登壇し、VMware Cloud on AWS(オレゴンリージョン)導入の背景、および使用感について以下のように評価している。

 「新規のシステムはクラウドで構築できるが、既存のシステム基盤は止めようがなく、よくわからないシステムが多すぎて変更が難しい。そこでクラウドの即応性と柔軟性を活用しながら適切にリソースを払い出し、一方でコスト削減のために定期増強でオンプレミスへ移行するためにVMware Cloud on AWSを活用、大阪のデータセンターにある社内仮想化基盤とオレゴンリージョンを接続して2018年3月からPoCを行った」。

 「結果としては、想定したユースケース内でのハイブリッド環境を十分なレベルで構築でき、また、地味ではあるがIPアドレスの変更なしで利用できた点も良かった。vMotionによるアプリケーションの移行やバックアップもまったく問題なく、パフォーマンスに関しても太平洋をはさんでいるとは思えないほどスピーディで、これなら東京リージョンではさらに簡単に使えるようになるのではないか」(以上、福井氏)。

ケイ・オプティコムがVMware Cloud on AWSのPoCで検証した項目。結果として十分に要求を満たすレベルでハイブリッドクラウドが構築できたという
ケイ・オプティコム 技術本部 サービスプラットフォームグループ システム基盤チームの福井希佳氏

 また先行ユーザーだけでなく導入パートナーに関しても、AWSプレミアパートナーであるCTCやNECを含め、16社がすでにVMware Cloud on AWSのサポートを表明している。こうしたエコシステム構築に関しても、VMwareがVMware Cloud on AWSのサービス提供を通してAWSのカルチャーに強く影響を受けてきたことが伝わってくる。

VMware Cloud on AWSの国内パートナー企業。国内のAWSプレミアパートナー8社のうち5社が含まれている点にも注目。GAの時点でこれだけのエコシステムを構築しているところが、AWS関連サービスらしい特徴

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 「日本のエンタープライズユーザーの多くがAWSを使っている。だがミッションクリティカルなシステムをクラウド上に移行しているところはそれほどでもない。一方で当社はミッションクリティカルな分野で多くの企業に使ってもらっている。日本のユーザーはいったん移ると決めたら動きは速い。パット(ゲルシンガーCEO)が言う通り、日本企業がアジリティを身につけるには最適なサービスなのではないか。AWSリージョンがあるところにVMware Cloud on AWSが動く。次は大阪」――。

 ヴイエムウェアのロバートソン社長は、VMware Cloud on AWSの東京リージョンローンチに寄せてこうコメントしている。

ヴイエムウェア 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏
東京の次は大阪ローカルリージョンでの提供も「アベイラビリティの日付は言えないが準備中」(ロバートソン氏)とのこと

 2016年10月の最初のアナウンスから2年あまり、多くの日本企業が注目してきたハイブリッドクラウドサービスが、エンタープライズグレードな機能を伴ってついに国内から提供される。

 それぞれの分野でトップシェアをもつVMwareとAWSの最強タッグが、日本のエンタープライズのIT環境、そしてビジネスをどう変えていくのかを引き続き注視していきたい。