インタビュー

自らがAIなどの先端テクノロジーを活用し効果を示す――、ITサービス型企業を目指すテンダ

中村繁貴社長に聞く

 東京池袋に本社を置くテンダは、2018年9月、副社長だった中村繁貴氏が代表取締役社長に就任し、「AIとクラウドでワークスタイル変革を目指す」という目標を掲げている。

 中村社長は、「AIを経営にどう活用していくのか、悩んでいる企業経営者が多い。自分たちがAIを活用していくことで、どうAIが活用できるのかを示したい」と話す。

 その鍵となるのが自社のプロダクトだ。プロダクトを活用することで生まれるデータをAIで活用することで、さらに経営に効果を上げる循環を作り出していくことを狙っている。

 テンダが進めるAI活用によるワークスタイル変革とはどんなものなのか、中村社長に聞いた。

テンダ 代表取締役社長の中村繁貴氏

派遣ではなく企業のラボとなることを提案

――2018年9月、それまで取締役副社長だった中村氏が代表取締役社長に就任し、代表取締役社長だった小林謙氏が代表取締役会長となる体制変更がありました。この体制変更は、テンダにどのような変化をもたらしたのでしょうか?

 社長に就任してから、企業理念を変更し、「テンダの存在理由=Mission」「イメージする未来の姿=Vision」そして「組織としての行動規範=Value」を企業理念に掲げました。Missionは「人と社会を豊かにする」、Visionは「ITサービスで人と社会の価値を創出する」になります。そしてValueは、「AIとクラウドでワークスタイル変革を目指す」としました。こうした企業理念を打ち出したことで、企業として目指していく方向が明確になったと思っています。

 これを実現するために必要となるのが、「SHINKA経営」です。人材の育成、会社の発展、顧客満足の向上するためには、社員も、テンダという企業も、社会がそれぞれ相互に作用し、さらなる成長をしていかなければなりません。テンダは、労働集約型ビジネスからITサービス型へシフトする必要があると考えています。

――労働集約型からITサービス型企業にシフトするとは、具体的にどういうことでしょうか?

 ITサービスを提供する企業としてビジネスを進めていきたいと考えています。テンダは創業時には派遣ビジネスを行っていました。しかし、労働集約型の派遣ビジネスは転換期に来ていると思っています。

 今、人手不足ですよね? 当社自身も採用が容易ではありませんし、多くの企業で「なかなか開発者が採用できない」と悩まれていると思います。そこで、「テンダを御社の情報システム部門として活用しませんか?」と提案していきたいと思っています。

――派遣ビジネスは、企業の代わりにシステムを開発するわけですが、テンダが目指すビジネスはこうした人材派遣とはどこが違うのでしょう?

 人材を常駐させる一般的な派遣ビジネスでは、企業側からの発注があり、それを達成するための開発を行いますね。

 それに対して、われわれが目指しているのは、企業にとっての“ラボ”となることなのです。企業側とは事前に予算枠を決め、その企業にとって最適なリソース配置を行います、手段として客先常駐も行いますし、持ち帰って開発する方が望ましいと考えれば、持ち帰って開発します。一般的な派遣とは契約内容も、提供するサービス内容も異なるものとなると思います。

――面白い提案内容だと思いますが、企業側はその提案を受け入れるのでしょうか?

 当社への信頼がなければ発注はないでしょうし、“ラボ”の成果を評価してくださる企業がなければ成立しないビジネスだと思います。それをあえて、「ラボになりたい」とお話しするのは、これまで多くの企業さんと取引をしてきた実績があるからです。

 当社のビジネスの6割が、ユーザーである企業の皆さまとの直接取引です。その実績とお客さまの声を聞いてきたからこそ提案できるものです。

プロダクトがAI活用のデータを生む

――直接取引があることで、ユーザーの声をダイレクトに聞いているというのは大きな強みですね。

 はい。実は当社のプロダクトは、お客さまの声を聞いて開発した製品が多いんです。昨年(2018年)10月にリリースした「D-Analyzer」という製品も、まさに大手企業にコンサルティングを行っている中で生み出されたものです。

D-Analyzerの概要(出典:テンダのプレスリリースより)

 今、多くの企業が人手不足で困っています。テンダ自身も人材不足です。そこでRPAを導入し、社内の効率化を進めようとする企業が多いのですが、RPAを導入する際には、コンサルティングを行って社内にどんな課題があるのかを明らかにする必要があります。

 しかし、企業側にヒアリングを行うだけでは、直すべき課題がわからないことが多いんですよ。例えば、「当社には100人の入力作業をやっている人員がいます」というヒアリング結果だったとします。ヒアリング結果ではそれだけですが、実は100%手入力という人もいれば、迅速に入力できるようにショートカットキーを駆使している人もいる。中には自分でマクロを組んで入力作業効率化をしているかもしれません。「100人の入力作業をする人員」といっても、きちんと吟味すると生産性には大きな差があるのです。

――確かに。マクロを駆使して入力作業を行っていれば、RPAを導入しても大きな成果は出なかったということもあるかもしれませんね。

 そうなんです。こうした実態はヒアリングだけではわからないんです。当社には、「Dojo」という製品があります。自動マニュアル作成ソフトで、2019年4月時点で2600社を超える企業へ導入した実績がある製品なんですが、これはパソコン内に常駐し、起こっていることをキャプチャーとモニタリングすることで明らかにし、作業工程をマニュアル化していくソフトです。

 D-Analyzerでは、このDojoの機能を生かして、その企業においてパソコンでどんな操作を行っているのかを記録し、解析を行います。その結果から、社内においてRPAで改善するべき個所を明らかにします。

――なるほど。ヒアリングだけでは伝わらない社内の実態を明らかにするということですね。

 はい。RPA関連の製品ではありますが、RPAを提供している企業と競合する製品ではありません。導入すればすべて問題が解決するといったものではなく、あくまでも業務を可視化するためのツールなのです。

 これまで、RPAを導入する企業は、事前にコンサルティングを受けることが可能な大企業中心でしたが、コンサルティングを受ける予算がない企業であっても、社内の状況を明らかにした上でRPA導入を行うことができます。

 より幅広い企業にRPAを導入するチャンスが広がるので、RPAベンダーにとってはプラスとなる製品になります。あらゆるRPAベンダーと組んでいきたいと考えています。

 リリース後の反響はよく、引き合いはすでに3けたに近い件数となっています。比較的規模の大きな企業からの問い合わせが多いでしょうか。なお、導入企業が増えていけばモデル化も実現するはずで、導入効果をさらに上げていくことができるのではないかと思っています。

 ちなみに、確実に売上が獲得できる派遣事業とは異なり、プロダクト事業は製品をリリースすれば即売上が獲得できるわけではありません。しかも、一度開発をすれば終了ではなく、リリースした製品に寄せられる声を反映させていくことでプロダクトは成長していきます。

 成功ばかりではなく、失敗が重要な次の製品強化につながることも多いです。やはり答えはお客さま自身にあって、実際に使ってもらった声をどれだけ反映させ、プロダクトを成長しさせていけるかが鍵となります。

AI活用による実績作りが今年度のテーマ

――先ほど、社長就任後に目指す方向性として、AIとクラウドでワークスタイル変革を目指すという目標がありました。AIはどのように活用していくのでしょうか?

 多くの経営者が、「AIが経営にプラス効果をもたらすと言われているが、どう活用すればよいのか?」と考えているタイミングだと思います。われわれも社内でさまざまな場面でAIを積極的に活用しています。そしてAIを生かしたサービスを開発し、さまざまな企業に提供していきたいと考えています。

――現在、さまざまなAIテクノロジーが登場しています。AIビジネスで成果を上げるためには、どのテクノロジーをメインに活用していくのか、選択も必要になると思いますが。

 いろいろと試してはいるんですよ。4年前には、IBMのWatsonを活用し、ビジネスチャットで上がってくるデータからうつの撲滅ができないか?という試行錯誤を行ったこともあります。私自身が心理学の勉強をしていたこともあって、うつの早期発見ができるんじゃないか?と考えたからです。

 この時は、Watsonはちょっと価格が高すぎましたね(笑)。

 Watson以外にも、ビジネスで接点があるMicrosoftのテクノロジーや、Googleのテクノロジーなどを選択していく可能性があると思います。RPA同様、当社は独立系で、どのベンダーとも組んでいくことができますから、評価を行った上で協業するテクノロジーを選択していきたいと思います。

――提供しているプロダクトと、AIはどう関連していくのでしょうか?

 今年4月、次世代マニュアルナビゲーション「Dojo Sero」をリリースしました。Dojo Seroは、Dojoの上位版といえる製品で、ナビゲーションを開始するアイコンを画面に常駐させておくことで、わからない、迷うといった場面で即ナビゲーションを呼び出します。

Dojo Seroのナビゲーション画面のイメージ(出典:テンダのプレスリリースより)

 当社では、このDojo Seroを社内の人事管理システムで活用し、ナビゲーション化を行いたいと考えています。プロダクトをこう活用し、こういう導入効果がありましたという導入事例は、営業担当者がアピールする以上に高い効果を生み出します。

 われわれがプロダクトをどう活用しているのかを紹介することで、お客さま獲得につなげていきたいと考えています。

 さらに、プロダクトを活用することでデータが生まれます。このデータがAIとしてさらに価値を生み出すという循環を生み出していきたいですね。

――プロダクトを活用することで生まれるデータが、AI活用の大きな鍵となるわけですか。

 例えば、社内で利用しているERPがどう活用されているのか、D-Analyzerを利用することで、さらなる効率化や、今後改善すべき課題を発見する。こうした実践が当社のビジネスのキーワードとなると思います。社内の効率化を考える企業にとって、テンダという会社があり、一度話を聞いてみようか?と認知してもらいたいですね。