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Adobe、生成AIを活用した顧客体験管理機能の拡張をAdobe Summitで発表
2024年3月27日 01:00
米Adobeは、3月26日~3月28日(現地時間、日本時間3月27日~3月29日)に同社のクラウドベースのデジタルマーケティングツールとなるAdobe Experience Cloudの年次イベント「Adobe Summit」を開催している。
初日となる3月26日に全体の基調講演が行われ、Adobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏をはじめとする同社幹部が登壇して、同社のAdobe Experience Cloudや、その一部として提供されている製品の戦略や新製品などの説明を行った。
この中で、AdobeではAdobe Experience Platform AI Assistant、Adobe GenStudio、Adobe Fireflyなどの生成AI由来ツールの新規提供や拡張などを明らかにしており、生成AIの活用により、さらに顧客ユーザー体験をよりよくしていくことを明らかにした。
リアルタイムの顧客のユーザー体験をよりよくしていくための「デジタルマーケティング」そのツールとなるAdobe Experience Cloud
デジタルマーケティングツールとは、ECサイト、企業の一般消費者をターゲットにしたWebサイト、製品のサポートなどなど、企業がインターネットを経由してさまざまなサービスなどを提供する時の、ユーザー体験を最適化するツールだ。例えば、一般消費者がECサイトにアクセスして商品の購入を検討しているときに、その購入の可能性が高そうなアカウントに対してクーポンを電子メールで送る――といったことが、今では当たり前になりつつある。
OTA(Online Travel Agency、オンライン旅行代理店)のサイトで次の旅行のホテルを検索した後、すぐにメールでさらに割引率の高いクーポンが届いた、あるいはECのサイトである商品を検索したら、そのECサイトからその商品で使えるクーポンが届いた――、そうしたショッピング体験も今や当たり前になりつつあるが、その背後で、そうした顧客にパーソナライズしたり、リアルタイムのユーザー体験を実現したりしているのがデジタルマーケティングツールなのだ。
AdobeのAdobe Experience Cloudは、デジタルマーケティングツールの代表格と言え、クラウドベースのツールとして提供されている。Adobe Experience Cloudという大きな傘の下に、顧客体験管理やコンテンツ作成などさまざまなツールが提供されており、顧客はそのニーズに応じてそれらを契約し、活用できる。
Adobeによれば、すでに1万1000社を越える大企業が活用しており、Fortune 100の企業のうち87%、Fortune 500では74%の企業がなんらかの形でAdobe Experience Cloudを利用しているという。
現在Adobeが開催しているAdobe Summitは、そのAdobe Experience Cloudに関する年次イベントで、デジタルマーケティング向けの各種ツールがどのように進化していくのかを説明している。3月26日午前(現地時間、日本時間3月27日)には、Adobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏などの同社幹部が登壇して基調講演が行われている。
それに先だってAdobeは報道発表を行い、同社がAdobe Summitで発表する概要を明らかにした。それによれば、本年のAdobe Summitのテーマは「生成AIを活用したコンテンツ作成とパーソナライゼーション」で、同社が昨年発表した生成AIエンジンの「Firefly」などを活用して、顧客向けのコンテンツをより効率よく作成し、顧客個人に特化したサービスを提供する基盤としてAdobe Experience Cloudを強化するという。
Adobe Experience Platform AI Assistant、GenStudioなどの生成AI由来の新ツールを続々と提供
今回Adobeが発表したのは、「Adobe Experience Platform AI Assistant」と呼ばれる、Adobe Experience Cloudの全体を通じて、生成AIの機能を提供する新しいプラットフォームだ。
Adobe Experience Platformは、Adobe Real-Time Customer Data Platform、Adobe Journey Optimizer、Adobe Customer Journey Analyticsなどの各種アプリケーションに機能を提供する基盤となっており、そのAdobe Experience Platformに生成AIの機能を追加することで、前出のアプリケーション内でタスクを自動化したり、成果をシミュレートしたり、顧客のユーザー体験をよりよくする会話型インターフェイスを提供したりする。Adobe Experience Platform AI Assistantは近日提供予定だ。
またAdobe GenStudioは、生成AIを活用して、マーケティングチームがブランドイメージに沿ったコンテンツを迅速に計画、作成、管理、展開し、その効果を測定することなどを可能にする、まったく新しい“生成AIファースト”のコンテンツ管理ツールとなる。
Adobeは、Adobe Expressといったコンテンツ作成ツールを別途用意しているが、Expressの方は手軽にコンテンツを作成するという狙いのツールで、Adobe Creative Cloudを“より簡単に使えるツール”という位置づけになっている。
それに対してGenStudioの方は、デジタルマーケティングを展開するマーケティング担当者の利便性を向上させる目的のツールで、生成AIの機能を利用してマーケティング向けのコンテンツを作成し、さらに生成AIの機能を利用してその効果を測定する、そうしたことを意識したツールとなっている。
また、Adobeは生成AIのツールである「Firefly」のアップデートも行っており、サービスとしての提供と同時にカスタムモデルの提供開始を明らかにした。Fireflyは、Adobeの画像などのコンテンツ生成AIツールとして提供されており、これまではAdobe Creative CloudのWebアプリケーションやPhotoshopなどのデスクトップアプリケーション機能の一部として活用されてきた。今後はサービスとして提供されることで、さまざまなAdobe Experience Cloudのツールから活用できるようになる。また、企業が自社でカスタマイズしたモデルも利用可能になるため、エンタープライズが自社のニーズに合わせてカスタマイズしたFireflyを活用することが可能になる。
Experience Platform と Journey Optimizerの試験的な統合やJourney Optimizerの拡張も発表される
このほか、Adobeは顧客ユーザー体験の拡充を図るために、ジャーニーオーケストレーション(顧客のユーザー体験を始めから終わりまでを最適化すること)と呼ばれる、顧客が体験する、さまざまなタッチポイントでのユーザー体験を改善していくことを過去数年取り組んできた。
例えば、企業の顧客が電子メール、Web、SNS、モバイルなどさまざまなチャンネルで企業とやりとりする時に、ユーザーの行動や好みの変化がリアルタイムで補足され、それに対して的確なマーケティング施策をリアルタイムに行っていく必要がある。
今回AdobeはAdobe Experience PlatformとAdobe Journey Optimizerとの試験的な統合を明らかにし、より強化された統計モデルを利用して、マーケター、PM(製品責任者)、開発者などが、試験的な取り組みや意思決定の過程などを共有し、顧客のユーザー体験全体で、適切なタイミングで割引クーポンを出すといったオファーを繰り返して、顧客満足度を上げる取り組みを最適化可能にする。
Adobe Journey Optimizer自体の機能も拡張され、リアルタイムの顧客の動向とキャンペーンを結びつけて、適切なタイミングで必要な顧客に対してキャンペーンの案内を行うなどの施策が実現可能になる。また、そのAdobe Journey Optimizer(AJO)のB2B版となるAJO B2B Editionは、B2Bの顧客体験を収益なども参照しながらより顧客のユーザー体験を改善する仕組みを提供する。