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ヤマハがネットワークの年次イベントを開催、パンデミック期のヤマハ製品の変遷と今後を紹介

「Yamaha Network Innovation Forum 2023-2024」レポート

 ヤマハのネットワーク機器の最新動向や活用方法についてのイベント「Yamaha Network Innovation Forum 2023-2024」が、1月23日に開催された。主催はSCSK株式会社。

 今回で16回目の開催となる。ここのところコロナ禍でオンライン開催となっていたのが、4年ぶりにリアル開催(オンライン開催とのハイブリッド開催)となった。なお参加者はオフラインとオンラインで合わせて400人超となったという。

「Yamaha Network Innovation Forum 2023-2024」

 特に今回は、前週に発表されて2月に販売開始されるミドルレンジ無線LANアクセスポイント製品「WLX323」「WLX322」(WLX323はWi-Fi 6E対応)や、2023年12月に販売開始されたマルチギガL2スイッチ製品「SWX2220シリーズ」新製品を中心に、普及に向かう“ギガ越えソリューション”の企業導入が中心に語られた。

展示ブースに置かれた最新無線LANアクセスポイントの「WLX323」と「WLX322」
展示ブースに置かれたマルチギガL2スイッチ「SWX2220シリーズ」新製品
展示ブースに置かれた10Gセンタールーター「RTX3510」

パンデミック期のヤマハ製品の変遷と今後を紹介

 「ヤマハ基調講演」として、ヤマハ株式会社の小島務氏(プロフェッショナルソリューション事業部 国内マーケティング&セールス部 セールスグループ)が、「COVID-19パンデミックからの市場変化とヤマハネットワーク製品ロードマップ」の題で講演した。

 小島氏は、2020年以降のパンデミック期を「みなさんの要望も変わってきた数年間」として、この時期のヤマハ製品の変遷を紹介した。

ヤマハ株式会社 小島務氏(プロフェッショナルソリューション事業部 国内マーケティング&セールス部 セールスグループ)

ルーター:10Gルーターが登場

 パンデミックが始まった時に最初に求められたのは、リモートアクセスをどうするか。そこでヤマハでは、VPNクライアント「YMS-VPN8」のアップデートや、ルーターのVPN拡張ライセンス「YSL-VPN-EX」などをリリースした。

 そして1~2年たつと、課題がトラフィック増加にシフトしてきた。そこで10Gルーター製品が登場した。RTX1300(2022年発売)と、センタールーターRTX3510(2023年発売)だ。ちょうど時を同じくして、回線事業者も1Gbpsを超える回線のサービスを打ち出してきている。

 「ヤマハのルーター製品は今後も回線状況の変化に呼応して展開していきたい」と小島氏。例えば、5Gや6Gといったモバイル回線のWAN環境が業務ネットワークに利用される時代なども想定し、開発を進めていきたいと語った。

パンデミック初期はVPNの拡張で対応
ルーター製品。10Gルーターが登場

無線LAN:Wi-Fi 6に対応、6E対応製品も2月発売

 次は無線LANアクセスポイントだ。2021年発売のハイエンドモデル「WLX413」からWi-Fi 6に対応し、2022年発売のエントリーモデル「WLX222」もリリースしている。

 そしてミドルレンジの「WLX323」と「WLX322」を前週に発表した。WLX323はWi-Fi 6Eに対応、WLX322はWi-Fi 6に対応している。詳細は別途製品紹介のセッション(後述)で説明するとして、「例えば適応型ローミングアシストなどの機能も備えている」と小島氏は紹介した。

 今後については、最新のWi-Fi 7や以降の規格についても引き続き対応を進めつつ、中小企業でも使いやすい自律型コントローラー機能など、ヤマハらしい提案をしていきたいと氏は語った。

無線LAN製品。Wi-Fi 6EやWi-Fi 6E対応

スイッチ:マルチギガ多ポートのL2スマートスイッチが発売

 スイッチ製品については、「直近はL2スマートスイッチでもマルチギガの製品提案をしている中で、10ポートでは足りないという声を多数いただいた」と小島氏。そこで、2.5Gポートを16ポートや24ポートを備えたモデルと、そのPoE対応モデルを、前月である2023年12月に発売した。

 今後については、より大規模LAN環境にも製品を投入していくと小島氏は語った。

スイッチ製品。マルチギガL2スマートスイッチの多ポートモデルも発売

YNOはログ解析サービスが登場、vRXは対応クラウド追加へ

 「この3~4年間にハードウェア以上にご期待いただいたプロダクト」として小島氏が取り上げたのが、クラウド型統合管理サービス「YNO(Yamaha Network Organizer)」だ。ネットワーク機器の管理は、かつて1台1台シリアルポートに接続していたのを、クラウドからリモートで統合管理できるようにしたものだ。

 YNOは2016年に登場し、さまざまなアップデートやパフォーマンス向上につとめてきた、と小島氏。2023年には、ログ分析サービス「LAS」という大きなアップデートがあった。

 今後については、さらに機能開発を続けていくほか、クラウド型であることを生かしてAPI対応し、ほかのサービスとの連携もしていきたいと小島氏は語った。

 クラウド関連では、仮想ルーターの「vRX」も取り上げられた。ヤマハルーターの機能をソフトウェアで提供するもので、クラウドと企業のヤマハルーターとをVPN接続する用途などに使われる。

 vRXは2019年にAmazon EC2のイメージとして登場し、VMware ESXiにも対応。そのほかのクラウドとも話を進め、マルチクラウド化に向けて話を進めているという。そして「間もなく、さくらのクラウドでもvRXが動き始める」と小島氏は明らかにした。

クラウド型統合管理サービスYNO。2023年にはログ解析サービスを追加
仮想ルーターvRX。間もなく、さくらのクラウドにも対応

UTMアプライアンスはクラウドセキュリティ連携も予定

 次にセキュリティについて。ヤマハのルーターはもともとVPNによる閉域接続目的が多かったが、昨今ではインターネットに直接アクセスすることが増え、セキュリティが重要になっている。

 そのため、2021年にUTMアプライアンスの「UTX100」「UTX200」をリリースした。UTXシリーズについて、今後もアップデートを続けつつ、新しい取り組みの1つとしてクラウドセキュリティ連携にも対応していきたいと小島氏は語った。

UTMアプライアンスの「UTX100」「UTX200」

環境問題にも対応、認定試験では上位資格を予定

 製品や機能以外の取り組みとしては、サステナビリティへの対応が紹介された。まず機器の梱包(こんぽう)材を、プラスチック削減で紙製へ変え、そのサイズも少し小さくなった。

 さらに、ネットワーク機器のGUIダッシュボードに消費電力も表示できるようにする。例えばスイッチから通信のないインターフェイスを見つけてアクセスポイントを止めたり、スピードを変更したりして、電力を削減することができるわけだ。すでに、12月に発売されたSWX2220シリーズの新製品では対応しているとのことだった。

梱包材の見直し
消費電力の見える化

 ヤマハネットワーク技術者認定試験「YCNE」についても取り上げられた。総受験者数1500名にのぼり、ユーザー企業はもとより、学生のインターネットの勉強にも使われているという。

 2021年の「YCNE Basic」に続き、2022年には「YCNE Standard」も登場。2024年にはStandardの値下げもされる。

 そして2024年春を目標に、上位資格の「YCNE Advanced」を開始したい、と小島氏は明らかにした。「情報が整い次第、公表したい」(小島氏)

ヤマハネットワーク技術者認定試験「YCNE」
2024年2月にYCNE Standardを値下げ、春にはYCNE Advancedを予定

「“お客さまに一番近いネットワークベンダー”であり続けたい」

 小島氏は最後に、ヤマハのネットワーク機器は1995年の「RT100i」から来年で30周年となるが、それを目前にして累計出荷台数500万台に達したことを報告した。

 そして、「“お客さまに一番近いネットワークベンダー”であり続けたいと私は思っている」として、イベントでユーザーの話を聞いて今後の製品開発にフィードバックしていきたいと語った。

ヤマハのネットワーク機器の累計出荷台数が500万台に

2月発売のWLX323/WLX322の特徴を紹介

 2月に発売される無線LANアクセスポイントのWLX323/WLX322について解説するセッションも、SCSK株式会社の永嶌佳奈氏(ネットワークプロダクト第一部 営業二課)と、ヤマハ株式会社の秦佑輔氏(プロフェッショナルソリューション事業部 グローバルマーケティング&セールス部 商品企画G)によって行われた。

WLXシリーズは「手軽」「安心」

 まず永嶌氏が、WLXシリーズの特徴とWLX323/WLX322の概要を紹介した。

 WLXシリーズは、SOHOやSMB(中小企業)に最適な製品を目指しているという。そのための特徴は、まず「手軽」であること。簡単にアクセスポイントを設置できる仮想コントローラー内蔵や、トラブル時にも無線LAN見える化ツールなどを装備。クラウド管理(YNO)などにも対応している。

 続いて「安心」であること。選定や導入に役立つホワイトペーパーを公開しており、そのほかの技術情報も積極的に公開している。

SCSK株式会社 永嶌佳奈氏(ネットワークプロダクト第一部 営業二課)
WLXシリーズの特徴:手軽
WLXシリーズの特徴:安心

 このWLXシリーズで新しく2月に発売されるのが、Wi-Fi 6/6E対応ミドルレンジモデルのWLX323/WLX322だ。

 特徴としては、WLX323はWi-Fi 6Eに、WLX322はWi-Fi 6に対応している。そのほか、「Fast DFS v2」「適応型ローミングアシスト」「天井設置に適したアンテナ指向性」といった特徴もある。これについては秦氏のパートで後述する。

 WLXシリーズは大きく分けて、ハイエンドモデルのWLX4xxシリーズ、ミドルレンジモデルのWLX3xxシリーズ、エントリーモデルのWLX2xxシリーズからなる。通信速度と最大同時接続数の軸で見てみると、ミドルレンジの前モデルであるWLX323からWLX323/WLX322は、通信速度はハイエンドモデルなみになったが、接続数は微増で、やはりミドルレンジモデルの位置づけにあるという。

新製品WLX323/WLX322
WLX323/WLX322の特徴
WLXシリーズの製品の位置づけ

無線LANの安定性をアップグレード

 それを受けて、秦氏がWLX323/WLX322の機能について解説した。

 まずWLX323/WLX322開発の背景として、無線LAN利用の増加と多様化や、無線LANに求める品質の向上を説明。無線LANの安定性をアップグレードする必要がある、ということで製品企画したと語った。

 ハードウェアスペックは、やはりハイエンドモデルとエントリーモデルの間にあり、サイズも中間ぐらいだ。WLX323はWi-Fi 6E対応のトライバンド対応、WLX322はWi-Fi 6対応のデュアルバンド対応。特に、WLX323の3つめの電波は5GHz帯と6GHz帯を選べるため、6GHz帯の端末が少ない場所では2つめの5GHz帯として使えるのも特徴だ。

 また、LANポートは2.5Gbpsに対応。同時接続数は、WLX323が最大270、WLX322が最大170。MIMOもWLX222よりスペックが上がっている。

ヤマハ株式会社 秦佑輔氏(プロフェッショナルソリューション事業部 グローバルマーケティング&セールス部 商品企画G)
WLX323/WLX322開発の背景
WLX323/WLX322のハードウェアスペック

6GHz帯対応でチャンネル数が約2倍に

 WLX323/WLX322の特徴の1つめは、Wi-Fi 6E対応で6GHz帯が利用可能になったこと(WLX323)。2.4GHz帯の3チャンネルと5GHz帯の20チャンネルに、6GHz帯の24チャンネルが加わり、約2倍になった。6GHz帯ではDFSも不要だ。

特徴1:Wi-Fi 6E対応で6GHz帯が利用可能に

専用バンドを消費せずに高速にDFS切り替えできるFast DFS v2

 特徴の2つめは「Fast DFS v2」だ。

 5GHz帯のW53帯とW56帯は、は航空レーダーや気象レーダーでも使われているため、そうしたレーダー波を感知すると一定時間通信を停止してチャンネルを変更するDFS機能の必要がある。

 これを防ぐのが従来の「Fast DFS」で、トライバンド対応を利用して、2つめの無線モジュールで常にチャンネルをスキャンしておき、チャンネルを一瞬で切り替えられるようにする。ただし、これはトライバンドモデルでないとできないことと、トライバンドの1つを専用に使ってしまうので接続端末台数がもったいないといった問題点がある。

 それに対して新しい「Fast DFS v2」では、デュアルバンドモデルでも利用でき、トライバンドモデルも3つの無線モジュールを利用できるため接続端末台数を最大限活かすことができる。「性能にまったく影響しないのでデフォルトで有効になっている」と秦氏は説明した。

従来のFast DFS
特徴2:Fast DFS v2

ローミングしない端末を切り替えさせる適応型ローミングアシスト機能

 3つめは、「適応型ローミングアシスト機能」だ。

 例えば、オフィスの執務スペースの無線LANにつながった端末が会議スペースに移動した時に、端末としては、電波が弱くなることにより会議スペースのアクセスポイントにつなぎかえるはずだ。しかし端末によっては、なかなか切り替わらず執務スペースのアクセスポイントにつながったままになり、通信が遅くなることがある。さらに、執務スペースのアクセスポイントに低速でつながっていることにより、それに引きずられてほかの端末の通信速度も遅くなる。

 そこで新機能の適応型ローミングアシスト機能では、「端末が切らないならアクセスポイント側から切る」ようになっているという。ローミングの閾値などの難しい設定も不要で、設定を有効にするだけで自動的に最適になっていく。これは、強制的に切り替えた時に、ローミング側のアクセスポイントが、電波強度などの環境情報をほかのアクセスポイントに送信して共有することによって行われる。

適応型ローミングアシスト機能がない場合
特徴3:適応型ローミングアシスト機能
適応型ローミングアシスト機能の仕組み

正面のみ、かつ広範囲にアンテナ指向性を調整

 4つめは、「天井設置に適したアンテナ指向性」だ。

 前モデルでは、正面に電波を向けた内蔵アンテナと、360度に向けたショートボールアンテナの、2つの指向性を選べた。ただし、天井に設置した場合、ショートポールアンテナでは背面側(上の階側)にも電波が向いてしまい、また内蔵アンテナでは正面のみだが範囲が広くなかった。

 そこでWLX323/WLX322では、指向性を調整し、正面方向のみに幅広く電波を届けるようにした。

特徴4:天井設置に適したアンテナ指向性

新オフィスをWANもLANも“ギガ越え”のオールヤマハで構成したココナラの事例

 “ギガ越え”のユーザー事例として、Webサービスを開発・運用する株式会社ココナラの例も、同社の川崎雄太氏(システムプラットフォームグループ部 部長)と、山田志門氏(情報システムグループ CITチーム)により発表された。

 ココナラでは本社に加えて、2023年に新オフィスを開設し、そのネットワークをオールヤマハ構成により、WANもLANも“ギガ越え”で構築した。

 全体構成は「Webの事業会社がインターネットにつながらなくなるのはまずい」(山田氏)という考えから、冗長化されたスタック構成をとった。外部接続にRTX1300を2台。端末を接続する部分には、有線はSWX2110を、無線はWLX222を使った。

 ヤマハのネットワーク製品を選んだ理由については山田氏は「信頼できるから」と回答。民生機では脆弱性などの情報がすぐに出てこないが、ヤマハは必要な情報がタイムリーに出てくることなどを挙げた。

 また、ネットワーク整備にあたって、リモート勤務に慣れた社員が、週2回など出社した時に「会社のネットワークが遅い」と思わず快適に仕事をしてもらう品質を心掛けたことも語られた。

左から、株式会社ココナラの山田志門氏(情報システムグループ CITチーム)、川崎雄太氏(システムプラットフォームグループ部 部長)、聞き手のSCSK株式会社の新井聖也氏(ネットワークプロダクト第一部 営業一課)
ネットワーク構成図
ラックの機器の写真

アクセスポイントの3つの設定方法を紹介しデモ

 「ヤマハでできるAP管理」のセッションでは、SCSK株式会社の齊藤圭佑氏(ネットワークプロダクト第一部 技術)が、ヤマハの無線LANアクセスポイントを管理する3とおりの方法を紹介し、一部WLX322でデモした。

SCSK株式会社 齊藤圭佑氏(ネットワークプロダクト第一部 技術)

 1つめはローカルのクラスター管理。同じL2ネットワークに接続されている複数台のWLXを一元管理するためのシステム。別途コントローラーを用意する必要はなく、アクセスポイントに仮想コントローラーが設定されて、以後アクセスポイントを追加すると自動的に仮想アクセスポイントの管理に参加する。

 Webからの設定方法としては、Webブラウザーに仮想コントローラーのIPアドレスを入力する方法と、ヤマハルーターのLANマップからアクセスする方法が紹介された。

クラスター管理の概要
ルーターのLANマップから仮想コントローラーにアクセス

 2つめは、ルーターのLANマップ経由のクラウド管理。YNOからGUI Forwarderで自社ルーターのWeb GUIにアクセスし、そこからアクセスポイントを設定する方法だ。

 この方法は、立ち入りにくい場所に設置したアクセスポイントをリモートで管理する場合などに向いている。ただし、1台1台の作業なので、拠点数が多いとその数だけ作業する必要がある。

YNOからGUI Forwarderでアクセス

 3つめは、YNOで直接クラウド管理する方法だ。YNOでは、クラスター(≒拠点)をまとめるグループという単位を作れ、グループ共通のCONFIGとクラスター固有のCONFIGによって一元管理ができる。

 サンプルとして、品川と浜松に拠点がある会社を想定して、グループCONFIGでSSIDを用意し、クラスターCONFIGでアクセスポイントにSSIDを割り当てる様子を齊藤氏はデモした。

グループ管理
デモの想定
グループ一覧(デモより)
グループCONFIGの設定(デモより)
クラスター一覧(デモより)
クラスターCONFIGの設定(デモより)