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ヤマハ、10G対応の次期センタールーター「X22」を2023年度にリリース予定 クラウド型セキュリティも提供へ
Yamaha Network Innovation Forum 2022 Autumnレポート
2022年11月22日 06:15
ヤマハのネットワーク機器の最新動向や活用方法についての年次イベント「Yamaha Network Innovation Forum 2022 Autumn」が、11月18日にオンライン開催された。主催はSCSK株式会社。
その中でヤマハのこれからのネットワーク製品のロードマップが一部明らかになった。2023年度に、次期センタールーターや、クラウド型のUTM相当のセキュリティサービスを予定していることが語られた。
製品ロードマップや製品供給状況を解説
ヤマハ基調講演「もっと繋がる・新たな価値を創出するヤマハネットワーク」では、ヤマハ株式会社 コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 部長の瀬尾達也氏が、ヤマハのネットワーク製品に対するスタンスや状況などについて解説した。
2023年度に10G対応のセンタールーター製品とクラウドセキュリティ製品を予定
その中で、ネットワーク製品のこれからのロードマップが、カテゴリーごとに紹介された。
もっとも注目なのはルーターカテゴリーだ。2023年度に10G対応の次期センタールーター製品を準備していることを瀬尾氏は明らかにした。
詳細は語られなかったが、すでにSCSKのリアルイベント「Meetup National Tour 2022」で参考出展されており、「参加者から『小さくていい』『ケーブルの抜け防止がいい』という声をいただいた」と瀬尾氏は紹介した。
セキュリティカテゴリーでは、2023年度にクラウド型セキュリティ製品を予定していることを瀬尾氏は明らかにした。
これについて詳しくは、続くセッション「進化するヤマハセキュリティー ~UTXからクラウドまで~」で紹介するとの話があり、本記事でも次節にてレポートする。
そのほかWi-Fi 6E対応を2023年度に予定し、将来的にWi-Fi 7対応も計画していると紹介。スイッチでもラインアップを拡充していくと瀬尾氏は語った。
製品供給状況は解決の方向へ
瀬尾氏の講演ではそのほか、ヤマハのネットワークへの取り組みのスタンスが語られた。
氏は大事にしているスタンスとして「開発者自ら、お客さまと対話する」ことを挙げ、今年は「Interop 2022」や「Meetup National Tour 2022」でネットワーク技術者と触れ合ったことを紹介した。
さらに、ヤマハ全体の新中期計画「Make Wave 2.0」の初年度の中で、「新たな価値を創出」するための技術の1つに「ネットワーク技術」が選定されていることなども瀬尾氏は紹介した。
ヤマハネットワーク製品は、間もなく28周年となる。瀬尾氏は、ユーザーの声に応えてきた結果、累計出荷台数480万台、SOHOルーターで18年連続1位、「日経コンピュータ」のネットワーク機器部門の顧客満足度調査で7年連続No.1となったと紹介しa。
ただし、昨年問題になったのが、製品供給状況だ。「新型コロナや自然災害で工場稼働がダウンしたことや、海運コンテナの逼迫(ひっぱく)したことなどの多重トラブルにより、半導体部品の供給が制限され、われわれメーカーはどこも苦しんだ」と瀬尾氏は語った。
これについては「現在も完全な解決にはいたっていないが、全般的な傾向としては確実に良化の方向に向かっている」と氏は説明した。
ヤマハの対応として、戦略的な調達活動、複数エリア生産体制、製品機能差の補完を紹介。その結果、多くのカテゴリーで生産状況が改善しており、特に無線アクセスポイントやUTMはすぐにでもお届けできると瀬尾氏は語った。
Wi-Fi 6、マルチギガスイッチ、インターネットトラフィック、中小企業サイバーセキュリティの市場動向
ここで瀬尾氏は、ネットワーク機器を取り巻く環境の変化について紹介した。
まずはWi-Fi 6について。Wi-Fi 6のアクセスポイントの数が伸びていることを瀬尾氏は紹介。対応機器が増えていることが要因であり帯域が少なくてWi-Fi 6に移行するところは多くないのではないかとし、Wi-Fi 5も一定数の需要が残るのではないかと語った。
PoEスイッチについては、監視カメラや無線アクセスポイントによって一貫して高い成長を維持しているという数字を紹介した。
スイッチの帯域については、1Gbがまだ多いが緩やかに減少しており、マルチギガの伸び率が高いという数字を紹介した。
インターネットトラフィックについては、コロナ前と比べて上昇率が2倍になっているという経産省の実測値を紹介した。
サイバーセキュリティについては、中小企業ではセキュリティ対策未実施が3割にのぼり、そのうちの4割がセキュリティ対策投資の必要性を感じていないという数字を瀬尾氏は紹介。さらに、ランサムウェアの被害件数が右肩上がりであり、その過半数が中小企業であるという数字を紹介し、「中小企業に適切な提案をするのがよいと考えている」と語った。
中小企業向けUTMとその先のロードマップを解説
ブレークアウトセッションの「進化するヤマハセキュリティー ~UTXからクラウドまで~」では、ヤマハ株式会社 コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 国内営業グループの馬場大介氏が、UTM製品のUTX100/200や、セキュリティカテゴリーのロードマップについて解説した。
クラウド版UTMのようなクラウド型セキュリティを2023年度に予定
ロードマップとしては、瀬尾氏の基調講演に続いて、2023年度に予定されているクラウド型セキュリティについて馬場氏が説明した。
このクラウド型セキュリティでは、ルーターに追加ライセンスを購入して適用することで、DNSセキュリティとWebプロキシを適用。これにより、すべてのインターネットトラフィックがセキュリティクラウドを通るようになる。
ルーター配下の端末の利用台数制限はなく、PCなど以外でインターネットにつながる機器などにも使える。
また、管理はヤマハルーターの管理画面に統合されて、ルーターにログインするだけで状態確認や設定ができる
オフィス内では前述の通りりルーターの追加ライセンスで利用できるが、オフィスの外でもPCライセンスを購入でき、これを適用することでルーターで設定したセキュリティルールが適用されるという。
この製品の形態について馬場氏は「WAN側にUTMを入れるのに近い。まるっとあらゆるセキュリティの網をかけられる製品」と説明した。また、UTM製品と比べた長所と短所については、UTM製品ではインシデント時などにPCまで追いかけやすいがクラウド型セキュリティではUTM製品ほどには追いかけられないこと、一方でクラウド型セキュリティでは、オフィス外にもスケールできることやHTTPSの復号や暗号化に強力なエンジンが使えることを挙げた。
IDaaSも検討を開始
UTMに続くセキュリティのロードマップとして、馬場氏はもう1点を取り上げた。
その説明にあたって氏はまずヤマハネットワークエンジニア会(YNE)へのセキュリティに関するアンケート結果を紹介した。その中の「導入したいと考えているセキュリティ対策は何ですか?」の質問に対する答えで、「IDaaSなどの認証系」が、数は多くないものの自由記述の記載量が圧倒的で、馬場氏は「切迫している」と感じたという。
こうしたことから、クラウドセキュリティに続いて、IDaaSのクラウド認証について検討を始めたと馬場氏は明かし、「今後のヤマハのセキュリティにご期待ください」と語った。
中小企業に使いやすいセキュリティ機器を目指したUTX100/UTX200
馬場氏のセッションでは、瀬尾氏も紹介した中小企業のセキュリティ対策状況の調査や、ランサムウェア攻撃の事例などから、中小企業のセキュリティの重要さを強調。そのようなセキュリティ対策のために、2021年3月にUTM製品のUTX100/UTX200を発売したと説明した。
馬場氏はこれまでのセキュリティ機器の販売支援には大きなハードルがあったとする。エンドユーザーにとっては、導入後の運用への心配や、単一ベンダーで組みたいという要望、必要なセキュリティを選定できないという不安があった。また販売店・SIerにとっても、英文ドキュメントや、代理店経由でサポートに時間がかかること、設置サポートの経験が少ないことなどの不安があった。
UTX100/UTX200ではこうした不安を解消し、もっとも使いやすいセキュリティ機器を目指したと馬場氏は語った。
特徴としてはまず、UTX100/UTX200では、ライセンスが期間だけで分けられた一種類で、機能ごとの追加ライセンスが必要ないため、総額がわかりやすいと馬場氏は語った。
また、特筆すべきこととして、トラブル時にユーザーの許可のうえでサポートがそのUTMに遠隔アクセスして、ログの確認や設定変更する「遠隔サポート」の提供を馬場氏は挙げた。
セキュリティレポート作成機能も同一ライセンス内で提供し、セキュリティレポート自動配信機能も持っていることも馬場氏は特徴として挙げた。
馬場氏はUTX100/UTX200について、IDS/IPSや、URLフィルタリング、アプリケーションコントロール、アンチボット、メールセキュリティといった機能を紹介。さらに、それらを支えるバックエンドとして、Check Point社が世界中のセキュリティ機器から収集した脅威情報データベース「Threatcloud」を紹介した。