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クラウドからクラウドネイティブへ――、OpenStack Days Tokyo 2019とCloudNative Days Tokyo 2019が開催

 クラウド技術に関する年次カンファレンスイベント「OpenStack Days Tokyo 2019 / CloudNative Days Tokyo 2019」が、7月22日~23日に開催された。

 OpenStack Days Tokyoは、OpenStack Foundationの支援を受けたイベントで、今回で7回目。また、CloudNative Days Tokyoは、CloudNative Foundation(CNCF)の支援を受けたイベント「Japan ContainerDays」が改名したもの。今回から両イベントが共催となったことで、OpenStack FoundationとCNCFの両方からの支援を受けたイベントとなった。

OpenStack Days Tokyo 2019 / CloudNative Days Tokyo 2019

クラウドからクラウドネイティブへ

 今回のテーマは「+Native」。“クラウド”から“クラウドネイティブ”に向かうことを意味する。

 初日のオープニングに登場したOpenStack Days Tokyo 2019実行委員長の長谷川章博氏(AXLBIT株式会社)は、「クラウドネイティブ」の意味について、CNCFの定義を引きながら「クラウドをクラウドらしく使うこと」と説明した。

 また2日目のオープニングで、CloudNative Days Tokyo 2019共同委員長の草間一人氏(Pivotalジャパン株式会社)は、“クラウド”と“クラウドネイティブ”の違いについて、「これまでの“クラウド移行”や“クラウドファースト”では、場所をクラウドに移したが、手作業が残っていた。人間の手作業がはさまると、そこがボトルネックになる。クラウドネイティブでは、人間がやるようなことをすべて自動化し、プロビジョニングや変更、アプリケーションのデプロイなどをマイクロ秒単位で実行指示する」という解釈を語った。

OpenStack Days Tokyo 2019実行委員長の長谷川章博氏(AXLBIT株式会社)
CNCFによるクラウドネイティブの定義
CloudNative Days Tokyo 2019共同委員長の草間一人氏(Pivotalジャパン株式会社、右)と青山真也氏(サイバーエージェント、左)

 長谷川氏によると、今回の登録者は1600名以上。スポンサーが50社以上、セッション数が90以上だという。なお、実際の来場者数は講演者やスポンサーを含めて1543名となった。

 長谷川氏はまた、来場者アンケートから、クラウドネイティブ技術の本番利用が46%以上、開発環境での利用60%以上という結果を紹介した。

 また、コードのコントリビューションを引き上げたいという、今回のイベントのもう1つのテーマを紹介。そして、アップストリーム(開発元)へのコントリビューションは最初のステップが難しいことから、KubernetesとOpenStackのそれぞれについてアップストリームトレーニングをイベント内で開くことを紹介した。

登録者数は1600名以上
来場者の46%以上がクラウドネイティブ技術を本番利用
KubernetesとOpenStackのアップストリームトレーニングをイベント内で開催

CKAやCKADが日本語で受験可能に、オンライントレーニングも提供予定

 基調講演では、最初にCNCFとOpenStack Foundationの紹介、報告が行われた。

 そのうちCNCFについては、The Linux Foundationの福安徳晃氏が登壇した。

 CNCFでは現在、約40のプロジェクトをホストしている。Graduated段階が6プロジェクト、Incubating段階が17プロジェクト、Sandbox段階が16プロジェクトだ。

 メンバー企業は400以上。日本からは富士通がプラチナメンバーになっている。最近はAppleがプラチナメンバーになった。

 そのCNCFは、クラウドネイティブ関連製品の企業やプロジェクトのロゴをまとめた図「Cloud Native Landscape」を発表しているが、現在では1000を超えるロゴが並び、エコシステムが広がっていると福安氏は説明する。ここに登場している日本企業は17社だ。

 また、CNCFには認定パートナー制度があり、Certified Kubernetes Partnersには88社が認定を受けているものの、日本企業はまだ入っていない。一方でCertified Kubernetes Service Providersは101社が認定を受けており、こちらには日本企業も含まれている。

 エンジニアの認定制度もある。システム管理者向けのCertified Kubernetes Administrator(CKA)と、開発者向けのCertified Kubernetes Application Developer(CKAD)だ。福安氏は、この試験が日本語でも受験できるようになったことをアナウンスした。

 なおCKAやCKADのためのトレーニングは、現在、クリエーションライン株式会社が提供している。それに加えて、オンライントレーニングも提供予定であることも福安氏は明らかにした。福安氏によると「2~3カ月でできるのではないかと思っている」とのことだ。

The Linux Foundationの福安徳晃氏
CNCFがホストするプロジェクト
Cloud Native Landscapeに登場する日本企業
CNCFのエンジニア認定制度であるCKAとCKAD

OpenStackを支える「4つのオープン」

 OpenStack Foundationについては、OpenStack FoundationのCOOであるマーク・コリアー氏が「Collaboration Without Boundaries」という題で紹介した。

 OpenStack Foundationは始まって9年。その間、コリアー氏も30カ国以上、200万キロを旅したという。「この9年の活動でコミュニティが生まれた」とコリアー氏。

 その中で学んだことは、講演の題のとおり「国境を超えたコラボレーション」が可能だということだという。「テクノロジーはパワフルだ。それ以上に大事なのは、個人のコラボレーションが世界を変えることができることだ」(コリアー氏)

 コリアー氏は国境を超えたコラボレーションの例として、世界の物理学者が集まって研究しているCERNを挙げた。なお、CERNではコンピューティングを管理するプラットフォームとしてOpenStackやKubernetesを活用しているという。

 また科学技術以外では、ヨーヨー・マによる音楽グループのシルクロード・アンサンブルを挙げた。

 「われわれのアンサンブルは、年2回のSummit(旧OpenStack Summit、現Open Infrastructure Summmit)だ」とコーリア氏。日本でも2015年にOpenStack Summitが開催されている。

OpenStack FoundationのCOOであるマーク・コリアー氏
2015年に日本で開催されたOpenStack Summit

 さて、2019年現在のOpenStackは、10万人、187の国が動かしている。リリースはこれまで19回で、毎日だれかがコミットしている。アクティブなオープンソースプロジェクトのTop3に入り、アナリストによると6000億円相当の価値があるという。

 OpenStackが動いている場所としては、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ホステッドプライベートクラウドの3種類がほぼ同数だと、コーリア氏は報告した。

 こうした活動からの教訓として、コーリア氏は「4つのオープン」の原則を紹介した。それは、「Open Design(オープンな設計)」「Open Development(オープンな開発)」「Open Community(どの国の人でも参加できる)」「Open Source(オープンソースライセンス)」の4つだ。

 そして、OpenStackの進展と、その上でアプリケーション管理のKubernetesや機械学習のTensorFlowなどが動いていることなどを紹介。次世代のクラウドの課題として、「ベアメタルからコンテナまで1つにまとめて扱えるようにするのが課題」と語った。

 最後にコーリア氏は「Let's Collaborate!」と語りかけ、開発への参加や、ユーザー調査、Open Infrastructure Summitへの参加などを呼びかけた。

OpenStackの場所は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ホステッドプライベートクラウドがほぼ同数
4つのオープンの原則
次世代のクラウドの課題