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クラウド技術に関するカンファレンス「CloudNative Days Tokyo 2021」、11月4日・5日に開催

コンセプトは「+Native ~ともに繋げるクラウドネイティブの世界~」

 クラウド技術に関するカンファレンス「CloudNative Days Tokyo 2021(CNDT2021)」が11月4日~5日にオンラインで開催される。今回のコンセプトは「+Native ~ともに繋げるクラウドネイティブの世界~」で、参加費は無料(事前登録制)。

 セッションは60本以上が予定されており、想定視聴者数は2500名。

 主催はCloudNative Days Tokyo Commiteeで、株式会社サイバーエージェントの青山真也氏と、HashiCorpの草間一人氏がCo-Chairを務める。運営は株式会社インプレス。

 9月29日には一般参加者の登録受付を開始した。同時に、開催についての記者発表会が開催されている。

CloudNative Days Tokyo 2021開催概要
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キーノートに銀行も登壇する“ともに繋げる”イベント

 今回のCloudNative Days Tokyo 2021のテーマや見どころについては、Co-Chairの一人である青山真也氏(株式会社サイバーエージェント)が紹介した。

Co-Chairの青山真也氏(株式会社サイバーエージェント)

 青山氏は背景として、最近のCloudNativeの情勢について説明した。まず、CloudNativeに関連する技術をプロダクション環境での利用することが一般化したこと。そして、それによって見えてきた、大規模化・長期運用や、セキュリティ、効率化といった課題の話題が見られるようになっていたこと。さらに、新たな手法やエコシステムが成熟してきたことにより、それらを組み合わせてより高度なアーキテクチャを実践すのも一般的になってきたことが挙げられた。

 こうしたことから、今回のテーマは「+Native ~ともに繋げるクラウドネイティブの世界~」と決まった。この中でも“繋げる”を重要な部分として青山氏は強調した。

 「これまではCloudNativeに取り組んでいる人とまだの人との間に差があると感じていた。しかし最近では、CloudNativeは一般的になり、ほぼすべての企業や技術者がCloudNativeへの旅を歩んでいるといえる。そこで今回は、すべての人が旅路で広い集めた経験、知識、疑問、悩みを共有する“交差点”にしたい」(青山氏)。

 例えば、いままでCloudNative Days Tokyoなどで話していなかったような人たちで、CloudNativeに取り組んでいる人がたくさんいるため、そうした人とも関係を繋いでいくことに注力していると青山氏は言う。それにより、いままでなかったようなセッションを選んだり、参加者と登壇者などの交流を図ったりしているとのことだ。

最近のCloudNativeの情勢
今回のテーマ「+Native ~ともに繋げるクラウドネイティブの世界~」

 キーノートセッションは6本が予定されている。

 キーノートセッションの1つめのカテゴリーは金融だ。クラウドネイティブでシステムを新規開発する株式会社みんなの銀行と、古くからある銀行で高速な開発を支えるプラットフォームにAWSやOpenShiftを活用する三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社の、2つのセッションが行われる。

 2つめのカテゴリーはWeb系企業だ。かなり早い段階からKubernetesを活用したメルカリは、セキュリティについて語る。ミクシィは、世界150カ国以上で提供される家族アルバム「みてね」について、SREチームが取り組んできたKubernetesへの移行と運用、オブザーバビリティの実現を語る。ゼットラボは、Kubernetesでのステートフルアプリについて、運用に向けた注意点や今後の動向について語る。

 そしてCNCFの講演としては、CNCFのEcosyste AdvocateのKatie Gamanji氏が登壇。CloudNativeやKubernetesを取り巻くさまざまな標準化について紹介する。

 キーノートのほか、46本(スポンサーセッションを含めると60本以上)の通常セッションや、ハンズオンイベントも開かれる。

キーノート1:金融
キーノート2:Web系企業
キーノート3:CNCF
ハンズオンイベント

オンラインで1対1の会話やホワイトボード議論に対応

 オンラインイベントでの参加者のコミュニケーションについては、伊藤太斉氏(フューチャー株式会社)が説明した。

伊藤太斉氏(フューチャー株式会社)

 オフラインのイベントでは、同じ会場なので双方向のコミュニケーションができるのに対し、オンラインだと一方向になりがちだと伊藤氏は指摘する。

 そこで、双方向のコミュニケーションができるように、oViceとmiroの2つのツールが採用された。

 oViceでは、オフラインイベントの懇親会や廊下で、参加者と登壇者や、登壇者と登壇者などがコミュニケーションをとるようなことを、オンラインでできるようにする。画面上で自分のアイコンをドラッグさせ、話したい人に近づけることで会話が可能になるという。

 miroは、オフライン会場にホワイトボードを置き、参加者が質問や悩みを書いて誰かが答える、といったようなことをオンラインで行えるようにする。miro上の付せんで質問や回答などが可能だ。なおmiroは、CloudNative Days Tokyo 2020から採用された。

oVice
miro

参加登録やタイムテーブル、視聴などのイベントプラットフォームを独自開発

 こうしたコミュニケーションツールを含む独自開発のイベントプラットフォームについて、Co-Chairの一人である草間一人氏(HashiCorp)が説明した。

Co-Chairの草間一人氏(HashiCorp)

 イベントプラットフォームは、動画視聴のほか、参加登録、タイムテーブル、コミュニケーションまで、イベントとしてのUXを担う。

 このイベントプラットフォームは、CNDTで2020年から独自開発している。さまざまなイベントがオンラインに移ったが、オフラインで体験が悪化することもあり、それを解決するための既存の仕組みがないので自分たちで作った、と草間氏は語った。

 例えば、多くのオンラインカンファレンスでは、タイムテーブルからセッションを選んで視聴することが多い。それに対して独自イベントプラットフォームでは、同じ時間で並行して開かれているトラックに同じ画面で切り替えられるようになっている。そのほか、アーカイブへの切り替えや、チャット&質問システムなども同じ画面に組み込む。oViceやmiroへの動線も設けられる。

 このプラットフォームは、2020年9月のCloud Native Days Tokyo 2020から始められ、回を追うごとに機能やシステムの改善を図っている。ほかの団体が開催するCloud Operator Daysでも利用された。

独自イベントプラットフォーム
独自イベントプラットフォームの進化

 開発にあたって気をつけていることとして草間氏は「一番大切なのは参加者や登壇者のユーザー体験」と言う。そのために、素早く改善を回していけることが重要になる。

 そこで、人数と時間が限られることから、最初はいきなりマイクロサービスやコンテナではなく、Ruby on Railsのモノリシックアプリケーションでスタートし、CI/CDやレビューの体制作りに力を割いた。

 その後、チームのメンバーが増え機能も追加されたので、今年からコンテナ化やコンポーネント化、オブザーバビリティの強化などを実施した。

 こうしたCloudNative技術を自分たちで活用することにより、一番不具合が発生するイベント開催中にリアルタイムに不具合の修正やスケールが可能となったと草間氏は語った。

 その結果、参加者からSNSや事後アンケートで高評価を受け、ソースコードに参加者からPull Requestを受けたこともあったという。

開発にあたって気をつけていること
参加者からの評価

 最後に草間氏は、今後のオンラインイベントとイベントプラットフォームについても語った。

 草間氏は、これからのアフターコロナ時代では、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドなイベントが増えるとの見通しを語った。ただしそれは、オフラインイベントを撮影してオンラインで配信するという単純なものではなく、登壇者も参加者もオンラインでもオフラインでもシームレスに参加できるものにしたいという。

 そのための課題として、オンライン・オフライン共通のIDや、課金、入退場管理、オンラインとオフライン同時の配信オペレーション、場所と時間の垣根を越えるコミュニケーションを草間氏は挙げる。

 そして、「こうやればできる」という答えはまだないので、アイデアを実装し、動かし、改善していくループを素早く回していくことになる。「大事なのはチームと文化。この1年間、それをやれるだけのチームと文化を作ってきた。そして実現するための下支えをしてくれるのがクラウドネイティブ技術」と草間氏は語った。

アフターコロナ時代を見据えたプラットフォーム作り