ニュース
クラウドインフラ運用技術者向け新イベント「Cloud Operator Days Tokyo」、7月29日・30日に開催
OpenStack Days Tokyoの後継、今年はオンラインで
2020年7月6日 11:42
クラウドインフラ運用技術者のための年次カンファレンスイベント「Cloud Operator Days Tokyo 2020」が、7月29日~30日にオンライン開催される。昨年まで「OpenStack Days Tokyo」の名前で開催されていたイベントの後継となる。
イベントは事前登録制で、参加費は無料。来場者数は1000名を予定。スポンサーのバーチャルブースも予定している。
前回の2019年は、「OpenStack Days Tokyo」と、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)の「Cloud Native Days Tokyo」の共同開催の形となっていた。今回の2020年は両者が再び分離し、旧OpenStack Days Tokyoの部分が「Cloud Operator Days Tokyo」として開催される。
このCloud Operator Days Tokyo 2020開催についての記者説明会が、7月3日にオンラインで開催された。
運用者の泥臭い経験を共有する
今回のテーマは「クラウド運用のリアルに迫る」。このテーマについて、Cloud Operator Days Tokyo 2020実行委員長の長谷川章博氏(AXLBIT株式会社)は、「いまクラウドで求められているのは、新技術を使ってみたというきれいな話や、ベンダーに偏った話より、運用だろうと考えた。作っておしまいではなく、どう動かしていくかが重要だ」と語った。
この場合のクラウドの運用者(オペレーター)とは、クラウド基盤を運用しているインフラエンジニアだけでなく、クラウド基盤上のアプリケーションを運用するエンジニアなども対象にしている。
さらに、社内教育や組織論に関するセッションも設けている。「オペレーションは、中で動いている人たちが創意工夫しながら実行している。単純な最新の技術だけではなく、人や組織にもフォーカスをあてているのもひとつの特徴だ」(長谷川氏)。
Cloud Operator Days Tokyo 2020実行委員で日本OpenStackユーザ会 会長の水野伸太郎氏(NTT)も、「新プロダクトや機能の紹介が中心のイベントではなく、運用者(オペレータ)が『泥臭い経験』を共有して集合知を作る場としたい」と語った。
運用者向けに特化したイベントのニーズは、日本OpenStackユーザ会が開催してきたOpenStack運用者向けイベント「Ops Workshop」で感じてきたことだと水野氏は言う。
Ops Workshopは2015年からこれまで9回開催し、毎回30~40名が集まる。これを通じて、運用者が同じ課題を抱えており、シェアしたいことがあることがわかったとのこと。
さらに、OpS WorkshopはOpenStack運用者の集まりだが、OpenStackの成熟に伴いOpenStack以外のニーズも高まったとした。
一方で、インフラオペレーターの役割も変わってきている。サーバーやネットワークの運用から、仮想マシン、コンテナ、Kubernetes、AWS、アプリ運用、CI/CD、自動化など、求められるものが拡大している。SREのような概念も登場し、自ら自動化や運用効率化を進め、最新の技術をいち早く使えるようプラットフォームを整備するインフラエンジニアなど、サービス事業者で優秀なインフラエンジニアを抱えることがサービスの源泉になっている。
しかし、それは現状では一握りしかできていないのではないかとして、水野氏は「日本のオペレータの底力を高めたい。インフラエンジニアの市場価値を向上させたい」と語った。
水野氏は今回の参加者アンケートの結果から「運用の課題」として選ばれたものとして、新技術への負担、人材不足、属人化などが上位に挙がっているところを示し、「高度なオペレーターが求められていいて、みな同じ悩みを抱えていることがわかる」と語った。
ちなみに長谷川氏は、「SRE Dayにしたほうがいいんじゃないかという話もあった」という内幕を紹介した。しかし、「SREというのは一つの定義であり、運用はそれだけではない」ということで採用されなかったという。
「やはり『運用のリアルに迫る』というのを売りにして、苦労した経験や問題を重視している。運用者は、きらびやかな話を想像しがちで、自分の話はたいしたことがないんじゃないかと思いがち。それに対して、『いやいや、Kubernetesを運用するだけでも苦労があるんだよ』と、本当に動いている本番環境の話を集めた」(長谷川氏)。
録画を生配信しながらリアルタイムでスピーカーと質疑応答
Cloud Operator Days Tokyo 2020も、多くのカンファレンスイベントと同様に、コロナ禍によって、企画途中で急きょオンライン開催に変わった。「大企業主催のイベントではない、コミュニティによるイベントで、1000名を満足させるイベントをどうオンラインで開催すればいいか、実行委員会の回数を例年の1.5倍に増やして議論した。そうでないと難局を乗り切れなかった」と長谷川氏は語る。
最重要視したのは、参加者、スポンサー、スピーカーの3者の満足をどうバランスさせるかだという。ここで、オンラインイベントは場所や時間に縛られない一方で、イベントの一体感をどう出すかが問題になった。「VOD形式だと、あとで見ればいいやと思って結局見なかったりする。また、参加者とスピーカーとのインタラクションがとれない問題もある」(長谷川氏)。
そこでイベントの形式としては、録画したものを、VODではなく、あえて生配信する形式とした。そして、セッションのスピーカーが配信時間に待機し、オンラインで質疑応答に答える。これによって、オンラインならではの一体感を出すようにする狙いだ。
セッション数は、2日間で40セッション。長谷川氏によると、1日でもできる量だが、あえて2日にしたという。40セッションは「アプリケーション開発関連」「OpenStack関連」「ラージスケール運用」「トラブルシューティング」「組織論」の5つに分類され、同じ分類のセッションが同じ時間に重ならないようにする。
イベントプラットフォームにはBrellaを採用した。Brellaはフィンランド発祥のサービスで、大規模イベントとしては本邦初採用だろうという。マッチング機能と1対1のネットワーキングが特徴で、「参加者のマッチングを充実させることができる」と長谷川氏。また、バーチャルブースなどスポンサー向けの機能も持つ。「Brellaにより、参加者、スポンサー、スピーカーの3者がインタラクションできる」(長谷川氏)。
インタラクティブの仕組みにはSlidoを採用した。Slidoにより、前述したように、セッションを配信している間にインタラクティブに質問や投票ができる。そのほか、動画配信にはVimeoを採用した。
OpenStack Foundation、楽天モバイル、デンソー、メルカリが基調講演
記者会見では、見どころも紹介された。
基調講演の1日目は、「オープンソースインフラと注目運用事例」がテーマ。OpenStack FoundationのCOOのMark Collier氏の「境界のないコラボレーション:オープンインフラの夢を現実のものに」と、楽天モバイル株式会社の小杉正昭氏(クラウド基盤技術開発・運用部)の「楽天モバイル『完全仮想化の裏側』」の、2つのセッションが開かれる。
基調講演の2日目はテーマが「リアル運用と組織運営」と変わる。株式会社デンソーの石田晋哉氏(デジタルイノベーション室 SRE 課 担当課長)のセッション(タイトルは未定)と、株式会社メルカリの塚 穣氏(Director, Developer Productivity Engineering. Engineering Manager, Microservices Platform)による「クラウド時代のマネジャーは人々やチームとどう向き合っていくのか」の、2つのセッションが開かれる。
長谷川氏によると、記者説明会時点でのセッション全体の暫定人気ランキングとしては、1位が基調講演の「楽天モバイル『完全仮想化の裏側』」で、2位も基調講演の「境界のないコラボレーション:オープンインフラの夢を現実のものに」となっている。
また3位が「Yahoo! JAPANの月間800億ページビューを支えるIaaS基盤の舞台裏」。少し変わったテーマとしては5位に日本マイクロソフト株式会社の真壁徹氏(Cloud Solution Architect)による「ミッション:メガクラウドを安全にアップデートせよ! ~『何もしてないのに壊れた』が許されない世界で~」が入っている。