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NIC上でOSを動かす「スマートNIC」、100GbE×64ポートのスイッチや“世界最速”のNICも――、メラノックス

 「Interop Tokyo 2019」のMellanox Technologies(3月にNVIDIAによる買収が発表されている)のブースでは、同社の高速NICやスイッチの技術を展示していた。また、その応用例として、IPベースのTVスタジオ機器構成をデモしていた。

JBOFとスマートNICでNVMe over Fabric

 ストレージのコーナーでは、スマートNICと、それを使ったNVMe over Fabricについて展示していた。

 スマートNICとはCPUを積んだNICだ。Mellanoxでは、NICとARM CPUの機能を持ったSoCチップ「BlueField」を開発し、NICも作っている。これにより、NIC上でOSを動かして処理をオフロードできる。

 一方のNVMe over Fabricとは、RDMA(Remote DMA)によって、ネットワークでつながった先のNVMeストレージを、まるで内蔵NVMeストレージのように使える技術。MellanoxではNVMe over Fabricの標準規格として、SNAP(Software-defined, Network Accelerated Processing)を推進している。

ストレージのコーナー
MellanoxのBlueFieldを積んだNIC

 ブースではこのほか、TyanのNVMeストレージアレイに入れるBlueField搭載カードを展示していた。サーバー機能を持たないフラッシュストレージ(JBOF:Just a Bunch of Flash)でも、BlueField搭載カードを入れることで、NVMe over Fabricが実現できる。

TyanのJBOF NVMeストレージに、BlueField搭載カードを入れてNVMe over Fabricを実現
TyanのJBOFストレージに入れるカード。写真で上部にあるヒートシンク部分がBlueField、下部にある黒いヒートシンク部分がPCIeスイッチ

汎用機器を使ったIPベースの映像制作・配信スタジオ

 「Media & Entertainment」のコーナーでは、同社の100GbEスイッチなどの通信機器を使った、放送向け映像制作のTVスタジオをデモしていた。IPベースの映像制作・配信を汎用機器で実現するもので、SMPTE 2110規格ベースの構成だという。

 映像ソースとなるビデオプレイヤーは、ミドルウェアRivermaxとMellanoxのNICのConnectX-5を使って汎用サーバーで動くソフトウェアビデオプレイヤー。この出力がSFPゲートウェイに入って、そこからマルチキャストされる。SFPゲートウェイにはSFPによるIPと、SDIやHDMIの映像信号を相互に変換するアダプターも付いている。

 汎用サーバーで動くマルチビューアーが4つの入力を1画面に合成し、その映像が再びSFPゲートウェイに入って、SDIに変換されてSDIモニターに表示される。4つの入力の1つとしては、2つめのスタジオを想定して、PCのHDMI出力の映像もある。さらに、マルチビューアー自身の出力も再度マルチビューアーに入り、4画面の1つとして表示される。

 そのほか、SMPTE 2110に準拠したPTPによる時刻同期のために、セイコーソリューションズのPTPグランドマスターも使われている。

IPベースの映像制作・配信を汎用機器で実現するデモ
機器類。右に100GbEスイッチSN2100。左にSFP型IPゲートウェイ
ミドルウェアRivermaxとMellanoxのNICのConnectX-5を使って汎用サーバーで動くソフトウェアビデオプレイヤー
4画面を1画面に合成するマルチビューアーを汎用サーバーで。右上はPCのHDMI出力から。左下は、この画面全体がゲートウェイに再度入力されて左下に表示されている

100GbE×64ポートのアグリゲーションスイッチや、最速のNICなど

 そのほか、100GbEを64ポート備えたフルワイヤ性能のアグリゲーションスイッチ「SN3800」や、PCIe Gen4×16×2で同社が「製品として販売されている中では世界最速のNIC」と呼ぶ「ConnectX-6」などが展示されていた。

100GbEを64ポート備えたアグリゲーションスイッチ「SN3800」
PCIe Gen4×16×2のNIC「ConnectX-6」

 なお、筆者がMellanoxブースを通ったときには、たまたま東京大学 情報基盤センターの関谷勇司氏が「ネットワークが作るエッジコンピューティング」というミニセミナーをしていた。

 ネットワークインフラへの要求が増え人の命を支えるようになると、クラウドに行く中間で一部を処理する“脊髄(せきずい)反射”のようなエッジコンピューティングが求められるようになったという。

 関谷氏は、5GにおけるMEC(Multi-Access Edge Computing)や、NFVによりサービスがロケーションの呪縛(じゅばく)から逃れること、プログラマブルスイッチやスマートNICとエッジコンピューティングの関係などについて語っていた。

東京大学 情報基盤センターの関谷勇司氏
5GにおけるMEC
プログラマブルスイッチやスマートNIC