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日立システムズ、AIを活用した水道管の劣化状態分析を兵庫県内の水道事業体と実施

漏水発生リスクを敷設年度に応じて色分けした管路図(左)とAIを活用した水道管の劣化状態分析結果で色分けした管路図(右)

 株式会社日立システムズは6日、兵庫県内の水道事業体と連携し、「CYDEEN 劣化要因分析支援サービス」を用いて水道管の劣化状態をAIで分析する実証実験を2025年1~3月に実施したと発表した。

 日本の水道管は高度経済成長期に整備されたものが多く老朽化が進んでいるが、水道事業体は水道局員や事業者の人手不足、給水人口の減少に伴う料金収入減による経営状態の悪化といった経営上の課題を抱えており、水道設備のメンテナンス作業における効率化や精度向上が急務となっているという。限られた人員や予算を有効に活用するためには、事前にデータに基づいた精緻な調査を実施し、漏水発生リスクが高い水道管から対策していく必要があるとしている。

 日立システムズは、インフラ施設や設備に関する維持管理データをAIで分析して劣化要因や損傷状況などを予測する「CYDEEN 劣化要因分析支援サービス」を用いて、兵庫県内の水道事業体と連携し、水道管の劣化要因と漏水発生リスクが高い水道管を抽出した。

 具体的には、管種や敷設年度などの諸元データ、漏水履歴などの水道事業体所有データ、表層地盤などのオープンデータといったさまざまな種類のデータを対象に、AIによる統計分析手法を活用して分析した。

 このAIによる統計分析手法は、株式会社日立製作所が開発したデータ分析技術を基にしており、東京大学大学院情報学環「情報技術によるインフラ高度化」社会連携講座にて評価されたもので、異常状態を示すデータが少ない場合でも、データ同士の相関性などを見いだすことで、損傷予測や影響度予測ができる。

 一般に水道管の劣化は経年が主な要因と考えられているが、実証の結果、耐用年数を超えている敷設年度の古い水道管でも漏水発生リスクが低いものが存在することや、敷設から30年未満の比較的新しい水道管でも漏水発生リスクがあるものが存在すること、さらに敷設年度だけでなく管種や管路延長、水圧、地盤などが総合的に水道管の劣化に影響していることが確認できたという。

 今後も日立システムズは、水圧や流量などのデータを活用した水道管の劣化診断の精度向上や、下水道管を対象にした劣化診断に取り組むなど、「CYDEEN 劣化要因分析支援サービス」による水道インフラ維持管理に関する研究開発を進め、上下水道管の更新作業をはじめとする維持管理業務の高度化、効率化に貢献するとしている。