大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
NEC、2023年度のIR Dayを開催 折り返し点を迎えた2025中期経営計画の進捗状況などを解説
2023年12月4日 06:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は、機関投資家や証券アナリストなどを対象にした「NEC IR Day 2023」を開催し、2025中期経営計画の進捗状況などについて説明した。NECがIR Dayを開催するのは今年で5回目となる。
本稿では、NEC IR Dayから、折り返し点を迎えた2025中期経営計画の進捗状況と、各事業の取り組みをレポートする。
2025中期経営計画の進捗状況
NECでは、「2025中期経営計画」の最終年度となる2025年度の主な経営指標として、売上収益で3兆5000億円(2022年度実績は3兆3130億円)、調整後営業利益が3000億円(同2055億円)、Non-GAAP営業利益が3000億円(同1970億円)、調整後当期利益は1850億円(同1386億円)、Non-GAAP当期利益が1850億円(同1328億円)を掲げている。また、EBITDAは4500億円(同1328億円)、ROICは6.5%(同4.7%)を目標にしている。
NECの藤川修CFOは、「2025中期経営計画は、2022年度までは順調に推移しており、特に、国内ITサービスは旺盛なIT投資が継続し、想定以上に伸長している。国内ITサービスは堅実な目標設定としているが、好調な市場環境が継続すれば、より高い水準を目指せる。だが、グローバル5Gは、海外市場の立ち上がりが想定よりも遅れたことによりビハインドしており、2022年度第4四半期に構造改革を実施した」とし、「中計の折り返し点となるこのタイミングに、全社目標は据え置きながら、事業環境の変化を考慮し、各事業の計画を見直している」と述べた。
国内ITサービスでは旺盛な需要を取り込み、さらなる成長を見込むほか、テレコムサービスは、ソフトウェア領域や高付加価値ソリューションへの転換を加速。グローバル5Gは戦略そのものを見直し、早期の収益性改善を優先する。また、計画当初には想定していなかった政府の防衛予算増加に伴い、ナショナルセキュリティ事業の成長を織り込んだという。
成長事業では、コアDXは当初目標を維持し、2025年度の売上収益は5700億円、調整後営業利益は750億円、調整後営業利益率は13.2%としたが、DGDF(デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)は、為替影響などにより、売上収益は当初目標から100億円増加の3100億円、調整後営業利益は横ばいの360億円、調整後営業利益率は11.6%。グローバル5Gは、海外市場の立ち上がりの遅れを反映し、売上収益は当初目標から630億円減少の1270億円、調整後営業利益は同30億円減少の160億円、調整後営業利益率は12.6%とした。
2023年度から各事業の特性にあわせて、部門ごとに利益率向上施策を展開しているほか、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)およびROICの改善など、資本効率を重視したKPIを設定。「財務健全性を維持しながら、成長投資を実現する財務戦略としている」と位置づけ、その上で、「市場が想定するNECのWACC(加重平均資本コスト)は6.5%程度と見ている。2025年度のROICは、M&Aを実施しても6.5%、実施しなければ7.0%の水準になる。PBRは1倍を超えて推移している。2025中期経営計画の戦略を着実に遂行し、目標達成の蓋然(がいぜん)性を高めることで、さらなる企業価値の向上を実現したい」と述べた。
また、次のなる成長の柱とする新規事業では、2025年度に3000億円の事業価値を創出するための活動を加速。中でもヘルスケア・ライフサイエンス事業は、事業拡大を見据えて、2023年度から独立した事業体として活動していると説明した。さらに、知的財産に関しては、NECグループでの活用にとどまらず、社外の多様な業種での活用を拡大しており、知的財産による収益拡大に向けて活動を強化しているという。
一方、低収益事業については、2022年度末には、これら事業全体で調整後営業利益率が6%を超える水準に回復。オペレーション改善が貢献しているという。
16事業あった低収益事業のうち、2022年度には4事業が収益性改善により、低収益事業の管理対象から卒業。これらの4事業の収益率は11%を見込み、今後は業績に貢献するという。その一方で、高収益事業だった2事業が、収益が悪化したこと新たに管理対象となり、2023年度期初では14事業が低収益事業に位置づけられた。だが、2023年度期末には4事業を卒業させ、10事業に縮小する見込みだ。さらに、管理対象となる事業が生まれないように各事業の予算進捗状況に応じたモニタリングにより、CFO主導でフォロー。悪化抑制を強化し、2025年度期末には低収益事業をゼロにする。
「低収益事業は、ITサービスやネットワークなどのほか、国内および海外が含まれ、多岐に渡っている。数百億円~1000億円規模の事業が多い。新規に管理対象となった2事業は子会社関連とITサービス関連であり、ひとつは一時的に業績が悪化したもの、もうひとつも中計期間中には卒業できると見込んでいる。2年連続で営業利益率7%を超えたものが低収益事業から卒業できるが、すでに6~7事業は確実に卒業できると見込んでいる」とした。また、ノンコア事業については、売却やパートナーリングにより、事業価値を最大化するための意思決定を的確に行うとした。
NECでは、経営の高度化に向けてデータドリブン経営への移行を進めていることにも言及。それに向け、デジタル経営基盤を再構築。あらゆるデータを見える化し、社員から経営層までが共有できるようにしたという。「NECが先進的なDXを実践し、ノウハウを蓄積。顧客向けのオファリングメニューとして整備、拡販して、企業や社会のDX推進に貢献することを目指す」と述べた。
データドリブン経営の実現に向けて、売上計上や入金プロセスに全社統一の仕組みを採用。データやマスターを整備し、ビジネスプロセスの標準化およびITシステムの刷新により、マニュアル作業を大幅に削減し、コスト削減とリソース最適化を両立するという。「あらゆる情報を集約し、見える化することで、迅速な意思決定と適正なアクションの実行が可能になる。エンドトゥエンドでのデータドリブン経営環境を整えることで、経営の高度化を加速し、収益性の改善につながることができる」と述べた。
ITサービス事業セグメントの進捗
ITサービス事業セグメントでは、2025年度に売上収益で2兆円(2022年度実績は1兆7500億円)を掲げ、調整後営業利益は2400億円(同1680億円)、調整後営業利益率は12.0%(同9.6%)とした。そのうち、国内ITサービスの売上収益は1兆6900億円(同1兆4649億円)、調整後営業利益は2040億円(同1496億円)、調整後営業利益率は12.1%(同10.2%)。海外ITサービスの売上収益は3100億円(同2901億円)、調整後営業利益は360億円(同184億円)、調整後営業利益率は11.6%(同6.3%)を目指す。
NECの堺和宏Corporate SEVP兼Co-COOは、「国内IT市場全体は、堅調に成長しており、特に、NECが力を発揮できるモダナイゼーション(リプレイスメント/効率化)の領域が、当初予測よりも市場成長が大きくなっている。NECの国内ITサービス事業も、売上収益は年平均成長率5.4%と高い伸びを見込み、コアDXをテコとした収益性改善により、調整後営業利益率の目標達成を見込んでいる。中でも、コンサルティング、クラウド、SIが利益成長を牽引することになる」と述べ、順調さをアピールする。
しかし一方で、「海外ITサービスは、売上収益は計画通りではあるものの、収益性の改善は1年遅れている。DGは、ボルトオンM&Aによる拡大と低収益事業の売却を進めるとともに、ソフトウェアのグローバル展開を推進。DFは、スイスのAvaloqによる欧州およびAPACでの受注の拡大、BlackRockとの戦略アライアンスを推進し、SaaS事業の拡大に取り組む。また、デジタルID/DXでは公共領域での大型受注の確保が進んでおり、今後も生体認証を核に事業を拡大していく。海外ITサービス全体では、オフショアによる効率化と、M&Aの活用による成長の加速により、海外市場開拓とさらなる効率化の推進に取り組む」と述べた。
国内IT市場は、行政サービスのデジタル化やクラウド移行が開始されたパブリック領域が堅調であり、行政DXや自治体情報システムの標準化への対応を推進。エンタープライズ領域ではモダナイゼーションが順調に成長し、DX案件も増加。クロスインダストリーでは、都市インフラや消防防災などが2026年度まで好調に推移すると予測。スマートシティやモビリティの社会実装も進展すると見ている。
パブリックの売上収益におけるコアDXの比率は、2022年度の6.4%から2025年度には15.6%に拡大。エンタープライズは11.3%から29.1%に、クロスインダストリーは4.1%から33.4%にまで大きく増やす計画も示し、「コアDXの貢献がITサービス事業セグメントの成長の鍵になる」としたほか、「SIモデル改革では、エンタープライズで先行実績を積みあげ、全社適用への枠組みを整備。グループ全体におけるSI事業の売上高総利益率(GP率)は2022年度実績で36%に達した」と成果を示した。
また、2025年度までに1万人のDX人材の育成、獲得を目指している計画には変更はなく、2022年度までに7609人の体制へと拡大。「順調に推移している。キャリア採用も2021年度以降は年間600人の水準で推移しており、新卒とキャリア採用は1対1となっている。2024年度からは、ジョブ型人材マネジメントの全社展開や、NECグループ一体運営の強化を進める」と述べた。
コアDX:全社中期経営計画達成に向けたキードライバー
コアDXについては、「全社中期経営計画達成に向けたキードライバー」(NECの吉崎敏文Corporate EVP兼CDO)と位置づけ、「2022年度には営業利益の黒字化を達成。2025年度のNDP(NEC Digital Platform)の目標を上方修正した。2023年度は、ハード、ソフト、ネットワーク、製品・サービス、コンサルティング、マーケティングにおけるDX機能を一元化し、今後は、NDPとコンサルティング起点ビジネス、スマートシティ・インフラ協調モビリティの3点から、コアDX事業を推進することになる」と語った。
ひとつめの「NDP」では、2022年度の売上収益は前年比39%増の1107億円となったものの、調整後営業利益はマイナス64億円の赤字。これが2023年度には138億円の黒字に転じる見込みだ。さら、2025年度計画を上方修正し、売上収益は3284億円、調整後営業利益は430億円、調整後営業利益率は13.1%を目指す。
「2022年度までは立ち上げフェーズとなっていたために赤字だったが、2023年度は初期投資が一巡し、黒字化する。今後はエンタープライズ領域に加えて、パブリック領域でも大きな需要拡大を見込んでいる。さらにNDPによる上流コンサルティング、SIデリバリー、保守運用までのエンドトゥエンドのビジネスモデルへの変革、DXオファリングの拡大により、個別SIからシフトすることも収益性の改善につながる」とし、「NDPは業界の成長速度を超える伸長を遂げており、NDPをコアDXの中核に位置づけ、個別SIからのビジネス変革を推進するドライバーにしていく」と述べた。
ここでは、マルチクラウド戦略を推進し、オラクル、AWS、マイクロソフトとの提携を強化。印西データセンターに接続拠点を整備したほか、NEC独自の軽量大規模言語モデルの提供を、印西データセンターを通じて開始し、15の大学および企業が利用していることを報告。今後、金融・保険・自動車などの業種特化型日本語LLMとして進化させることになるという。
「生成AIの利用ユーザーは順次増やしていくが、機微性の高いデータを扱うお客さまに対しても、安全安心を担保しながら、大規模言語モデルを提供していくことができる。また、OpenAIのLLMも選択できるようにしていくことも、NECの生成AIの特徴になる」という。
2つめの「コンサルティング起点ビジネス」については、NECグループであるアビームコンサルティングとNECとのシナジーにより、成長戦略を打ち出している。2025年度の売上収益は1650億円(2022年度実績は1269億円)、調整後営業利益率は13.3%(同10.2%)を目指す。
「価値創出力、共創ケイパビリティ、変革実現力により、コンサルティングを起点とした価値共創ビジネスの拡大につなげていく。すでにいくつかの事例も生まれており、素材化学企業では、バイオマスプラスチック導入の目標達成を実現するための原料獲得戦略策定を支援。総合商社ではカーボンニュートラル実現に向けたサプライチェーン変革を共創により促進。エネルギー産業では、未来創造に向けて変革領域の拡大を推進する事例がある」とした。
3つめの「スマートシティ・インフラ協調モビリティ」は、2025年度の売上高が766億円(2022年度実績が25億円)、調整後営業利益率は13.3%と高い成長を目指す。
「スマートシティは、政府のデジタル田園都市国家構想で拡大する事業機会をとらえて、フットプリントを着実に獲得。地域脱炭素事業などへの展開や、スマートシティ起点の民間共創領域への展開を進める。全国60自治体に導入している都市OSを、2025年度には200自治体にまで拡大する。また、インフラ協調モビリティは、政府の総合整備計画との連動を進め、2025年度以降の急拡大に向けた活動を進める。すでに、国土交通省自動運転関連実証公募において、NECの路車協調システムを活用した先行7地域での実証実験を開始したり、交通インフラDX整備に向けたデジタルライフライン全国総合整備計画にも参画したりという実績がある」という。
なお、NECが発起人として参画し、2022年5月に設立した一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアムの会員数は148団体にまで拡大していることも示した。
DGDF:海外市場向けに各種ソフトウェアやサービス事業を展開
DGDFは、英国のNECソフトウェアソリューションズUK(SWS)、デンマークのKMD、スイスのAvaloqの欧州3社が中心となる。2025年度の海外ITサービスの売上収益3100億円のうち、約7割となる2200億円を欧州3社が占める。
NECの吉田直樹Corporate SVPは、「2018年に買収したSWSは、公共住宅管理ソフトウェアや国民保健サービスソフトでは約3割のシェアがある。2019年に買収したKMDは、地方行政システムで約6割のシェアを持つ。また2020年に買収したAvaloqは、ウェルスマネジメントに特化したサービスを提供しており、欧州ではトップシェアを持つ。さらに、海外法人12社を経由した生体認証ソリューションビジネスを展開している。海外ITサービスは、英国政府やデンマーク政府、各国の政府関係機関とも密接に関係しているほか、大手金融機関や米国航空業界、インドの国民IDなどでも実績を持つ」と述べた。
欧州3社では、これまでにボルトオンM&Aとして10社を買収したほか、戦略的アライアンスの推進、3件のノンコア事業の売却のほか、APACを中心とした海外市場の拡大や、オフショア比率を31%にまで拡大するといった取り組みを推進してきた。さらに、マイクロソフトをはじめとしたNECとのコーポレート協業を活用した海外サプライチェーンの強化も図っている。
「2025年度に向けては、好調な受注を下支えに、市場を上回る売上伸長を計画している。SWSでは警察向けソフトウェア事業を買収し、これをベースとしたクロスセルビジネスを拡大。KMDでは北欧市場への展開や、金融リースソフトウェア事業の拡大、Avaloqでは、SaaS事業の強化、グローバルセールス体制の強化を進めていく。デジタルIDでは、警察だけでなく、国民IDや空港にも生体認証の活用が広がっていることをとらえ、ドメイン別体制をグローバルで構築する。NECグルーブ間連携による台湾、オーストラリア、APAC市場の開拓や、欧州3社による製品連携の強化も進める」という。
Avaloqでは、人員リソース計画の見える化に加えて、マルチクラウド環境への移行とプロダクトの標準化によるコストダウンを推進。SWSでは買収効果の最大化、インド拠点の拡充による収益向上、KMDでは収益性が高い地方政府向けや金融事業向けなどに注力する方針も示した。
また、欧州3社におけるソフトウェア・SaaSの比率を2022年度の72%から、2025年度には83%に拡大。オフショア比率は31%から40%に高める計画も明らかにした。
社会インフラ事業セグメントの進捗
一方、社会インフラ事業セグメントは、2025年度の売上収益が1兆2500億円(2022年度実績が1兆622億円)としたほか、調整後営業利益の年平均成長率は27.8%を想定。調整後営業利益率は12.3%(同6.0%)を計画している。
NECの山品正勝Corporate SEVP兼Co-COOは、「社会インフラ事業は、高い技術力を結集し、社会価値を提供する事業であり、センサーから通信システム、それを統合するITシステムで構成している。だが、利益率が低いという課題がある。費用構造の見直しとビジネスモデルの変革により、今後は利益にこだわり、高い技術をマネタイズし、高収益事業に転換していく。2025年度は通過点であり、さらなる高収益化を目指していく」と述べた。
グローバル5Gを含むテレコムサービス事業では、2025年度の売上収益が9000億円(同7799億円)、調整後営業利益は1120億円(同482億円)、調整後営業利益率は12.4%(同5.9%)を目指す。
「ネットワークインフラへの投資は低調だが、ソフトウェア市場が拡大傾向にある。その一方で、Open RAN市場の立ち上がりが遅れ、国内で3社、海外5社にとどまっている。想定よりも5年は遅れている。NECでは、グローバル5G戦略の見直しと、DXソリューションに注力した高付加価値事業への転換、費用構造の見直しとソフトウェア比率の向上を図る。正しい技術を、正しくマネタイズし、正常な利益率に戻す」とする。
2022年度までの3年間は期初受注残および受注高の年平均成長率は8.5%であったが、2023年度以降は、4.1%と成長率が鈍化する。だが、2025年度には、堅めの数字として、1兆5500億円の受注残および受注高を見込んでおり、「これまでの実績をもとに、58%のコンバージョン率から逆算しても売上収益9000億円は手堅い」とした。
グローバル5G事業の戦略見直しでは、2025年度の売上収益を1270億円(同872億円)、調整後営業利益は160億円(同マイナス311億円の赤字)とした。2025年度の売上収益は1900億円としていたものを大幅に見直したことになる。
「2023年度は100億円の赤字が残るが、構造改革効果や5G投資の見直し、ハードウェアの原価低減により、収益性を改善する。2024年度は、国内黒字化により、5G事業全体で黒字化し、2025年度には海外黒字化を図る。さらに、ソフトウェア比率を51%にまで高め、高付加価値事業にシフトする。また案件選別の成果も出ることになる」としている。
通信機能のソフトウェア化とAIを活用した運用管理の高度化で、キャリアのデジタルサービスプロバイダーへの転換やDX化を支援。通信サービスだけでなく、コンテンツサービスや金融サービスも提供し、運用管理の高度化やマネタイズ、デジタル管理を強みにグローバル5G事業を展開していくことになるという。
特に米Netcrackerでは、生成AIを活用した業務支援システムを提供。「この分野では世界トップ3のシェアを持っており、過去3年間に渡り、2桁成長を遂げている。この提案を加速するほか、Open RANについては、通信機能のソフトウェア化により、柔軟で迅速なサービス変更に対応できたり、耐障害性の強化などを実現できたりといった提案も進める。OSSやBSSとのシナジーにより付加価値を提供できる」とした。
さらに、「従来のOpen RAN戦略は、ハードウェアでシェアを取り、SIを行ってvRANサービスを提供し、AIにより運用管理を高度化するビジネスを獲得するというステップを考えていたが、市場の立ち上がりの遅れ、市場競争を踏まえて、vRANをコアとして、デジタルサービスソリューションを提供していく戦略に変更した。Open RANのポイントは仮想化であり、ソフトウェアが重要になる」と述べた。
航空や宇宙、防衛などのANS(Aerospace and National Security)事業は、2025年度の売上収益が3500億円(同2329億円)、調整後営業利益は420億円(同240億円)、調整後営業利益率は12.0%(同10.4%)を計画している。過去3年間の売上収益の年平均成長率は2.6%だったが、2025年度にかけては14.5%へと大きく成長させる計画だ。
「宇宙政策と国家安全保障政策の融合により、中長期的な需要が増加している。また、防衛力整備計画によって、防衛予算が倍増している。防衛生産や技術基盤を維持し、強化するための施策により、利益率が改善することも期待できる。利益率を改善した防衛装備品も開発しているところだ。さらに、売上収益拡大と収益性の改善に向けて、リソース強化を図る」とした。
NECは、民需の航空管制システムでは50%以上のシェアを獲得し、航空自衛隊向け航空管制システムでは100%のシェアを持つという。「日本の空を守っているのはNECであるといっても過言ではない」と自信を見せる。航空自衛隊の指揮統制システムもNECが提供しているという。
また、80機以上の人工衛星にNECのセンサーを搭載し、地上通信システムではナンバーワンのシェアを持つ。さらに、複雑な動きのミサイルを捕捉する唯一無二のアルゴリズムを搭載した警戒管制レーダーを開発しているほか、宇宙では3万6000kmの距離を、10Gbpsの速度を実現した光通信システムを提案。高いセキュリティを持った野外通信システムも開発しているなど、ANS分野においてNECが持つ高い技術力の一端を示した。
NECでは、ANS事業において、2023年度までに430人の増員を実施。2025年度までに1000人規模の増員を図る。また、ANSの生産拠点である府中地区に新棟を2024年度までに完成させ、2025年度までに4万平方メートルを増床し、事業成長を支える体制を整える考えだ。
さらに、テレコムサービスとANSを融合することで、世界初の宇宙空間の光通信ネットワークを構築し、安全保障用途や、公共用途および民間用途への活用提案を進める考えを明らかにし、「次期中計期間にこの技術を実現し、NECの10年後、20年後の事業につなげる」と述べた。