大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

HCIはひとつのステップにすぎない――、Nutanixが目指すエンタープライズクラウド戦略

顧客に選択肢を提供するためのAHV

――今後、VMwareとの関係はどうなっていくのでしょうか。

スミス氏:
 Nutanixの立場は明確です。それは、顧客の選択肢を提供するという点です。つまり、ハイパーバイザーをひとつに決めるという時代はもう終わりです。

 AWSでハイパーバイザーの選択肢が制限されてないように、Nutanixが実現するエンタープライズクラウドプラットフォームにおいても、vSphere、Hyper-V、XenServer、AHVといったさまざまなハイパーバイザーが選択できるようにしています。

 AHVの投入以降、VMwareと距離感が生まれているといった指摘もありますが、クラウドのような経験を提供する上で、ハイパーバイザーの選択肢を提供することは当然のことだと考えています。これまでと変化はありません。

――AHVを選択するユーザーは増加していますか。

スミス氏:
 AHVの利用者が増加傾向にあるのは確かです。現時点では、全体の約2割を占めており、今後は、さらに増えていくことになるでしょうか。AHVがあるから、Nutanixを選択するというユーザーも増加していますし、vSphereからスイッチするユーザーも増加しています。Nutanixでは、vSphereから、AHVへと簡単に移行できる環境も用意しています。

 だからといって、すべてをAHVにしてくださいというわけではありません。それは、AHVを投入したあとに、NutanixはCitrix Xen Serverへの対応をはじめたことからも明らかです。

 しかしNutanixでは、AHVを持つことで、その進化を自らコントロールでき、新たな機能を追加しやすいという環境を実現することができます。

 他社のハイパーバイザーに依存しているだけでは、これまで使えていた機能が使えなくなるということが発生する可能性があります。新たなイノベーションに向けて、自らコントロールする製品が必要であり、そのためにAHVを投入しているわけです。

――AHVを選択したり、ほかのハイパーバイザーから移行したりするユーザーは、何を理由としていますか。

スミス氏:
 AHVはクラウド時代に向けて開発されたハイパーバイザーです。それに対して、他社のハイパーバイザーは、開発された当時は、すばらしいものでしたが、いまやレガシーと言えるものであり、クラウド時代のハイパーバイザーとしては、どうしても重たく感じてしまいます。クラウド時代では軽く、しかも高いセキュリティが大切です。

 こうして点をとらえて、AHVを選択しているユーザーがいます。特に、基本的な機能しか使っていないというユーザーは、軽く、シンプルなAHVを選択する例が目立ちます。また、コストを削減したいという要望や、どこかに縛られたくないといった場合にもAHVを選択しています。

――一方、Lenovoに続き、デルがXpressモデルを発表するなど、エンタープライズクラウドプラットフォームを中堅中小企業(SMB)にも提供する動きが加速しているように感じます。

スミス氏:
 SMBにおいても、Webスケールを持ったエンタープライズクラウドを経験ができるように製品を作らないといけないということは、ずっと考えてきました。

 もともとGoogleが使っていたものをエンタープライズにスケールダウンし、今度はそれをSMBでも使えるようにしたのが、Nutanix Xpressとなります。これは、IT担当者がいない、あるいはそうした人が少ないような環境に最適化した製品として投入しています。ここは、大きなポテンシャルがある市場だと考えています。

 また、拠点ごとにHCIを設置するといった動きもこれから出てくるのではないでしょうか。その点でも、Xpress を活用できます。SMBは、自らのビジネスそのものにフォーカスしなくてはならない環境にありますから、まさにITインフラをインビジブルにしなくてはなりません。XpressはSMBに最適化した製品になると考えています。

 例えばLenovoでは、エンタープライズとSMBの2極化戦略を展開しており、Xpressは、クラウドを使いたいと考えるSMBに対して、価格面でのメリットを訴求したり、パッケージとして仕立てたり、ISVが開発したアプリバンドルしたりといった提案も可能となっています。

 Lenovoに続いて、SMB分野を得意とするDellも、新たにXpressモデルを投入したことで、Nutanixをあらゆる規模のユーザーに提案できる環境がこれまで以上に整ったといえます。しかも、上から下までひとつのアーキテクチャとして提供できます。LenovoとDellによる、Xpressの取り組みには注目しています。

――現地時間の2017年6月28日から、米ワシントンD.C.で、Nutanix .NEXT Conferenceが開催されますね。ここではどんなことが発表されそうですか。

スミス氏:
 .NEXT Conferenceは、今年で3回目の開催となりますが、毎年2倍ずつ参加者が増えています。詳細は、現時点ではお話しできませんが、エンタープライズクラウドプラットフォームの実現に向けた進化を遂げることになるといえます。

 一般論として、今後の企業のデジタルトランスフォーメーションを考えると、マシンラーニングなどのトレンドは避けては通れないでしょう。これは、Nutanixに限らず、多くの企業が取り組んでいくテーマだといえます。

 実は、私が.NEXT Conferenceで一番楽しみにしているのは、ユーザーが、Nutanixを活用したことで、ビジネスをこんなに変えることができたという話なんです。今年も、それを楽しみにしています。