大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

HCIはひとつのステップにすぎない――、Nutanixが目指すエンタープライズクラウド戦略

エンタープライズクラウドの実現に向けた進化

――Nutanixはこれまでにどんな進化を遂げてきたのでしょうか。

露峰氏:
 2011年に最初の製品を出荷し、2012年にHCIとして、サーバーとストレージを統合した、Webスケールのアーキテクチャの提案を開始しました。

 その後、エンタープライズクラスのストレージ技術をソフトウェアで提供し、ディザスタリカバリやバックアップ、仮想化、圧縮や重複排除といったことにも機能を広げてきました。これがファーストステージです。この時点で、エンタープライズクラウドのベースになるHCIの技術はほぼそろえていたといえます。

 2014年以降は第2ステージとして、vSphereだけでなく、Hyper-V、Xen Serverといったマルチハイパーバイザーをサポートするとともに、KVMをベースとした独自のハイパーバイザーであるAcropolis Hypervisor(AHV)を用意しました。

 こうした選択肢の広がりは、クラウドの利用者がハイパーバイザーを意識せず、さまざまな仮想化環境を利用していることを考えると、ある種、当然の流れだといえます。同時に、ハイブリッドクラウド環境を実現しながら、仮想化機能をネイティブで提供。IT部門の手を借りずに、ユーザー自らがワークロードを利用できるようになります。これによって、クラウドライクな世界を実現できたといえます。

 そして、2016年以降はエンタープライズクラウドの実現に向けて、ファイルサービスやブロックサービス、コンテナサービス、セルフサービスのほか、アプリケーションモビリティやネットワークの仮想化などに取り組んでいます。ここで重要な役割を果たすのが、2017年1月に発表したAOS 5.0です。これは、2017年5月にはAOS 5.1にバージョンアップしており、こちらが最新版となります。

Nutanixエンタープライズクラウドプラットフォームの主な新機能

スミス氏:
 AOSでは、AWSのように常に新たな機能を追加するスタイルとし、われわれのビジョンと顧客のニーズを照らし合わせながら、プライオリティをつけ、求められる機能を追加しています。

 そしてAOS 5.0以降では、コンテナサービス、ブロックサービス、ファイルサービスにより、エンタープライズクラウドプラットフォームを実現する土壌が整ったともいえます。実際、AOS 5.0の発表を前後して、ビジネスクリティカルアプリケーションの活用事例が増加しています。

 米国の任天堂や米Kelloggでは、Oracle RACをAHVの上で走らせていますし、韓国では、Microsoft ExchangeをAHVの仮想化環境で動作させるというケースが、初めて紹介されました。また、SAPもAHVの上で動作させている例が出ています。このように、メインストリームといえるビジネスクリティカルアプリケーションが稼働しはじめているのです。

 一方で、AOSは、シンプルでオープンなAPIを採用していますが、AOS 5.0以降では、ネットワーク周りのAPIを強化している点も大きな進化です。ユーザー企業がこれらのAPIを利用し、これまでにはなかった広がりが出ています。エンタープライズクラウドの実現において重要なのはAPIです。これが、パートナーやユーザーからも評価されています。

露峰氏:
 AOS 5.0以降でのもうひとつの特徴は、セルフサービスができるようになった点です。セルフサービス機能により、ユーザーが、管理者認証情報によって、Prismにログインし、管理者セットポリシーに基づき、必要に応じていつでもアプリケーションを導入・監視できるようになります。IT管理者に頼らず、ユーザーは自身で、ワークロードを切り出して利用できるようになります。

――オブジェクトストレージへの対応もロードマップには入っていますが。

スミス氏:
 オブジェクトストレージは、現在、パートナーとの連携によって提供しています。ただし、ユーザーがプライベートクラウドにおいて、検討はしているが必ずしも必須ではないととらえているケースが目立ちます。

 今後、プライベートクラウドで活用するという動きが顕著になれば、その時点で、パートナー戦略と連携させながら考えていきたいですね。