ニュース

Nutanix CEOが来日会見、「ハイパーコンバージドインフラは最終目的ではない」

 ニュータニックス・ジャパン合同会社(ニュータニックス)は25日、米Nutanixのファウンダーで現在もCEOを務めるディラージ・パンディ(Dheeraj Pandey)氏の来日会見を開催。2016年11月に日本法人の社長に就任した町田栄作氏も同席し、ハイパーコンバージドインフラストラクチャおよびクラウドコンピューティングに対する同社の方針を明らかにした。

 パンディ氏は「日本は我々にとっても特別な市場。日本の顧客やパートナーに適したかたちでサービスを提供していきたい」と語り、日本市場におけるシェア拡大も積極的に進めていく姿勢を見せている。

米Nutanixの創立者、代表取締役会長兼CEO、ディラージ・パンディ氏

“創業者の考え方”を心構えとして持つこの重要性

 バンディ氏はまず、成長する企業の条件として、「社員」「顧客」「パートナー」の三者を尊重しつつ、

・反乱軍としての使命感……満足な結果を得られない顧客にかわって業界やその基準に抵抗、新しい業界の創生に邁進する
・当事者としての思考……個々の社員が使命感や目標を共有し、会社と顧客に対する責任を感じて行動する
・最前線へのこだわり……ビジネスの細部にまでこだわりをもち、顧客と直接やりとりをする第一線の社員を最大限に尊重する

という、いわゆる「創業者の考え方(Founder's Mentality)」を心構えとして持つことが重要だと強調する。そしてクラウドコンピューティングという“新しいアーキテクチャ”を導入するうえでも、この考え方がカギになってくるという。「新しいアーキテクチャを当事者として採用する、そしてその導入を顧客の喜びにつなげる、そうした意識をもってクラウドに向かうべき」(パンディ氏)

 では、“創業者の考え方”を実現するクラウドプラットフォームとはどのような存在なのか。Nutanixは“ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)”という新しいインフラの概念をエンタープライズの世界にもたらしたベンダーとして知られるが、2009年の創業から数年で5000社近い企業に受け入れられた最大の理由は、コンピュート、ストレージ、ネットワークという別々のコンポーネントをひとつに統合し、それまでのインフラにひもづいていた複雑性を排除したことにある。

 “創業者の考え方”を実践し、早い成長を求める企業は、複雑性や官僚的な組織を嫌う。「クラウドで重要なのは、ワンクリックエクスペリエンスを顧客にいかに提供していくかという点だ。ワンクリックしたあとの1分間で何を提供できるのか、エンタープライズは真剣に考えなければならない。半年後、1年後に納品するという過去の感覚ではやっていけない」(パンディ氏)。

 パンディ氏は続けて、顧客の継続的な成長を支えるインフラは、「コンポーネントでもプロダクトでもなく、プラットフォームでなくてはならない」と強調する。「たとえばiPhoneは通話機能だけでなくミュージックプレイヤーやカメラといった機能(コンポーネント)をひとつの電話(プロダクト)に統合し、さらにさまざまなサードパーティのサービスをアプリとして利用可能にしたことでプラットフォームとして爆発的な普及を遂げた。コンシューマの世界と同様に、エンタープライズでもiPhoneのようなコンバージドなプラットフォームが求められている」(パンディ氏)。

パンディCEOが「NutanixがほかのHCIよりすぐれている理由」としてあげるのが、AWSと同様に幅広いラインアップの機能を備えていることを挙げる

ハイパーコンバージドインフラはゴールではない

 その一方でパンディ氏は「HCIはクラウドにおける最終目的(destination)ではない」と断言する。

 「HCIは、クラウドジャーニーにおける第一章にすぎない。クラウドが新しい展開に進むための手段であり、ゴールでは決してない」と語り、Nutanixは次の段階として「HCIを真の意味でのクラウドプラットフォームにするために、ひとつの“オペレーティングシステム”のレベルまでにもっていく必要がある。そして他社にはない豊富なラインナップがそれを可能にする」としている。

 ここでパンディ氏の言う“オペレーティングシステム”とは、パブリッククラウドにもプライベートクラウドにも共通する統合基盤(サーバー、仮想化、ストレージ、ネットワーキング)を指しており、エンタープライズクラウドプラットフォームのデファクトスタンダードを目指す発言としてとらえることができる。なお、Nutanixは同日、新OS「Nutanix AOS 5.0」を発表している。

Nutanixが主張する、真のクラウドOSである「エンタープライズクラウドプラットフォーム」が備えているべき要件

 現在、クラウドはパブリッククラウド/プライベートクラウド双方で選択肢が劇的に増え、トレンドは非常に流動的となっている。

 パンディ氏は「顧客の間でも、自前で展開するのがよいのか(プライベートクラウド)、完全にアウトソーシングするのがよいのか(パブリッククラウド)、それとも両者をうまくまとめていくべきなのか、悩ましい状況にある。自社のアーキテクチャをどうもつべきかについては、あと5年は議論が続くだろう。こうした動きに対応していくためにも“創業者の考え方”が必要で、ベンダー側はそのニーズに応えるためにクラウドに対して継続的なイノベーションを実施していかなくてはならない」と語り、クラウドの進化には「ゴールがない」とあらためて継続的なイノベーションの重要性を強調する。

*****

 「Nutanixは100%、ソフトウェアカンパニー」――。

 パンディ氏につづいてプレゼンを行った町田氏は、開口一番にこう明言している。ハードウェアも含めたプラットフォームを提供しているからか、Nutanixが“ソフトウェアカンパニー”と宣言するのは少々違和感を覚えなくもない。だが、Intel、Dellとハードウェアベンダのエグゼテクィブを30年以上に渡って務めてきた町田氏が新たなキャリアとしてNutanixを選んだのは「ベンダニュートラルな姿勢」が大きな理由だという。

ニュータニックスの町田栄作社長

 ハードウェアにこだわらず、ソフトウェアでもってアーキテクチャを統合し、エンタープライズクラウドプラットフォームの“オペレーティングシステム”を目指すというNutanixの戦略は、一見ブラックボックス的でありながら、実はコンポーネントごとのマイクロセグメンテーションを強く意識し、クラウドに求められるスケーリングや自動化、コモデティ化といった分野への柔軟な対応を可能にしている。

 日本市場における戦略を聞かれたパンディ氏は「日本市場には課題が2つある。ひとつはトレンドに対する米国とのタイムラグ、もうひとつはマーケットが受け身で、顧客が水平分業ではなく、垂直統合をワンストップで求めがちなところ」と指摘。これに対応していくために、「SIerなどのサービス事業者が実装しやすいAPIを揃えていくことを検討している」と答えている。

 Nutanixは国内でもすでに300社を超える企業が導入しているが、より広い顧客層に訴求していくためには、パートナー企業との関係性が重要になるのは間違いない。

Nutanixの国内導入企業の一部。先日は札幌市での導入が決まったが、地方自治体や金融での採用が目立つ

 「クラウドはある意味、ユーザ企業も巻き込んだ“草の根の革命”だった。AWSなどは既存に対する反乱勢力の最たるものだろう。だが反乱勢力もいつかは既存勢力に変わる。顧客はそれがわかっているのでロックインを嫌がる」――。

 パンディ氏は会見の最後にこうコメントしている。いまは新しいアーキテクチャの象徴とされているクラウドも、普及が進めばレガシーな存在になるかもしれない。5年後にどんなインフラが求められているか、いまの段階で予測するのは難しい。だからこそ、変化に柔軟に対応できるソフトウェアベースのプラットフォーマーとしての道を選んだNutanixが、“創業者の考え方”に忠実に日本市場でもビジネスを展開できるのか、今後の動きを引き続き見ていきたい。